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葉月真琴の事件簿_if_01

 もし、あのとき、調べないで帰ったら……?
「えと……、わかったよ。一緒に帰ろう」
 真琴が頷くと、梓は先立って携帯を掛ける。
「うん、今帰るから……。え? 迎えに来てくれるの? 悪いわね……。それじゃあ待ってるわ……。今姉さんに電話したら迎えに来てくれるって。それまでお茶でも飲んでましょ」
 彼女は携帯を切りながら、喫茶室へと向かう。三人もそれに従った……。

-:-

 三十分とかからずに迎えの車がやってくる。現れたのは二十代半ばの女性で、スラックスにベスト、ネクタイという恰好。縁の太い眼鏡をかけているせいで印象が暗いが、物憂げな瞳と控えめな唇が印象的だ。
 一見ショートヘアに見えるが、後ろの髪を伸ばしており、赤いバンドで結ばれている。
 スタイルはというと、成熟した大人の印象というべきか、官能的なラインがあり、控えている三人は引き立て役でしかない。
「梓お嬢様、お迎えにあがりました」
「愛美さん、お嬢様はよしてよ……」
 苦笑いする梓に対し、澪と真琴はお互い顔を見合わせる。彼女が昼休みに持ってくるお弁当は「お手伝いさんが作った」程度にしか聞かされておらず、家政婦がいるのだろうと考えていたからだ。
 だが、今こうして目の前に現れた女性はそれよりもやや高級な存在。執事というのだろうか?
「梓、アンタ本当にお金持ちのお嬢様なんだ……」
「ちょっと澪まで変なこと言わないでよ。愛美さんは住み込みのお手伝いってだけよ」
「住み込みって……」
 そこまで言いかけて、何かに気付いた澪は小さく頷く。彼女の家のことは多少なり推測できる程度の付き合いはしていたから……。
「ほら、行くわよ」
「はーい」
 梓がさっさと助手席に乗り込むので、真琴達もそれに続いた……。

-:-

「あのさあ、あれってやっぱり事故なのかな……」
 帰りの車の中、おもむろに真帆はそう呟いた。
「真帆、考えすぎだよ……」
 梓は振り返り、彼女に険しい表情を向ける。
「だって……信じられないよ。いくら集中してるからって……。それに先生、かなり背高いし、足踏み外したって手を伸ばせば向こう側の壁に着くんじゃないかな?」
 おそらく彼女が事故でないと思う根拠だろう。
 真琴も事故現場を思い出すことしばし、人が落ちる程度の隙間もあるが、彼でも手を伸ばせば何とか壁に着く程度でしかない。また、反射的に手で庇うことも考えられ、不可解な点も残る。
「梓お嬢様、いかがいたしました?」
 ミラーに写る愛美はちらりと梓を見る。
「んーん、なんでもないの。こっちの話しだから……」
「はい……」
「そ、そうだ……。あのさ、こんなときに言うのはなんだけど、今度あたしさ、試合あるんだ。ソフトボールの。でね、でね、真帆さんにも応援に来てくれないかな~なんて思ったりして……」
 暗い雰囲気に耐えられなくなった澪は場違いな明るい声を出す。
「澪? ……そ、そうね。今回は真帆が応援された側だし、お礼返しって訳じゃないけど、気分転換には丁度いいわね。澪の野性味溢れるプレイを見たらびっくりするわよ?」
「だれが野性味溢れるのよ! あたしはこう見えてもいぶし銀なんだからね? っていうか、この前の練習試合では見事な送りバントで……」
 得意そうに説明する澪だが、梓は理解できないらしく「送りバントって何? 犠牲フライ? ダブルスチール?」と愛美に聞いている。
「ふふ……」
 その様子に沈みがちだった真帆は笑い声を堪えることが出来ず、ぷっと吹き出す。
「なんか楽しそうだね。私も見たいな。澪さんのスーパープレイ」
「だからいぶし銀だってば。それと……」
 澪は視線を迷わせたあと、
「澪でいいわ。あたしも真帆って呼ぶから」
「そう? うん。じゃあ澪。澪ね! ポン助はポン助ね」
「僕は真琴でいいです……」
「ねぇ、そのポン助って何?」
「うふふ、あのね、ポン助っていうのは……」
 梓は含み笑いを堪えながら言おうとするが……。
「ダメ! それ言ったら私もいうからね!」
「ちょっと、冗談よ。冗談だってば! もう、真帆ったら!」
「そっちこそ!」
 真帆も梓もフンと顔を背けるが、直ぐに笑い出して仲直り。澪だけ真実がわからず、ただ首を傾げていた……。

続く

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