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11_前編

 校舎の裏でたむろする生徒達。
 一人が腹を抱えてうずくまり、三人がそれをみて笑っている。

 よろよろと立ち上がろうとする田川雄介の首根っこを赤川徳夫が押さえつけ、プロレスのヘッドロックのように締め付ける。

「や、やめてよ、やめてよ」

 泣き出したい雄介だけれどあまりの息苦しさにそれすらできず、顔は真っ赤から青くなり始める。

「おいノリさん、それ以上やったら雄介が死ぬって」

 池上明はそういうが、それは雄介を心配してんことではない。その証拠にへらへら笑い、止めようともしないのだ。

「別にいいでしょ、こいつが死んだって誰もかなしまねーよ。むしろ感謝されるんじゃね? クラスのゴミを掃除してくれてありがとってさ」

 大柄な滝本聡もへらへら笑いながら相槌を打つ。

「おね、がいっ! だよ、やめてよ……」

 切れ切れになる呼吸の合間で何とかしゃべろうとする雄介だが、三人の少年達は意に返すこともない。

「よーし、じゃ次、俺の番な」

 徳夫がようやく締め付けを解くと、今度は諭しに羽交い絞めにされる。

「おい、やめてよ、もういいでしょ? なあ、許してくれよ」
「うっせよ、黙れ」

 明は彼の嘆願など聞く耳もたず、彼のズボンをカッターでじょりじょりと切り裂く。

「下手に動くなよ? 足切るからな~」
「あ、あぁ……」

 見る見るうちに切り裂かれ、彼のズボンはまるで半ズボンのような丈にされてしまう。

「お前小学生みたいだしさ、丁度いいだろ? な?」
「酷い……」
「あぁん!?」

 ぼそりと呟く雄介を明の恫喝が制する。雄介は再び萎縮し、何も言えずにうつむいてしまう。

 雄介が彼らにいじめられるのは毎日のこと。
 最近では担任もサジを投げているのか係わりあいになろうとせず、下手に庇おうものなら新たなターゲットになりかねないと、クラスメートも四人を遠巻きにしている。

「そんじゃな雄介ちゃん、また明日あそびましょう~ね~」

 三人は気が済んだのか、それとも興味をなくしたのかその場所を後にする。
 ようやく開放された雄介は、ただ声もだせず、カッターの刃で切れた膝を悔しそうにさすっていた……。

~~

 カラオケの帰りに近くの公園でビールを飲んだはず。
 そこまでは覚えている。
 ただ、その後は覚えていない。

 眠った?
 どうして?

 そういえば、明がくすねてきたウイスキーと聡が持ってきたワインでカクテルを作ったんだ。それを一気飲みしたんだ。
 くそまずかったのを思い出した。
 そしてそのまま気を失ったのも。

 実のところ、酒が弱い。
 少しのんだだけでも吐き気がするし、次の日必ず二日酔いになる。
 だけど、二人の手前、飲めないなんていえない。
 だからしょうがなく付き合っている。
 ただ、さすがに昨日のはやばかった……?

 いや、それよりここはどこだ?
 夜だと思っていたが、明かり一つないのはおかしい。
 というか、暗いんじゃない。黒いんだ。

「お目覚めですか?」
「あ? ああん!?」

 振り向くと男がいた。
 そいつはタキシードとシルクハット? を身に着けていて、しかも真っ赤な蝶ネクタイまでしてやがる変な奴。
 ただ、そんなことよりもその風貌が問題だ。
 ぎょろりとした目にでかい鼻、尖った耳に妙にでかくて赤い唇。
 こいつ本当に人間か?

「てめー誰だ! つかここはどこだ!」

 俺は舐められないようにガンをつけてやった。

「まぁまぁそう怒らずに……」

 そしたらそいつ、いきなりびびりやがった。
 よしよし、まずは先手を打てた。

「順にお答えします。まず、私は悪魔です。そしてここは……どこでしょうね?」
「はぁ? てめえ悪魔とか頭沸いてんじゃね?」
「いえいえ、滅相もない。そんな高等なことできません」
「はっ、たいしたことねーな……」

 なんだか話がかみ合わないが、それよりもどうするべきか?
 別にコイツを無視してもいいが、もし本当に悪魔なら……何が目的なんだ?

「やい、てめえ何が目的だ? 俺をこんなところに連れてきてなにしようってんだ!」

 気弱そうなコイツなら少し脅せばびびって言うこときくんじゃねーの? つか、悪魔だからってびびる必要ねーし、こんな奴じゃ怖がれないっつうの。

「ええ、そうですね、ここはまあ、黒い場所とでも呼んでください。で、今日なんですけど、大変申し訳ありませんが、貴方達を拷問にかけないといけないんです」
「な、拷問? っていうか貴方達ってどういう……」

 俺が自称悪魔の胸倉を掴もうとしたとき、踏み出した足はそのまま黒い空間をすべり、そのままどこまでも落下していった……。

~~

 落ちたという感覚があった。
 腹んなかにふわっていうイヤな感覚がして内臓がひんやりするようなそんな感じ。
 だが、着地したときは別に衝撃とかは無かった。エレベーターに近かった。

「ここは……」

 自由に動けるようなんで辺りを見回すことにした。
 最初はさっきとおなじように黒一色だったんだが、だんだん目が慣れるというか、ぼんやりとしたものが浮かびあがってきて、それは形を成した。

「明! 聡!」

 壁際にたたされ、上半身を裸にした二人がいた。よく見ると両手両足ともに鎖に繋がれており、胸元にはいくつか赤い筋が走っていた。
 俺は急いでかけより、二人を何とかしようとする。

「ノリさん、助けて……」

 ぼそりと呟く明はかなり憔悴しているようで、それは聡のほうも同じ。
 畜生、あの悪魔のやろうだな! 俺の仲間をこんな目に遭わせやがって、ただじゃおかねーぞ!

