「お疲れ~」
駐車場の物陰に隠れていた真帆に梓に真琴。上手く巻いて帰ってきたのだろうと労うが、澪は深刻な顔で欅ホールへ戻る。
「ちょっと、どこ行くの澪?」
「それどころじゃないわ。皆も来てよ!」
先ほどから澪が小脇何かを抱えているが、どうやらビデオカメラの様子。
「澪、それって……」
「ビデオよビデオ!」
「もう悔しいったらありゃしないわ! あたしもされたんだから!」
「え!?」
憤懣やるかたなしといった様子の澪は非常階段を一段飛ばしで駆け上がると、控え室へと入る。
その様子を石塚は目をしばたかせながら見ていたが、続く梓達を見送る。
**
「真琴、鍵閉めて、鍵!」
「あ、うん」
後ろ手で鍵を掛ける真琴。そこにはまださめざめとした様子の久美が居たが、澪はとりあえずビデオの再生する。
「これどうしたの?」
画面を凝視する澪に梓が尋ねると、澪は「見てて」とだけ言う。
しばらく暗い画面が続いたが、続いて拍手が起こり……。
「あ、これって……」
そこには今日の舞台の様子が映し出されていた。
「本当に盗撮? うわ、さすがにこれは犯罪でしょ?」
「今日のコンサートっていうか、撮影は常に禁止なんだけど……」
交々な感想がかわされる中、問題のシーンへと進む。
澪と梓の低い声が舞台の台詞に混ざって聞こえたあと、屈んで前を通る梓と澪。
何かに気付いたのかカメラは急旋回すると、澪のお尻を捉え、ズームイン。
彼女が歩くたびにスカートが捲りあがり、肌触りの良さそうなグレーの布が太ももとコントラストを作る。
「くう~、許せない! 警察に突き出してやるんだから!」
澪は怒り頂点とばかりにそう叫び、ふとあることに気付く。
「今のシーンもう一度……」
真琴がビデオを手にし、真剣な表情で画面を見る。
繰り返されるのは……。
「このスケベ!」
澪のこぶしにより、真琴は脳天に強い刺激を受けたわけだった……。
**
澪に追い出された真琴は頭をなでながら控え室を出る。
「どうかしたの?」
石塚は石川と何か話し合いをしていたようだが、真琴の様子に不思議そうに顔を向ける。
「いえ、こちらのことです……」
だが……、
「あの、石川さん、ちょっとお尋ねしたいんですが、音がおかしくなったのって第二幕の始めですか?」
「え? ああ、そうだな、いや、しばらく経ってからだな。十分、十五分ぐらいしてからだったよ」
石川は首をかしげながらもすぐに思い出す。
「なんかこう、ぼやけたというか、気が抜けた感じになってね。前もそうだったけど、ここの音響効果って完璧すぎるっていうか、一つでもしくじると全体がぼやけるんだよ」
「そういうのってわかるんだ」
達弘は感心した様子で言うので、石川は指で四角を描きながら応える。
「うん、慣れてないとわからないけど、デジタルな表示だと丸わかりかな?」
「へぇ……」
「やっぱり……」
感心した様子の石塚だが、真琴は別の感想があるらしく、思いつめた様子で下手へと向かう。
「ったく、許せないんだから……あれ、ちょっと真琴? どこに行くの?」
控え室から出てきた澪は去り行く真琴の後姿に声を掛けるが、彼は振り返るだけで立ち止まる気配が無い。
「ごめん、ちょっと忘れ物したから……。それと、さっきのビデオ、残しておいて欲しいんだ」
「いいけど、何するの?」
「もう一度……澪のパンツが見えたところ、もう一度見たいんだ」
真琴はそう言うと下手へと走る。
「あんのバカ……」
澪は恥ずかしさに顔を真っ赤にさせており、その後ろでは石塚と石川が笑いを堪えるのに必死のようで……。
続く
「それどころじゃないわ。皆も来てよ!」
先ほどから澪が小脇何かを抱えているが、どうやらビデオカメラの様子。
「澪、それって……」
「ビデオよビデオ!」
「もう悔しいったらありゃしないわ! あたしもされたんだから!」
「え!?」
憤懣やるかたなしといった様子の澪は非常階段を一段飛ばしで駆け上がると、控え室へと入る。
その様子を石塚は目をしばたかせながら見ていたが、続く梓達を見送る。
**
「真琴、鍵閉めて、鍵!」
「あ、うん」
後ろ手で鍵を掛ける真琴。そこにはまださめざめとした様子の久美が居たが、澪はとりあえずビデオの再生する。
「これどうしたの?」
画面を凝視する澪に梓が尋ねると、澪は「見てて」とだけ言う。
しばらく暗い画面が続いたが、続いて拍手が起こり……。
「あ、これって……」
そこには今日の舞台の様子が映し出されていた。
「本当に盗撮? うわ、さすがにこれは犯罪でしょ?」
「今日のコンサートっていうか、撮影は常に禁止なんだけど……」
交々な感想がかわされる中、問題のシーンへと進む。
澪と梓の低い声が舞台の台詞に混ざって聞こえたあと、屈んで前を通る梓と澪。
何かに気付いたのかカメラは急旋回すると、澪のお尻を捉え、ズームイン。
彼女が歩くたびにスカートが捲りあがり、肌触りの良さそうなグレーの布が太ももとコントラストを作る。
「くう~、許せない! 警察に突き出してやるんだから!」
澪は怒り頂点とばかりにそう叫び、ふとあることに気付く。
「今のシーンもう一度……」
真琴がビデオを手にし、真剣な表情で画面を見る。
繰り返されるのは……。
「このスケベ!」
澪のこぶしにより、真琴は脳天に強い刺激を受けたわけだった……。
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澪に追い出された真琴は頭をなでながら控え室を出る。
「どうかしたの?」
石塚は石川と何か話し合いをしていたようだが、真琴の様子に不思議そうに顔を向ける。
「いえ、こちらのことです……」
だが……、
「あの、石川さん、ちょっとお尋ねしたいんですが、音がおかしくなったのって第二幕の始めですか?」
「え? ああ、そうだな、いや、しばらく経ってからだな。十分、十五分ぐらいしてからだったよ」
石川は首をかしげながらもすぐに思い出す。
「なんかこう、ぼやけたというか、気が抜けた感じになってね。前もそうだったけど、ここの音響効果って完璧すぎるっていうか、一つでもしくじると全体がぼやけるんだよ」
「そういうのってわかるんだ」
達弘は感心した様子で言うので、石川は指で四角を描きながら応える。
「うん、慣れてないとわからないけど、デジタルな表示だと丸わかりかな?」
「へぇ……」
「やっぱり……」
感心した様子の石塚だが、真琴は別の感想があるらしく、思いつめた様子で下手へと向かう。
「ったく、許せないんだから……あれ、ちょっと真琴? どこに行くの?」
控え室から出てきた澪は去り行く真琴の後姿に声を掛けるが、彼は振り返るだけで立ち止まる気配が無い。
「ごめん、ちょっと忘れ物したから……。それと、さっきのビデオ、残しておいて欲しいんだ」
「いいけど、何するの?」
「もう一度……澪のパンツが見えたところ、もう一度見たいんだ」
真琴はそう言うと下手へと走る。
「あんのバカ……」
澪は恥ずかしさに顔を真っ赤にさせており、その後ろでは石塚と石川が笑いを堪えるのに必死のようで……。
続く