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08

「おら、走れ! 次、セカン!」

 炎天下の中、白球を追いかける山陽高校ナイン。
 額からは滝のように汗を流し、イレギュラーバウンドに対応できずに頭から地面に突っ込む部員達。
 お昼ごろには真夏日の指標を軽く越えているというのにも関わらず、ノックは続けられていた。
 同じ強豪であるサッカー部はすでに練習を中断して、室内での筋トレに変わっているにも関わらずだ。

「……先輩、もうよしましょうよ……、みんなばてちゃいますよ……」

 柚子はバットを握る勝則に震えた声で抗議する。
 部室での行為を忘れたわけではない。彼らがどういうつもりで練習に参加しているのか、その下心はみえみえ。

「ふ~ん、マネージャーのくせに文句言うんだ」

 だからこそ、柚子が話しかけてきたときに待ってましたとばかりにニヤつく。

「違います。ただ、ちょっとやりすぎだと思ったから……」
「何がやりすぎなんだよ。野球部伝統の千本ノックだろ? 俺らもやってたって」

 今年入部したばかりの柚子にはなじみの無い話だし、それに実際に千本するはずがない。しかし、隣で控えている真一は大真面目に「あと八百五十」と数えている。

「先輩、今日はもう暑すぎますし、よしましょうよ」
「……たくっ、これだから女は……、おい、みんな集合」

 勝則の号令に部員が一斉に集まり、整列する。

「今から室内に移る。今日は暑すぎるとか文句をいう奴がいるんでな」
「おっす」

 皆表情にこそ出さないものの、暑さから開放されることに安心したのか、ほっとした様子で荷物をまとめだす。

~~

 三階の廊下で並ぶ部員達は腕立ての姿勢をさせられる。
 百回だろうか? 二百回だろうか? それとも八百回?
 そんな不安の中、勝則がおもむろに口を開く。

「五十回だ」

 意外どころか物の数ではない回数に、皆呆気に取られる。しかし、勝則は大真面目なようす。もしや仏心でもだしたのだろうかと思うも、それなら最初からむちゃなトレーニングを強要する意味がわからない。

「ただし、今から一時間かけて行ってもらう」
「え?」

 意味がわからない。一時間かけたら五十など余裕。というか、その倍以上、十倍だってできるだろう。

「いいか、五十回を一時間だ。一回の腕立てを一分強かけてやってもらう」
「そんなこと、意味あるんすか?」

 さすがにおかしいと思い始めた幹夫が声を上げるが、勝則は取り合わない。

「いいか、単純な筋肉じゃ意味ないんだよ。たまに遅いほうの筋肉も鍛えないと、長期戦には通用しないことがあるんだ。俺らみたいな高校野球は時間や日程の都合で一日に二試合とかざらだろ? そういうときのためにも、粘り強い筋肉を作る必要がある。わかるな?」
「おっす」

 わかるかと聞かれると正直疑問もあるが、そこは体育会系のさがとして、頷くしかない。それに、下手にさからって外での練習を強要されても辛いだけだから。

「俺がタイムを計るから、それに合わせてするんだぞ、一人でも失敗したら最初からだ。それじゃあハジメ!」

 急に付け加えられた無理なルールに異を唱えることもできず、部員たちはゆっくりとした腕立て伏せを始めだす。

続く

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