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23_前編

『一ヶ月三千円』

 買い物帰り、近所の貸しビルの隣、空き地だと思っていた場所にそんなことが書いてあるたて看板を見つけた。
 いったいなんの値段だろうと見てみると、そこには月極と書いてある。
 当然ながら俺は驚いた。東京の外れ、むしろ埼玉に近いとはいえ、そんな破格といえる料金があることに驚かずに居られるだろうか?
 というか、今俺が住んでいるこのアパートの月極の駐車場ですら五千円取られるというのにだ。
 俺は早速電話をして聞いてみることにした。

~~

 電話の後、駐車場の隣にあるビルにて契約を行った。
 不思議なことにすんなり契約ができた。
 スーツ姿の少々強面の男性が妙に腰を低くして対応してくれたのが印象的だったが。

 こんな掘り出しものの物件、もっと応募者が居てもおかしくないのだろうか?
 それとも気付かない人が多いとか? まあ屋根もないし、駐車場も空き地をそのまま転用したようで整備されていないわけで、ここに停めるぐらいならもう少し出して雨風、砂利道から車を守りたいと思うのが普通だろうな。かくいう俺も極度の金欠が無ければこんな場所を借りたりしないだろう。
 帰り際、近所のがき共が軟球片手にキャッチボールをしていたのを見て、かなり不安だったのだが……。

~~

 ある日のことだ。
 俺がちょっと買い物がてらドライブに行こうと車を取りに行ったときに、それを見た。
 てかてか光る竜の恥ずかしい柄を背負ったジャンパーの一団がそこに居た。
 いわゆる不良というか暴力的な集団なのかと俺は身構え、その日は怖いのでそのまま散歩に切り替えた。

 まいったな。ガキ共だけならまだしも、大きなガキ共までいるなんて聞いてないぞ。

~~

 さらにある日のことだった。
 どうしても仕事で車が必要だったのだが、やはり例によって例のごとく、あの集団が居た。ただ、背中に竜を背負っておらず、代わりに黄色い腕章のようなものをつけているのが見える。
 本当は怖かったが仕事には変えられず、仕方なくその集団のほうへと向かった。

「……なんだよ、文句あるのか?」

 腕章の集団の一人がうんこ据わりのまま俺に声を掛けてきた。
 眉が薄く、目がどことなく黄色く濁っている彼は単純に怖い。

「車を出したいんだが……」

 その場の空気に圧され、俺は小声になる。

「ああーん!?」

 俺の弱気に付け込むかのように、腕章の集団は強気になり、嘲るような笑いも出る。

「……おい、お前ら、ここはその人の駐車スペースだぞ。さっさとどけろ」

 俺が困っていたら貸しビルのほうから貸主の男性がやってくる。しかもあの強面にドスの効いた声のおまけ付き。腕章の奴らもビビッたらしく、皆うんこすわりからびしっと直立しやがったの。
 あはは、笑えるわ。

「お前ら、今日はもうお開き。解散だ、解散しろ」
「……はい」

 腕章の連中は貸主さんの言うことにやけに素直に頷くと、そのまま俺に挨拶無しにいってしまう。
 といっても、お詫びを入れられても怖いし、そのほうがいいかもしれない。

「すみません。ちょっと目を離した隙にすぐこうなって……、もしまた車を出すときにこういうことになっていたら遠慮なく言ってください」

 俺には妙に腰の低い貸主さんの変わり身の早さもなかなか怖いものがある。

「それと、今日は何時ごろにお戻りになりますか?」
「え? それって言わないとだめなんですか?」
「いえ、さっきのような奴らが溜まってたら大変じゃないですか。だから、帰る時間頃になったら駐車場を見回ろうと思いまして……」
「そうですか、それはどうも……そうですね、今日は……」

 なんとも親切なものじゃないか。
 俺は帰る予定の時間を教えてから車を出した……。

続く

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