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14_後編

「あ、さっきの話。誰が、亡くなったの?」
「知らない」
「知らないって……」
「知らない人。でも、充君も見たことない?」
「知らない人を? 京子……どうしたんだ? 何か疲れてるのなら相談に乗るぞ?」

 ライバルはいない。彼女が結婚をしたという話も、誰かと付き合っているという話も知らない。

「写真、充君は持ってる?」
「いや……、今は……。多分実家かな?」

 本当はアパートにある。
 自分の切ない思い出の一枚。家族に笑われるのも、かといって捨てる気にもなれず、また見たいとも思わず、引き出しにしまったままにしていた。

「ふーん、そう……」
「ああ」
「あのね、その亡くなった人、私達がくる前の日に亡くなったんだって。飛び降り自殺」
「え……」

 覚えが無い?
 いや、当時の自分は確か失恋を理由に全ての情報から耳を塞いでいた。
 当然のことながらあの高台のことなど見るのも嫌だったし、避けてきた。

「失恋だって」
「そうなんだ」

 彼女の目的が分からない。
 そんなこと言われたとして、自分はどうすればよいのか?
 軽く混乱してしまう。

「写真、見る?」
「なんの?」

 彼女は携帯を取り出したとき、後悔が沸き起こる。
 見たくない。見るべきではない。
 けれど、好奇心は抑えられず、彼女は充の様子などお構いなし。
 古い携帯の小さなディスプレイには、あの頃の景色が色褪せることなくあった。
 ただ、記憶に無いのは写真に三人の他にもう一人、知らない女が写っていたこと。

「この人、聡君のこと連れて行ったの……」
「な、そんなこと……」

 あるはずがない。

 強く否定したい。
 それに、もしそうなら何故自分は今も生きている?
 京子もまた然り……。

「私考えたの……、聡君を取り返す方法」
「え?」
「写真、お願いね……」

 そういうと、彼女は柵を乗り越え、恋人を取り戻すために旅立った。

~~

 写真は……、撮らなかった。
 地元の新聞社が撮ってくれるから、それで勘弁してほしい。そういい訳をして。

 亡くなったあとも京子の心を射止める聡を羨ましいと思い、かつ自分は死人からも相手にされないことをどう解釈すれば良いのか?
 嫌な悩みを抱えてしまった彼は、例の写真を確認しようと戸棚を探す。
 しかし、しまっていたはずの棚はもぬけの殻。
 以前何かの資料を整理したときに一度出したのを思い出す。
 捨てた覚えは無い。けれど見つからない。
 言い様のない気持ち悪さに、充は部屋を掃除しながら写真を探すことにする。

~~

 部屋をひっくり返して小一時間。その写真は意外なところから見つかった。

 窓とカーテンの間。

 直射日光に晒されたその写真は……、セピア色どころかもう判別もつかないぐらいに焼けていた。
 あの日見た写真。
 若かりし頃の自分と京子、聡ともう一人は……、確かに色褪せていなかった。

 ――つまりはそういうこと……なのか?

 部屋には自分以外、誰の気配もしなかった……。

色褪せた呪い 完

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