「ああ、ああ、ダメですよ。その子達に触れちゃあ……。まだ拷問の途中なんですから……」

 聞き覚えのある声に振り返る。俺は迷うことなくこぶしを振り上げ、そいつの顔面めがけて殴りかかった。

「やめてくださいよ」

 しかし、こぶしは空を切る。

「くそ、くそ!」

 それでもがむしゃらにこぶしを振るが、どうしてもあたらない。
 蹴りをいれようにもひらりとかわされ、つかみかかろうにも捕らえられない。
 すごい早いとかそういうんじゃなく、空中を舞う綿とか羽みたいで掴もうとすると逃げられるっていう感じで、すごくもどかしい。
 いったいどうなってやがんだ! 畜生!

 そのうちにおれは疲れ、脚を縺れさせて転んでしまう。

「あらら、だから言ったのに……って、言ってませんでしたね」

 悪魔の野郎は俺に向かって舌を出して笑うが、くそ、馬鹿にしやがって。

「はぁはぁ、てめえ、こいつらに何しやがった……、ゼッテーゆるさねえぞ」
「別に許してもらう必要はありません。というか、拷問するだけですし、すぐすみますよ」

 悪魔はさらりと酷いことを言い放ち、まだはいつくばっている俺の手足を鎖で繋ぐ。

「なっ! ふざけんな! やめろこの野郎」
「さっき私がやめろといってもやめなかったでしょ? おあいこです」
「全然ちげーだろうが! この!」

 俺は抵抗したつもりなんだが、やっぱりさっきと同じように掴むこともできず、なのに奴はどんどん俺から自由を奪い、しあげとばかりに壁に叩きつけやがった。

「くそ……」

 今の俺にできることなんか悪態をつくことぐらい。くそ、なんて惨めなんだ。

「さて、貴方も拷問にかけないといけないんですけど、まだ予定がたってなくて……、ひとまず見ていてください……」

 悪魔はそれだけ言うと聡の前に立ち、ポケットからカッターを取り出す。

「や、止めろよ……!」

 聡の表情が強張り、鎖がじゃらりと音を立てる。

「まあそうおっしゃらず、すぐに済みますから……」

 悪魔はこともなげに言うと、切れ味の悪そうなカッターを聡の胸板に走らせる。

「ぐぎゃぁぁぁぁ……いで、いでええって……やめ、やめてくれ……おねがいだ……!」

 切れ味の悪いせいで途中何度か止まり、そのつど悪魔はえぐるようにカッターの刃を捩らせる。

「あれれ、おかしいですね。なんかよく切れません……」

「やめろ、やめて……ぅがぁ……だ、いぎゃぁ……」

「ちょっとうるさいんですよ。少し静かにしてもらえませんか? 私もこの手の作業にはなれてなくて……えいっと!」

 聡の悲痛な叫びの途中でピキィと音がしたのが聞こえた。

「あらら、折れちゃいました……これだから安物は困る」

 悪魔の野郎は全然気にした様子も無く、今度は明のほうに向かうと、首に枷をはめる。

「な、なんだよ、止めてくれよ、なぁ……あがぁ、ぐぐぅ……」

 悪魔が枷についている紐を引っ張ると、明の顔はみるみるうちに真っ赤になる。

「ぐぐぐがぁ、ぎぎぃ……かっ、はぁ……」

 目を見開き、空気を求めようと大きく口をあけて舌を出す。けれど悪魔は締め付けを緩めるようすもない。
 真っ赤だった顔色はだんだん紫色になり、小刻みに震える明の股間がじわじわと濡れているのが見えた。

「おい、やめろよ、死ぬぞ!」

 悪魔の目的はわからないが、俺は叫ばずには居られなかった。もちろんやめてくれるなんて期待していないが、もし明が死んだら、次は俺の番だろ?

「ああ、忘れてた。人間は脆いんですね……いかんいかん」

 悪魔がようやく紐を離すと、明はおおきく咳き込みながらも呼吸をする。
 どうやら助かったようだが、果たして助かったと本当に言えるのだろうか?

「さて、次は貴方の番ですね……」

 そして悪魔は俺の前にくると、先ほどの折れたカッターを握り締める。

「ひぃ、やめろ! やめてくれぇ!」

 俺も聡のように胸を切られるのだろうか? ぐいぐいとねちっこく刃を突き立てられて……。いやだ、いやだ! なんでこんなことになったんだ! 誰か助けてくれ!

続く

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