FC2ブログ

目次一覧はこちら

葉月真琴の事件慕_15

**

 喫茶室へ戻るころにはもう日が傾き始め、西の空は赤く染まっていた。
 パトカーが相変わらず止まっているせいか、人だかりもみえる。
 このまま正面から帰るとなると、今日の出演者である真帆が何かと奇異の目で見られることが予想出来る。それはあまり気分の良いものでもない。それならと非常口から外に出ようとなったらしい。
 だが、今すぐ帰るということに対して真帆はまだ抵抗があるらしく、歩が遅い。
「由真さんたちにも挨拶したい……」
 非常口を前にして、ようやく観念したのか真帆はそう言う。
「じゃあ、僕が言ってきますよ……」
「ダメ。またなんか無駄話して道草食うから。あたしが行ってくる」
 澪は真琴の首根っこを捕まえて非常口に向かわせる。そして非常階段のほうへと入ろうとして……。
「澪、そこはダメ!」
 慌てた真琴に呼び止められる澪。すんでのところでドアは開かなかったが、澪もようやくそれを理解する。
「あはは、行ってきます!」
 そういって向こう側にある上手側への非常階段へと向かう澪。
「まったく澪ってば、そそっかしいんだから……」
 梓はぷりぷりしながら、真帆と非常階段のドアとの間に立つ。
「ポン助……」
 真帆が力なくそう言うので、真琴は彼女に振り返る。
「なんですか? 真帆さん……」
「もう、ポン助はしゃべらなくていいの」
 そう言って彼の頬を突く真帆。
 梓は複雑な表情でそのやり取りを見つめるが、今は彼女の自由にさせてあげようと見て見ぬふりをする……が、
「あれ? ねぇ、真琴君、あれってば……」
 非常口の向こう、駐車場には車があり、見知った男が居る。
「なになに? あっ……あの人達……」
 今朝の迷惑なファンが未だ駐車場にたむろしているのが見えた。
「参ったわね。前門の人だかり、後門のストーカーって奴かしら……」
 梓は癖なのか親指の爪を噛む。
「お待たせ……。磯川さんはまだ少し残らないといけないみたいで、真帆さんによろしくだってさ。何してるの?」
「うん、それがまたあの人達が居るみたいなんだ……」
「え? 嘘……」
 澪も言われるままに身を乗り出し、すぐに嫌そうな表情になる。
「まったく何とかならないのかしら……? ね、真琴、あんた男の子なんだから、しっかり守りなさいよ。ボディガードよ、ボディガード……」
「えと……、一緒に帰るよりも僕に考えがあるんだ……」
「何?」
「それはね……」
 真琴の提案に三人は耳を傾けたあと、澪の嫌そうな声と梓と真帆の楽しそうな頷く声がした……。

**

 非常口のドアが開き、相模原高校の臙脂色の制服姿の女子が走り出るのが見えた。
「お、真帆ちゃんだ! 行くぞ、お前ら!」
 待ってましたとばかりにファンというべきかストーカー達は、重そうな肩掛け鞄を彼女の後姿に向けながら追いかける。
 男の足と女の足。体力、持久力ならやや女子に分が悪い。ファンと彼女の差はだんだんと縮まりつつある。
 行く先にも特にバスや車が控えているわけではなく、このままでは追いつかれる……と思いきや、ギアを変えたかのようにスピードアップしだす彼女。
 距離が離れ始めたことに焦りを感じたファンも負けじと腕を振りつつスピードアップ。
 だが、また距離が縮まったところで、さらにスピードアップ。
「まて、まってくれ……、逃げなくても、にげなくてもいいじゃないか~」
 徐々に脱落者が出始めた頃、肩掛け鞄の男も荒い息をしながらしつこく追いすがっていた。
 そして……、
「うわっと! ぐわぁ!」
 道路と道路の段差で足が上がりきらず、肩掛け鞄の男は前のめりに倒れる。すると何かが鞄から飛び出し、地面を滑る。
 男は顔をしこたま打ちつけたらしくしばらく唸っていたが、鞄から飛び出したものに気付いて辺りを見る。しかし既に時遅く、彼女がそれを拾い上げ……。
「やっぱり盗撮してた!」
 知らない女の子の憤る声。見ると臙脂色の制服の彼女はボーイッシュな黒髪であり、真帆とは似つかない爽やかな顔立ちだった。
「君、誰……?」
 男のそんな疑問の声も、踵を返す彼女には届かないわけで……。

続く

Trackback

Trackback URL
http://13koharu.blog73.fc2.com/tb.php/524-4a56f4fb

Comment

Comment Form
公開設定

プロフィール

小春十三

Author:小春十三
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ

創作検索ぴあすねっとNAVI
dabundoumei
trt
オンライン小説/ネット小説検索・ランキング-HONなび  
リンク予定


二次元世界の調教師様のサイトです。



無料アクセス解析