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幼年編_ラインハット_その一

 妖精の国の事件を解決してから一ヶ月ほどたった頃、サンタローズの村にも若葉が生い茂る。
 リョカはその様子を絵にしてアンに贈ろうと思い、いつものようにスケッチブックを持って出かけていた。
 わざわざ外に出るのは気分転換と父の調べ物の邪魔をしないため。人気の無いところに行くのはリョカが邪魔されないためと、アンを待つためだ。
 リョカはサンタローズに滞在している間に妖精の国、レヌール城、村の北の洞窟、サントフィリップ号の船室など色々描いてきた。そしてリョカがかき上げると、きまって例の女の子がやってくる。彼女がやってくるのは決まって人がいないときだった。
 不思議なのはその態度で、礼儀正しいときや妙に不機嫌だったりと様々。しかも数週間程度なのに雰囲気が幼かったり大人びていたりととにかく不思議な女の子だった。
 ――変な子だな。アンさんは……。
 リョカはそんなことを思いながらコンテを持つ。
 今、ガロンはシドレーを追いかけて遊んでいるので写生に集中できる条件がそろっている。
 だが、今日は別の誰かがやってきてらしく……、
「元気?」
 すっと前が暗くなり、視界が誰かの手で覆われる。
「わ!?」
 リョカが驚いて後ずさりすると、今度は柔らかな刺激が後頭部に触れる。
 無理やり上を見上げると、少し前に窮地を救ってくれた、あの端整な顔があった。
「あ、アニスさん……」
「ごきげんよう。リョカ君」
 アニスはリョカを正面に向き直らせ、そのまま抱きしめる。同時に甘い花の香に包まれ、思わず鼻息を荒くしてしまうリョカ。
「わわ! アニスさん、苦しいよ!」
 口ではそう言うが、春の日差しと相成って柔らかな心地よさに抵抗する気持ちを失い始める。そして……。
 ――あっ、また……。
 最近よく起こる身体の変化。おしっこに行きたいわけでもないのに、おちんちんが大きく、堅くなること。何度もトイレに行っては出ないのを確認するのが最近の朝の日課。
 気恥ずかしさからサンチョはパパスに相談することもできず、リョカは困っていた。
「アニスさん、苦しいよ!」
 現象を知られたくないリョカは慌てて彼女の肩を押して距離を取る。だが、押えの緩いズボンではそれが隠れることなくパンパンにテントを張っている。
「……」
 アニスもどうやらそれに気付いているらしく、じっと下を向いている。
 額に皺を寄せて怒っているようにも見えるが、唇はやや上がり気味。笑いたいのを堪えて無理にそうしているようにも見える。
「あの、ごめんなさい。僕ちょっと最近、おしっこが近くて、今も我慢してて、それで……」
 慌てて弁解するリョカ。
「ねえリョカ。貴方最近パンツが汚れたりしたことあった?」
「え? パンツですか? もうおねしょする年じゃないし……」
 苦笑いするリョカ。もう十二だというのにその疑いをかけられるのは心外だ。
「おしっことかじゃなくて、そうね、青臭い感じの匂いの……」
「え? 青臭い? んと……そういえばこの前レヌール城の……、あ、いえ、多分あったかもしれません」
 思い出されるのは黒い箱に閉じ込められたときのこと。ビアンカの「機転」により危機を脱出したとき、あの箱の中では青臭い臭いが充満していた。リョカとしてはそれがなんなのかわからず、ビアンカに聞くことも出来ず、さりとて気に留めるものでもないと忘れていた。
「そう……ふうん……」
 その答えにアニスはただ笑って……、どこかちょっと潤んだ瞳になりながら、頬に手を当ててリョカを微妙な薄笑いで見ていた。
 嘲るような視線ではないものの、何かこう、リョカを圧迫するものがあり、前に不意打ちでキスをされたときのことを思い出すようなものだった。
「あ、あの……」
 危険というわけではないが、リョカは自然と後ずさりを始める。
「どうしたの? リョカ……」
 しかし彼女はそれを許さず、挑発するかのように距離を詰める。
 顔と顔が近づき、また唇が触れそうになったとき、リョカは逃げずにただ固まった。
 キスの感覚は好きだった。アニスと初めてキスをしたときも、アンとキスをしたときも、ビアンカに触れたときも……。
「熱でもあるの? 顔が赤いよ?」
 アニスは心配そうに言うと、リョカの前髪をかきあげ、自分のおでこをつける。
 彼女は視線をあげて目をあわせようとしない。だが、リョカは眼前にある大人の、それも美人といえるアニスの顔を間近に見て、さらにおでことはいえ身体が触れることに興奮が高まる。
 ――僕、どうしちゃったんだろ……。
 下半身の異常はさらに強まる。硬さが痛いくらいで、服がこすれるだけでもびりびりする。
「ねえ、お姉さんには少しお医者さんの知識があるんだけど、ちょっとみてあげる?」
