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09

 見た目の筋肉をつけるためならば確かに効果はある。けれど、運動用ならばそれほど意味のあることではない。柚子も最近何かの記事で読んだことがある。
 菅原の練習メニューでも特に重要視されておらず、普段の練習ではストレッチのほうに時間を掛けることが多い。

 二十回にして一人が脱落し、五分休んだあとでまた最初から。
 そしてこんどは一七回目で別の部員が脱落する。
 見た目は非常に地味なのに、おかしな姿勢の維持は非常に辛いらしく、みな誰も辛そうである。

「先輩、こんなこと……」

 柚子はたまりかねてまたも抗議する。

「なんだよ、お前が外で練習するなっていうからこうしたんだろ?」
「だって、こんなことしたって無意味じゃないですか……」
「ふうん、ならさ、ちょっと練習についてミーティングしようか?」
「え?」

 いきなり腕をつかまれ、引っ張られる。抵抗しようにも相手は男。敵うはずがない。

「ここじゃなんだし、部室行こう」
「ちょっと、先輩?」

 こうなることはある程度予想ができていた。けれど声を上げなければ、博之どころか部員全員が壊されかねない。
 柚子は彼らのスポーツマンとしての倫理を信じたかったわけだが、おそらく……。

「お前ら、サボるんじゃねーぞ。真一、見張っておけよ」
「えー」
「あとで交代すっから」
「ぜったいだぞ!」

 つまらなそうに言う真一だが、交代の言葉にへらへらした笑いを浮かべると、また時計を見て号令を掛ける。

~~

 部室に連れて行かれた柚子は奥へと押し込まれ、テーブルに座らされる。

「なんですか、大声出しますよ……」

 出せないことは暗黙の了解。甲子園を目指すナインを庇うため、彼氏を守るためにも不祥事を表にだすわけにはいかない。

「まぁ柚子ちゃんもそんなにかたくならないでさ……」

 勝則はジャージのズボンを脱ぎ始め、パンパンになっているトランクスを見せる。
 その表面は張り詰めており、中央が粘液でぬらぬらと濡れている。
 おそらくこうなることを想定していたのであろうその卑劣なやり方に怒りを感じてしまう。

「嫌です。もうしません」
「そう? 別にいいけど……」
「へ?」

 意外なほどにすんなり諦める勝則。彼はそそくさと前をしまうと、仲間を引き連れて部室を出ようとする。

「ちょっと、どういうつもりですか?」
「ん? だって柚子ちゃんは俺らと練習について話すの嫌なんだろ? ここにいてもしょうがないじゃん」
「な、だって、なんで練習のこと話し合うのにズボン脱ぐ必要があるんですか!?」
「だって、なぁ?」
「ああ」

 男子達はさも当然のようにへらへら嗤い合い、まともに取り合おうとしない。

「それより行くぞ。さっきよりは涼しくなってきたし、千本ノック始めようぜ」
「ああ、まだ八百五十残ってるしな!」
「ちょ、ちょっと!」

 確かに日も落ち始めているが、その分部員達の体力も落ち始めている。しかも根拠不明の筋トレの疲労があるというのに、今から練習などと……。

「まってください。話し合いましょうよ」
「ふ~ん。その気になったんだ……」

 再びドアが閉まる。
 そして衣擦れの音、人数分……。

続く

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