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16_前編

 柏原君は最近よく遅刻をする。
 自転車通学の彼はいつも教室一番乗りだったのに、夏休みをあけてからは全然。
 別にいじめられてるわけでもないし、学校が嫌いってわけじゃない。
 というか、遅刻以外に目立ったことはなにもないんだ。
 けど、だからこそ気になる。

 それを確かめるチャンスというか、よいきっかけが訪れたのは、彼と日直が一緒になった日。いつものように彼は遅刻したから、朝の仕事は私一人で行うことになったの。
 だからね、これを理由に聞いてみれば、彼もそう無碍にはできないでしょ?

「ねぇ、柏原君。最近どうして遅刻するの?」
 その日の放課後、私は思い切って聞いてみた。
「え? ああ、石川さん。ごめん、今日も遅刻しちゃって。っていうか、後の仕事俺やっておくから、君は……」
「そうじゃなくて、私が聞いているのは柏原君がどうして遅刻するかっていうこと。
「俺そんなに遅刻してるっけ?」
「してる。っていうか、日誌にも柏原君のことが毎日書いてあるし」
「あはは、何? 調べてるの? もしかして佐藤さん、俺に気があるとか?」
 私が日誌を開いてみせると、柏原君は反撃にでたらしく、おどけた様子で言うの。
 まったく、思春期の中学生じゃないんだからそんな手でごまかされませんよ。
「そう。柏原君のことが気になるの。だから教えて」
 私はまっすぐな瞳で彼を見る。
 もちろん嘘だけど、適当なこと言ったら皆の前でないてやるんだから。ほら、もう逃げられない。どうするの? 柏原。
「遠回りしてるんだよ」
「遠回り?」
 ようやく諦めたのか、彼はぼそりとつぶやく。視線は下を向いて、すごくいいづらそう。
「なんで?」
「俺の家からだとさ、坂道通らないで学校くるのってかなり遠いんだよ。だから遅刻すんの」
「そんなら坂道通ればいいじゃない」
 ただそれだけのこと。なのに、なんで? でも、不思議と嘘とかごまかしのような感じがしないの。
「通りたくないんだよ。あそこ」
「なんで? もしかしてお化けでも出るとか?」
「……!?」
 私が冗談めかしに笑いながらいったのに彼、妙に驚いた顔して私を見るの。
 それこそ、
「どうしてわかった?」
 とか言われちゃった……。

~~

 夏休みのある日、俺は部室に忘れ物をしたんだ。
 宿題の写しなんだけどさ、結構日数的にやばかったからどうしてもその日に必要だったんだ。
 まあ家も近いしちょいと行って取ってこようって思って学校に向かったんだ。
 夏場の夕暮れ時ってなんか生暖かくてさ、それに西の空とか変な紫にそまるじゃん? すげー不気味で俺、内心日びりまくってたよ。意外と小心者だからさ。

 まぁ、そんなこんなで坂道に通りかかったわけよ。
 それほど急いでるわけじゃないけど、車も見えないし、今日も快速飛ばしちまおうって思ったのさ。
 そしたら、前のほうに自転車が見えたんだ。
 荷台に女の子が乗っててさ、二人乗り? 荷台をぎゅーって押えてこっちみてんのよ。遠目にもニコニコ笑ってるのわかってうらやましいやら、悔しいやら。
 だってそうだろ? 俺なんて夏休み部活と宿題に追われて彼女なんてつくる暇ねーっつうの。
 でもま、今はそんなことよりも宿題のほうが大事だし、さっさと坂を下りたわけさ……。

続く

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