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09_後編

 月日が経ち、大学を卒業した重人はゼミで紹介された企業に就職していた。
 六年。社会人としてもそれなりに貫禄の出てきた重人は、当然のことながらあの頃の不可思議なことなど覚えているはずもなかった。

 そんなおり、一通のメールが届く。それは芽衣からのもの。
 在学中は恋人になれなかった二人だが、卒業後もお友達の関係を続けていた。
 当然のように毎日のように連絡を取り合い、メールもしょっちゅうのこと。
 ただ、業務中にメールが来るのはめずらしく、重人はトイレに行くついでに確認することにした。

『部長先輩に会ったよ。今は元気になって営業してるみたい』

 最初なんのことか分からなかった。
 しばらく考えて、それが大学のころに病んだ友則のことだと理解できた。

『呪いなんて嘘だな。俺の言ったとおりじゃん』

 ――そう、精神疾患に過ぎない。もともと責任感の強い人だったし、あのときは俺もどうかしてたな。

 映画の件は足の指に刺さった棘のようなもの。普段は気にならないが、思い出すと痛む。そんな記憶にようやく見切りをつけられる。
 重人は二重の意味ですっきりして個室を出るが、すぐにまたメールが届く。

『でも、高篠先輩、すごく変わったみたい』

 ――高篠? 先輩が?

 一瞬考えてしまうが、社会の荒波に揉まれれば多少なり人格も変わる。自分だって嫌いだったビールを美味しいと感じる程度のストレスに晒されるようになっているし、先輩はたまたま運が無かっただけのこと。

 ただそれだけのこと。

『それでね、なんか先輩から動画ファイル送られてきたんだけど……一人で見るの怖いから今日来てくれない?』

 ――そんなもの消せばいいのに……あ、そういうことか。

 理論ずくでいる自分を無粋と笑い、彼女の健気な誘いに乗ることにした……。

~~

 彼女の家に行くと鍵は開いており、パソコンがつきっぱなしだった。
 どうせ近くに買い物にでも行ってるいのだろうと、構わずに入る。

 スクリーンセーバーが喧しく画面を踊り、ヘッドホンからは不愉快なBGMが流れっぱなし。
 消してしまおうと思うが、パスワードを要求されてそれも出来ない。
 とりあえずヘッドホンを根っこから抜いて凌ぐ。

 遅い。

 鍵もかけずに出歩くなんてと思い、ひとまず電話をする。
 けれど通話中。虚しい伝言サービスの声が聞こえるだけ。

 ぶーん、ぶーん

 携帯を閉じた瞬間、着信音。

「もしもし、芽衣?」
『あ、もしもし、重人君かい? 僕だよ、覚えてるかい? 友則だ』
「あ、先輩……。お久しぶりです」

 声の主はかつての部長。懐かしい気持ちもあるが、今は芽衣の声が一刻も早く聞きたい。

『あのさ、最近変なメール届かなかった? 例の映画のなんだけど……』
「ええ、芽衣のところにも届いたぽくて、気味悪がってました」
『そうか……』

 落胆するようにため息をつくのが電話越しに聞こえた。

『あのさ、もし届いても絶対に開いちゃいけないよ。必ず消してくれ』
「はあ、どうしてです?」
『気のせいならいんだけど、違う。いやさ、ウイルスかもしれないし』

 少し違和感。

「先輩、どういうことなんです? 正直に教えてくださいよ」
『正直って、だって見知らぬ相手から届いたらまずセキュリティーを……』
「例の映画のことって先輩言いましたよね? どうしてそんな昔のことを?」

 ごまかしを見逃すつもりは無い。重人は捲し立てるように言葉を発する。

『わかったよ。多分信じてくれないと思うけど……、あのさ、やっぱりあの映画は危険なんだよ。っていうか、あの白いのがヤバイんだ。もってると、なんていうかいつも何かに睨まれているような錯覚があって……』
「白いのが、やばい……? でも、編集してたじゃないですか?」
『卓也はさ、俺の部屋で動画を編集してたんだ。……そんで、俺のパソコンの中に残ってた』
「まさかそのせいで体調崩したとかいうんですか?」
『ああ、多分。でも卒業前にちゃんと処分したから……』
「ならもう問題なんて……」
『卓也の奴、間違ってコピーしちゃったんだよ。編集前の動画を……。それでさ、芽衣君から聞かなかったか? 高篠がおかしいって』
「聞きましたけど……」
『多分、そのせいだよ』
「まさか。でも……」
『大学の映画同好会のページ、部員達の連絡先とかあって、そこから昔の奴らに手当たり次第に送ってるんだ。電話できない奴にはメールに添付して』
「何のために?」
『わからない』
「先輩、からかってるんですか?」
『……もし自分だけが不幸なら、耐えられるか?』
「なんです? 今度は……。そりゃ嫌ですけど……」
『それなら皆不幸になってしまえって……考えたりしないか?』
「それは……」
『俺は思っちゃったんだよ……』
「……」
『昔話はこれで終わりだ。とにかくいいな? 変な動画が届いても絶対に開くな。必ず削除……』

 ブツリと切れた。

 電池切れだった。

 充分に残っていたはずなのに何故?

 次いで電灯がカッと光って消えた。

 ブーと冷蔵庫の振動音。
 ブレーカーが落ちたわけではないことを教えてくれる。

 つまり異常事態。

 いや、自然なこと。
 たまたまそうなっただけ……といえるだろうか?

 気になってヘッドホンを取る。

 音は無い。
 当然だ。
 接続されてない。
 パソコンは動いたまま。
 繋いでみるか?
 パスが分からなくても音声は聞ける。
 もし、既に彼女が動画を開いていたら?

 まだ帰ってこない。

 無事だろうか?
 自分は安全だろうか?

 否。

 友則の報告が本当なら、ソレをもっていることが不幸を呼ぶ。

 さっきから気配がする。
 前に感じたことがある。

 因幡城山で感じた寒気。

 敵意に満ちていながら……、

 それはまるで……、

悪霊動画 完

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