 ようやくアニスがおでこを離したと思ったら、なにやら思案気な様子で腕組みをする。
「え?」
 アニスはリョカを強引にござの上に座らせると、自分もその前で正座する。
「ほら、悪質な風邪だったりすると困るし……ね? 上着脱いで……」
 診てあげるというわりには、それは真面目な医療行為をする医者のそれに見えないわけで……。
「は……はい……」
 それでもリョカは年上のお姉さんということと命の恩人であることに逆らうことはせず、素直に外套を脱ぎ、医者に見せるように上着を脱ぐ。
 年頃の少年にしてはなかなか鍛えられているリョカの身体だが、最近は絵の仕上げなどでインドアなためか色白であった。そのせいか割合脆弱に見え、思い切り息を吸うとアバラ骨が浮かび上がる。
「へえ……、ふうん……」
 アニスはリョカの上半身を見つめながらため息を漏らす。
「あっ……」
 おもむろに伸びた彼女の指先が触れたとき、リョカは自分でも信じられない、か細い高い声を出していた。
「どうしたの?」
「いえ、なんでもないです……」
「ふん。じゃあ続けるね……」
 冷たい指先が腹を弄る。それは診察というよりは単純なイタズラというべきか、弧を描いたり、胸元に触れたりとやりたい放題。
「んっ……くっ……え……と……」
 アニスの指が彼の右胸を触り、薄ら寒さで勃起した乳首を撫でた頃、リョカは目を瞑っていた。
「どかした?」
「えと、なんか、ジンジンします……」
「どこが?」
「わかんない。アニスさんに触られているところが……」
「そう。リョカは男の子なのに乳首を触られるのが好きなのね……」
「そんなことないです……」
「嘘……。だってほら……」
 そう言って彼女は彼の敏感な部分を指で優しくつまむ。
「あっ!」
 瞬間電気が身体に走ったリョカは、腰を引いて前傾姿勢になる。
「ね?」
 目を開いたリョカの前には勝ち誇ったように笑うアニスがいた。
「それじゃあさ、まだよくわからないし、今度はパンツのほうを脱いでみようか……」
「え? パンツ! それはだめですよ!」
 無茶な提案にリョカはさすがに抵抗を示す。
 いくら人気がないとはいえ、みだりに下半身を露出するのはいけないこと。旅の途中であっても用足しは物陰でこっそり行うものだと言われている。当然ながら女性の前でおいそれと出すつもりはない。
「だって、リョカのパンツ、すっごく腫れてるよ? 何か悪い病気かもしれないし、もし何かあったら早めに治療したほうがいいと思うなあ……。お父様もリョカが病気だったら旅どころじゃないと思うの……」
「父さんが……」
「心配すると思うわ……」
 思わせぶりに声を落とし、ふうとため息をつくアニス。腕組みと頬に手を当てるのもあわせ、リョカを不安にさせる。
 ――もし僕が病気だったら父さん、旅に出られない? そんなの駄目だ。父さんは何か大切なことがあるんだから、僕がそれを邪魔したら……。
 リョカはすくっと立つと、腰布を解き始める。
「あの、本当に変な病気だったら困るんで、アニスさん、失礼ですけど診てください……」
 リョカは妙な興奮も忘れて焦ったようすで脱ぎ始める。
「うんうん……」
 対照的にアニスは笑いのこぼれそうなのを我慢した仏頂面でそれを待つ。
「ちゃんとお風呂で洗っているからそこまで汚くないと思いますけど……」
「平気平気、君ぐらいの年の子は穢れを知らない天使だから……」
 じゅるっと舌なめずりをする音がした。リョカがふと顔を上げると、口を開いた間抜けな様子のアニスが居る。
 彼女は「なんでもない」と口元を手で拭い、拝むように手を合わせながらリョカの下着が下ろされるのを待つ。
「あの、アニスさん、本当に大丈夫なんですか?」
「うんうん、心配ない!」
 だんだんとにじり寄るアニス。彼女の鼻は美人なそれを台無しにしかねないくらいに荒い息をしており、顔は紅潮、目は爛々と怪しい輝きを増す。
「それじゃあ……」
 リョカは不安を感じながらも下着に手を掛ける。そして……。
「待てや、ショタコン娘!」
 ぼうっと大きな火炎がリョカの背後から走る。
 アニスは瞬間指先を光らせて空中に文字を書く。精霊に呼びかける方法は何も印を組むことや声で求めるだけではない。だが精霊文字を空中に魔力で描くというのは高レベルな魔法使いにのみ可能な技であり、当然リョカには何をしているのかはわからなかった。
 次の瞬間、リョカとアニスは光の衣に包まれる。
「わぁ!」
 それは火炎の勢いを弱めることができるらしいが、それでも火の手はアニスに襲い掛かる。
「本当に邪魔ね、このホモトカゲ! バキマ!」
 アニスは略式詠唱のみで風の精霊を使役する。その場で突風が起き、弱まった火炎はそのまま消えていく。

続く

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