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サラボナの洞窟 その1

「お世話になりました」
 サラボナの街の入り口にあるアーチの下で、リョカはベネットに深くお辞儀をしていた。
「うむ。こちらも色々力仕事を手伝ってもらって助かったわい。リョカ君に旅がなければもうしばらく助手代理見習補佐をしてもらいたいのじゃがな」
 ほっほっほと笑うベネットにシドレーは「それってたんなる小間使いじゃ」と呟く。
 フローラを見送ってから二週間、修行を続けていたリョカはベネットの研究に必要なものを近くの海岸、草原や洞穴で採取していた。
 砂を数キロザルに入れて、特別な石や金を取り出す作業や、子供ほどもある岩を砕いて希少鉱物を取り出したり、独特な根っこを持つ不思議な植物を探したりと、様々だった。
 その間に魔法の詠唱方法を学び、行きがかり上覚えてしまった天候の魔法についても師事を受けることができた。
 最近は霧雨のようなモヤを放つ、天候の精霊による幻惑魔法マヌーサを覚えた。さらに強めることで、魔法を完全に遮断できる古代の魔法が使えるようだが、まだ暫く時間がかかりそうだった。
「ほな、いきましょか」
 サラボナへ行くにあたってギルドでまたも仕事を請けてきたシドレーは、麻袋を二つガロンの背中に乗せ、リョカと自分のたすきがけの鞄にも鉱物を詰めていた。
 話によれば、サラボナの街で、コネが無くとも鉱物を高く買ってくれる奇特な商人がいるそうだ。聞きかじった話を真に受けたシドレーは、リョカが割った薪の売上をそれに全てつぎ込んだそうだ。
「うん。それではベネットさんに良い日が訪れますように……」
 リョカはかつて父がそうしたような挨拶を真似、ルラフェンを後にした。
 急ぐ旅にあらず。リョカは軽い足取りで、ポートセルミ-サラボナ間の洞窟を目指した……。

**

 旅を始めてから二日後、サラボ山脈を抜けるための洞窟近くの休憩所へとたどり着いた一行。その宿では洞窟越えを前に、もしくは終えて一休みする旅の商人や一行で賑わいでいた。
「泊まれるかな? 夜風が防げればベッドじゃなくてもいいんだけど……」
 リョカは受付に並ぶ人達を見て野宿を覚悟していた。
「なんや、これやったら無理してでも超えたらどうなんや? 話し聞く分には歩いて数時間の直線じゃろ?」
「ん~、どうだろう。ガロンは疲れてない?」
 荷物をおろして丸くなっていたガロンは、たかが二日の野宿で疲れるはずもない。いくらリョカとともに平穏な日々を暮らせど、根は地獄の殺し屋なのだ。
「シドレーは大丈夫?」
「俺は疲れたらガロンさんの背中に乗るから」
「たはは……。まあ、僕もそんなには疲れてないし……」
 彼の後ろには大荷物を抱えた行商人が居り、さらにはうら若き女性とその従者がいる。
 リョカが列から抜けたところで彼らにベッドが回るわけでもないが、まだ余力のあることを踏まえ、宿を出ることにした。
「さて、今夜中に洞窟を抜けられるかな?」
「おう……」
 シドレーはそれに頷き、ガロンに荷物を背負わせる。ガロンは欠伸をしながら、のそりと立ち上がり、二人のあとに続いた。
「ん?」
 リョカが出口を潜ろうとしたとき、青い髪の男性と肩をぶつけてしまう。
「あ、失礼しました」
「いや……こちらこそ」
 男性はリョカの顔をまじまじと見つめ、驚いた様子だったが、隣にいた赤い髪の女性に促され、受付の列に並ぶ。
「どしたん? 知り合い?」
「いや、別に……」
「ふうん……けったいなカップルやけどな……」
「そう? 普通じゃない?」
「あ、いやそうじゃなくて……ま、ええか」
 赤い髪の女性の後姿を見つめるシドレーは、言葉を飲み込み、パタパタと空へと飛び出した……。

続く

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