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サラボナ その1

 洞窟を抜けたら平坦な道なりに進むことでサラボナの街が見えてくる。
 大きな橋を越えたところで空高く舞い上がったシドレーが、煌びやかな街の明かりを見つけて戻ってくる。
 興奮気味に話す彼はリョカとガロンを急かし、一行は早足でサラボナの街へと向かった……。
 商業都市サラボナ。
 古来より怪力と呼ばれた怪獣を撃退し、封印したとされる街。永久名誉市民とされるゴルドスミス家を筆頭に、街の有力者による代表で政を運営している。
 また、世界の経済、流通網を握っており、ラインハットやグランバニアのような大国とも対等、分野においてはそれを従える力を持っていた。
 彼らと対等に渡り合えるのは、おそらくは砂漠の国家、テルパドールぐらいだろう。

「うひゃぁ……。なんかすごい綺麗な街並やな……」
 石畳の道には街路樹にオリーブの木が植えられており、通りを行く馬車はその従者からして身なりがよい。
 近くのオープンカフェでは女学生達がお茶を交えて談笑をしており、向こうのほうではカップルが互いに見つめあう。
 リョカのような旅人風情はかなり浮いており、そのぼろぼろな外套をまとう姿を見た女生徒がくすくすと笑う。
「リョカ、人気やな?」
 それに気付いたシドレーにリョカは赤面する。
 ルドマン宅を教えてもらうのと、積荷を降ろすためにギルドを目指した。

**

「積荷はこれで全部ですか。ご苦労様です」
 ギルドでガロンに背負わせていた積荷を降ろし、受け渡す。受付のおじさんもやはり身なりがよく、ソロバンを弾いた後、領収書と一緒に紙幣を封筒で渡された。
「それからルドマンさんの家なんですが、どこにあるのでしょうか?」
「ルドマン? ああ、ゴルドスミス家ですか。それならこの道をまっすぐ行ったところです。小高い丘になっているからすぐにわかります。貴方も求婚者で?」
「求婚者? いえ、私的な荷物を届けにきただけなんで……」
 求婚者という言葉に首を傾げるリョカ。そんな彼を突き飛ばすようにシドレーがやってくる。
「なあ、旦那さん。この街に鉱物を買ってくれる商人がおると聞いてんやけど……」
 シドレーは目を輝かせながら例の希少金属の話をしだす。おじさんは人語を話す翼竜に驚くも、プライドなのかすぐに真面目な顔で応える。
「それもゴルドスミス家です。なんでもお嬢様が仕事柄希少鉱石を扱っているらしく、物によっては高値で買い取るという依頼を出されます。ただ、今は商談でアルパカに居られ、暫くはお休みです」
「アルパカ? まるっきり逆方向やないか……。つか、依頼もお休みかいな……。つか、ゴルドスミス家ってアイツやん……。そんなら首に縄かけてでも連れてくればよかった……」
 愕然とするシドレーは苦労して運んできた鉱物を見る。
 リョカがベネットの手伝いで掘り出した希少金属をくすね、木材を売り払い、重い思いで抱え、抱えさせてきた十数キロの希少金属。
 コネもなく、オマケに人ですらないシドレーが道具屋に持ちかけたところで、足元を見られて二束三文にもならないと。そう考えるとどっと疲れが沸いてくる。
「あかん、なんかくたびれてきたわ……」
 がっかりしすぎて飛ぶ力すら失った彼はガロンの上に乗る。迷惑な乗客にもガロンはそれほど気にすることなく、リョカに続いた……。

**

 ルドマン宅はすぐに見つかった。
 道なりに進むことで丘にある豪邸が見えたことと、そこを目指す人達が居たから。
 凛々しい若者、無骨な者、甘いマスクの青年に成金風情の男もいたりと様々。
 ――求婚者とか言ってたけど、それかな?
 すれ違う途中、ぎろりと睨まれ愛想笑い。おそらくリョカをライバルと思ってのことだろう。
 なんとなくやりにくさを感じたリョカは、例の荷物を抱えて駆け出す。アンとの約束もしかり、この街の豪華だったり、流麗であったり、高貴な雰囲気な街に場違いな感じたゆえでもあった。
 しかし……。
「はい、一列に並んでくださいね。ほらほら、そこのお方、抜け駆けはだめですよ? ちゃんとならんで……」
 邸宅の入り口近くにてメイドが看板片手にやってきた男性を一列に並ぶように声を張り上げていた。
「あ、あの、僕は荷物を届けに来ただけでして。ルドマンさんに伝えてください。パパス・グラン……」
「はいはい、しっかり並んでくださいね……」
 リョカの言葉は聞き入れられず、押し切られるままに並ぶはめとなる。

「自分、なにしてん?」
「僕もわからないよ……」
 律儀に待つこと数十分、シドレーは呆れた様子で彼を見ていた。
「しっかし、求婚者ねぇ……。こんなに男集まってくるなんて、どんだけべっぴんさんがおるんやろうね? せっかくだし、ちょいと見て行こうか?」
「はは……。あれ? でもルドマンさんの家で男性が求婚者になるってことはやっぱり女性だよね?」
「ん? ああ、あのおっさんにダンショクの気がなければな」
「ダンショク? 食べないってこと?」
「いや、知らんでええ」
 冗談のつもりが真面目に返されたことで逆に恥ずかしくなるシドレーは言葉を濁す。
「フローラさんかデボラさん?」
「ん~、デボラはんはないわな……」
 リョカをじっと見つめながらさらに呆れた様子のシドレー。その半眼にリョカは「どうしたんだい、さっきから」とむっとしながら言い返す。
「ああ、そやなぁ……。ま、約束やし……」
 おかしなところで義理堅いシドレーは彼女ことをしっかり秘密にしておくことにする。
「ねえ、シドレー」
「ああ、ほら、もうお前の番やで、ほな行こうか」
「もう、そうやってすぐ誤魔化す……」
 リョカはそんな彼の態度に悪態をつきながら、剣を片手に邸宅へと向かった。

続く

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