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18_前編

「あ……」
 タイムセールで半額とされていたお弁当に手を伸ばしたとき、横から伸びてきたおじさんに取られてしまった。
 おじさんは「悪いね」と笑いながらレジに向かっていく。
 はぁ……、いつもこうだ。
 といっても、横取りされることじゃない。たしかに横取りされることはあるけど、重要なのはそこじゃなくて、優柔不断な性格だ。
 今日の夕飯を何にしようかって悩んでいるうちにどんどん半額のお弁当がなくなっていって、最後の一つも今さっき掠め取られたばかり。
 ついでにいうと、今日はわたろうとした信号全て微妙な点滅でさ、わたろうとしたらクラクション鳴らされて、待とうと思うと車が無いんだ。
 いや、うらめに出たのが辛いって言うじゃなくてさ、その、つまらないことで悩んでしまうことが嫌なんだ。
 ……。
 いや、ソレを悩むのがだめなのか。
 いいや、今日はおにぎりと惣菜かって帰ろ。

 ……。
 はぁ……。
 困った。どのレジに並ぼう。
 右のレジは籠一杯に商品積んだおばさんがいる。けど、レジの定員さんは若くててきぱきしてる。
 左のレジは二、三人並んでるけど、なんか慣れてないみたいですごく遅い。
 真ん中はというと……、あぁ、こんなこと悩んでる間に並ばれちゃったよ。
 ほんと、この性格困るよ……。

~~

 買い物を終えたらさっさと車を出す。
 そうじゃないと帰宅の渋滞に巻き込まれるから。
 今日は順調かな? いや、中途半端に混んでるよ。
 どうしよ、裏道使っていこうかな。けど遠回りなんだよな。それに自転車とか多くて邪魔だし……。
 いいや、このまま大通りで帰ろう!
 僕は前の車が進むのを見計らってアクセルをゆっくり踏んだ。

~~

 大通りの交差点で信号待ち。
 右折待ちはすくないんだけど、前を行く車のおばちゃん、青なのに止まってやんの。信号の見方ぐらい覚えてくれよ、まったく。
 なんだってこう、僕は運がないんだろ。

 ……。

 ようやく行ったよ。
 どうしよう。信号黄色になりそう。いけるか? 危ない? いや、大丈夫でしょ。

 僕は投げやりな感じでハンドルを切る……と、いきなり信号が変わった。
 僕はバックしようとしたけど、詰められていて戻れない。
 まっすぐ行こうにも対向車は全然ブレーキを踏んでないみたいで、急スピードできて、そのまま……。

 ………………。
 …………。
 ……。

~~

 気づいたら薄暗いところにいた。
 どこだろう。
 わからない。
 ん? あっちのほうに誰か居る。
 なんでわかったんだろ。
 全然暗いのに。

「あのぉ……」
「ん? ああ、はい、なんすか?」

 振り返った男を見て、僕はぎょっとした。
 そいつは魔女のような鼻と尖った耳、釣りあがった目。レンズの入っていないめがねをかけているけれど、なんでだろう。
「貴方はいったい?」
「なんですか、失礼っすね。自分はただの悪魔っすよ」
「悪魔?」
「ええ、そんな驚くことないでしょ」
「いや、だって、悪魔なんて」
「居るんだからしょうがないでしょ? ……それよりなんか用?」
 自称悪魔、すくなくとも人間ではないそいつは耳に鉛筆を置いてしきりに帳簿をつけている様子。
「あ、いえ、無いです」
 忙しそうなので邪魔をしちゃまずいと思った僕は濁すように答える。
「ああ、すいませんね。ちょいとこっちのほうが立て込んじゃって。はいはい、今終わりますから、待っててくださいねっと……はい終わり!」
 そういうと彼は用紙を一枚破り、ぱっと空中に投げる。
 その紙はひらっと翻ったあと、一瞬にして燃えた。
「なにそれ、手品?」
「いえ、ただの契約破棄です」
「契約破棄? そんなことできるの?」
 悪魔のイメージというと契約したら絶対で、必ず魂を抜かれるってのが相場だと思う。
「いやいや、そんなことありませんよ。契約に不備があったり、最初から契約を破棄できるように書類を作ってます」
 この男、僕の心を読んでいるのだろうか、さも当然そうに僕の疑問に答えてきたし。
「ええ、そうですよ? なんたって悪魔ですし」
「はぁ、そうでしたか」
「ええ、そうでしたよ」
「……」
「……」
「あ、その、契約破棄なんてできるんですか?」
「当然です。というか、今はどこもうるさいですからね。リコールだのクーリングオフだの言われたら悪魔だって商売あがったりです。まぁ、その気になれば強引に魂を持っていくこともできますがね?」
 にやりと笑って僕を見る。もしかしてコイツ、僕の魂を?
「いえいえ、貴方の魂なんていりません。というか、もらって何をしろっていうんです?」
「え? だって、食べるとか……」
「食べるって、私だって美味しいものが食べたいです」
「僕の魂って美味しくないの?」
「いえいえ、ハンバーガーとか牛丼とかあるでしょ? 私だってそういうもののほうが食べたい」
「じゃあ、どうして魂を?」
「魂……。いえ、契約によってはたしかに魂をもらうこともあるんですがね、実際はそういうもんじゃないんですよ。まぁ、説明してもわからないでしょ。貴方馬鹿そうだし」
 あっけらかんと言う彼に僕はちょっとむかついた。けど、彼の言うことが本当だとしたら、僕の命なんて吹けば飛ぶようなものだ。ここはひとつ冷静にならないと。
「そうですね。よい心がけです」
「その、いちいち心を見るの止めてくれない?」
「いや、どっちかというと、かってに聞こえてくるんですよ」
「そう」
 それはそれで不便かもしれない。
「それで、その悪魔さんが僕になんの用ですか?」
「ん~。無いですね」
「それじゃ、どうしているの?」
「われおもうゆえにわれあり」
「冗談はよしてください」
「いえいえ、多分、そんなところだと思いますよ。まあ、かなり悪質ですけど、悪魔だけに」
「もういいですよ。それより、ここはどこなんです?」
「夢の中」
「夢? 僕の?」
「ええ」
「っていうか、僕はどうしてここにいるの?」
「夢なんだから……、寝てるんじゃないすっか?」
「寝てるって……」
「いや、だって夢って寝るとき見るもんじゃないの? なんか私間違ったこといってます?」
「いや、別に」
 妙だな。小ばかにされてるのはわかるけど、いったいどうしてこんな夢を見てるんだろ。
 っていうか、僕は寝てるって、事故にあったんじゃないの? 大丈夫なの?
「さあ? ただ、寝てるってことは生きてるってことじゃないの?」
「え? あ、そうか……。僕は……、けど、目が覚めないってことは……大変なんじゃないの?」
「それは私にはわかりません」
「そんな、なんとかしてくれよ。そうだ、契約しようじゃないか。僕を目覚めさせてくれ」
「いいですけど、その場合……、

続く

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