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サラボナ その2

「あの、失礼します……」
 応接室のドアを叩くリョカ。中から返事はないが、ドアノブを回すと、すっと開く。
「おじゃまします……」
「うむ、そこへ掛けたまえ……」
 応接室のソファには頭の禿げ上がった恰幅の良い男性が座っていて、丸眼鏡をかけながら資料に目を通していた。
「あの、ルドマンさん、お久しぶりです」
「うむ、久しぶり……」
 やはり気付いていない彼は、資料を一枚めくり上げるだけ。
「父から頼まれていたのですが、この剣を……」
 リョカは布に包んでおいた例の剣を取り出す。
「何?」
 するとそこでようやくルドマンが顔を上げる。その様子はどこか怒り心頭という様子で、リョカを睨みつける。
「とすると君は、君の父親に頼まれて剣を代わりに我が娘の婿となろうというのか?」
「え?」
 おかしな理屈にリョカは困惑気味に眉間に皺を寄せる。
「あ、あの、それとは違う用件でして……。というか、リョカです。あの、パパス・ハイヴァニア……、パパス・グランヴァニアの息子の……」
「何? パパス? リョカ? 君は……リョカ君じゃないか? なんだ、大きくなったなぁ……。それに随分とたくましい……」
 今度は驚きに目を丸くするルドマン。
「ふむ。そうか、君もフローラの婿になろうというのか。あのパパス殿の息子なら、役に不足することもあるまい。歓迎しよう」
 そして今度は上機嫌になる始末。
「あ、あの、ですから僕は……」
 ひとまず順を追って説明するために、リョカは彼が静かになるのを待った……。

**

「そうか、パパス殿が……。惜しい人を失ったな……」
 友の死を悼むルドマンはしばし悲しそうな顔になり、そして別の資料を取り出すと、メモを走らせる。
「うむ。それで、君はその剣を届けにきたというわけか……」
「はい。手紙にはルドマンさんに届けるようにとだけありまして。この剣はなんなんですか?」
「ああ、これはそうだな……。君は天空に竜の神様がいた話は知っているか?」
「ええ。御伽噺ですよね?」
「ん~。どうなのかはわからないな。ただ、この剣、そしてこの前、手に入れた兜なんだが、一説によれば、禍大なる魔と戦った勇者達の装備らしい」
 ルドマンが目で示すほうには、兜というよりは額当てに近いものが飾られていた。
「あの兜とこの剣が? たしかに業物だとは思いますが、扱うことが……」
「君も扱えないか……。うむ。あの兜も常人が扱うには難しいものでな……」
「やっぱり曰くつきなんですか……」
「呪というか、あくまでも勇者に限ると云われていてな」
「はぁ……」
 勇者が扱えるという言葉に、リョカはシドレーが扱えたことを思い出す。そして時の人であるフローラも。
 もしかしたら兜もそうかもしれないと思い、切り出そうと彼を見る。
「これがねえ……」
 すると、いつの間にか兜の前にいたシドレーは、遠慮なく被ろうとしていた。
「お、おい、羽トカゲ君よ。それを被ると危険じゃぞ! 普通の者では首を捻挫しかねない……」
 驚いたルドマンは彼が何であるかに構わず止めようとする。しかし、シドレーは特に危険な気配もなく、それを頭に乗せていた。
「ぶかぶかか。ま、当然やな。俺用なハズないし……ん?」
 不思議なことに彼が被ると、その小さな頭のサイズへと縮み始める。
「お、おお? どういうことじゃ……。まさか魔物だと装備できるのか? まさか……」
「ほほう、なんか知らんがジャストフィットしよったで? どう? 似合う? これ勇者の装備なんやろ? 勇者シドレーの誕生やな」
 遠目に見たときは彼の頭にやや大きく見えたそれが、ぴったりフィットしている様子。とはいえ、あくまでもルドマンの物。慌ててリョカは彼を制す。
「ダメだよシドレー、それはルドマンさんのなんだから……。すみません、シドレーは……」
「あ、いや。まさかなぁ……。うむ、まあ、装備できるとなると、ちょいと複雑な気分だが……まさか、その翼竜が勇者なのか……」
 予想していた勇者とはまったく違うシドレーの姿にがっくり肩を落とすルドマン。伝承にある勇者、御伽噺に出る勇者は、緑の髪の凛々しい青年の場合が多かったからだろう。
「なんや、不満なんか?」
「いや、まぁ、その、平たくいえばそうだ……」
「そりゃ悪うござんした……。んでも、アンタんとこの娘だって平気やったで? つか、娘さんのために用意してるとか?」
「ん? フローラと会ったのかね?」
 再び驚くルドマンは、リョカを見る。
「ええ。ルラフェンでのことなんですけど、彼女もシドレーと同じく剣を握っても重く感じなかったそうです」
「リョカ君、それは本当かね?」
 問い詰める彼の声は厳しく、そして表情も険しくなる。
「はい。彼女が剣を振るうところは僕も見ました」
「そんなことはどうでもいい。君はフローラとルラフェンで一体何をしていたのかね? ふむ、詳しく聞かせてもらう必要があるようだね……。そこへ座りたまえ……」
「え、あ、はい……」
 有無を言わせぬルドマンの表情に、リョカは仕方なしに座る。
「さて、一体どういう経緯でフローラと? 君は娘をどう思っているのかね?」
「それはその……」
 このあとも暫く、リョカは質問攻めにあった。
 ルドマンとて、娘のこととなれば名誉市民よりも父親なのだ。
 風来坊といえるリョカが婚前の娘といつの間にか逢引しているのであれば、その心穏やかでいられなかった……。

続く

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