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ルラフェン その5

リョカの手に取ったお話。

 メダルと王様

 メダルの王様はメダルが大好き。
 王様は神話の時代からずっとメダルを集めてるんだ。
 持ってきた人には褒美を与えるんだって。
 でもね、もし王様のメダルに粗相をすると大変なんだよ?
 昔ね、僕の知り合いのお姉さんの友達の弟のお母さんの従姉妹の娘さんがメダル王のところで侍女をしていたんだって。
 メダルの勘定と金庫にしまうんだけど、あんなパジャマのボタンみたいなものを大層に扱うなんてばかばかしいよね。
 ある日、旅の若者がメダルを五枚持ってきたんだ。
 六枚あれば奇跡の剣と交換できたのさ。
 若者は剣が欲しくて欲しくてたまらなかった。いったいどこの殺人鬼だろうね?
 だけど王様、一枚足りないからと突っぱねた。
 メダル王のお家って結構大変なところにあってさ、四方を海に囲まれて、タコの怪物ダゴンや、イカじゃ釣れない地獄のザリガニとか魔物がわんさかいるんだ。行くのも帰るのも大変なのさ。
 侍女の子はすごく気の毒に思ったらしく、どうせ一枚と高をくくって褒美と交換しちゃったんだって……。
 そしたらその夜王様がカンカンになって怒ってさ。
 小さなメダルが一枚足りないって喚いて、家来一人ひとりに聞いて回ったのさ。
 隠し通せることもなく、侍女の子が犯人ってわかってね、王様、彼女にメダルを数えさせたのさ。
 一枚、二枚、三枚、四枚……。
 何回数えても一枚足りない。
 侍女の子は泣いて謝ったけど、王様の怒りは収まらない。
 泣いてる侍女の子を抱え上げると、井戸に放り投げて、誰が作ったか大きなメダルでフタをしたんだって……。
 それから毎日、夜になると……。

**

 子供だましの怪談だと笑いながら、リョカは本を閉じようとする。すると……。
「一枚、二枚、三枚……、一枚たりんわ~」
 何かを数える不審な声に、今まさに読んだ内容が被り、ぞくっと背筋が震える。
「……シドレー?」
「ん? 何? 今忙しいんだけど、後にしてくれる?」
 天井では人騒がせな翼竜が銭勘定をしていた様子。
「もう……」
 これではサントフィリップ号の赤毛の女の子を笑えないと思いながら、リョカは別の本を手にする。

**

 みんな消えた

 お忍びで世界を見て回っていたお姫様。
 教育係のじいやを連れて、今日もどこかで大活躍。
 女の子を食べちゃう悪い魔物をぶっ飛ばし、誘拐犯をふんじばる。
 エルフの秘密のお薬拾って、東国の力試しで五人抜き!
 けれど、ある日お家に戻ったら、そこには誰も居りません……。
『誰かいないの?』
 けれど、お返事ありません……。
『これは奇怪な……』
 じいやにお返事ありません……。
『ミー居ないの?』
 名前を呼んでも返事はなし……。
 みーんなどこかへ消えました。
 王様どこかへ消えました。
 姫様のこして、消えました……。
 じいやを残して消えました……。

**

「リョカ、居るか?」
「――!?」
 再び聞こえてきた迷惑な同行人の声に、リョカはまたも背筋をぞくりとさせる。
「脅かさないでよ、シドレー……」
「何が?」
「怖い本読んでて……。それで、シドレーの言う事がいちいちないようにフィットしてて……」
「ほう、それは雰囲気が出てよかったな。俺ちょっとガロンの散歩に行ってくるけど、ちゃんと修行せいよ」
「はいはい、わかったよ……」
「はいは一回でええで」
 翼の羽ばたく音がしたあと、集中が切れたせいか光が弱くなる。
「おっと……」
 リョカは慌てて印を結び、光を先ほどより強くさせる。それは怪談のせいかもしれない。
 シドレーの気配が消えるとなると一気に静かになる。もともとベネットのお家自体町外れにあることもあり、昼間であるにも関わらず、リョカは不思議と怖くなっていた。
 これ以上怪談の類を読むのもいやになり、気を紛らわせるためにも別の本を取る。
 その本には表紙に竜の絵が描かれており、例の不思議な剣の柄に良く似ていた……。

**

 天女と少年

 少年は探していた。石化した両親を元に戻す方法を。
 強い魔力による呪いで石となった両親を助けるため、少年は村を出た。
 村の外には魔物がたくさんいるが、それでも少年は挫けない。
 なぜなら彼には不思議な特技があったから。
 少年は魔物と心を通わせることが出来るのだ。
 彼に平伏した魔物は、彼と共に歩み、そして彼の率いるサーカスに参加した。

**

 手にした本はあまりにも子供じみていた。ただ、表紙に絵が描かれていた剣が竜に良く似ていることからか、気になった。もしかしたら、この本もまた例の剣に関わるものかもしれない。魔法好きなベネットが子供向けの冒険譚を集めるのにも理由があるだろうと、リョカは捲り始める。

**

 少年を見つめる赤い目の青年。銀の髪を風になびかせ、剣を巡って対峙した。
 青年は目的のために少年の持つ剣を欲していた。
 少年もまた両親を救うため、退くことはできない。
 ……アと……アは彼らを見つめ、どうしてよいかわからず、ただ成り行きを見守っていた。
 緊迫した二人の間に踏み込む燐とした声。
 女は二人を交互に見つめた後、連れ立った青年に被りを振る。
 女は青年に退くようにいい、剣は少年こそが持つべきという。
 青年はそれを運命の呪かと問うも、女は予言と答えるのみ。

**

 滲んだ箇所がいくつかあり、捲るたびにページが解けそうになる本に悪戦苦闘する。
 内容はどうやら竜の神がまだ天空に居たとされる神話の時代の物語らしい。
 かつてラインハット城でデールに連れられて読んだ内容に似ており、これは物語色を強めたものなのだろう。
 ただ、呪という言葉にまたも背中がぞくりとしてしまい、続きを読むべきか悩んでしまう。
 カツン……。
 不意に天井から物音がした。リョカはばっと上を見上げる。
 天窓はご丁寧に黒の布で覆われており、誰がいるかは見えない。もっとも、天井に自在に上がれるのは、翼を持った彼ぐらいだろう。
「……まったく、さっさと渡せって言ったのに、どこにいるのかしら……」
 そしてまたも本の内容に関わることで自分を驚かせようとする声に対し、さすがのリョカもむっとする。
「シドレー、いい加減に……」
 リョカは本棚に足を掛け、天窓に手を掛ける。
「してよね!」
 そして一気に開くと、そこには青い布と白い素足が二本、その付け根にはピンクの布地があり、白いレースのふわふわが縁取っているのが見えた。
「え?」
「きゃ! この変態!」
 何が目の前にあるのかわからないリョカだが、青い布が無理やり翻ったと思うと、それがそのまま彼の顔面に落ちてきて……、
「わわ……」
 柔らかで、すっぱい臭いのするそれを押し当てられると、そのまま自由落下を始める。
 魔法で防御するには、不埒な幸せが頭にちらつきそれどこれではなく、彼の後頭部は……。

続く

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