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「それは、お父様ったら早とちりですわ。リョカさんとは旅先で偶然出会っただけですの。私がお姉さまのお手伝いをしていたときに、偶然街で見かけましてね? ギルドからお荷物を届けるように言われていたみたいでしたので、知らない仲でもありませんし……。あ、昔お姉さまがお世話になったという意味ですわ。道案内をして差し上げたのです。ルラフェン? ええ、あのルラフェンの月というお菓子が有名なところですよね? そこがどうかしましたの? 私が? 嫌ですわお父様。お姉さまのお店はポートセルミにありましてよ? どうしてルラフェンまで? 女の足で魔物犇く道を行くなどと、このフローラに出来まして? うふふ、お父様ったら最近ナーバスになっておられますわよ?」

 リョカの問い詰めに驚いたルドマンは、サラボナハイスクールから帰ってきたフローラを問い詰めていた。
 すると彼女はすらすらと言分けを並べ立て、穏やかな笑いと父を気遣う素振りでその矛先を鈍くさせた。
「ふむ、そうか。なるほど。リョカ君の勘違いと、ワシの考え過ぎというところかな?」
「は、はい……」
 彼女の嘘を知るリョカだが、それも方便と口を噤む。話の内容からも彼女がルラフェンで魔法の修行をしていたことは秘密なのだと理解したから。
「で、改めて問うが、リョカ君よ。君はフローラの婿には……」
「すみません。僕はある人と約束がありまして、剣を届けたらこの街をすぐに離れるようにと……」
 リョカの言葉にシドレーは額を叩く。彼はちらりとフローラを見ると、「すみません、この子世間知らずなんです」と侘びをいれる。
「ふむ? おかしな約束もあったものだな」
「ええ。それに母のこともあります。父は僕に僕の人生を生きろと言いましたが、できる限り父の願いをきいてあげたいんです。僕にはもう孝行もできませんし……」
 しんみりした話に一同は頷く。さすがのルドマンもパパスのことを偲ぶと無理に参加を求むことも出来ない。
「リョカ君もまだ若いのだし、思ったように道を行くのも悪くはないか。ああ、それと、旅のついでで良いのだが、もし、もしこの剣や兜と似た装飾の盾や鎧を見つけることがあったら一報をくれないかね?」
「ええ、わかりました」
「うむ、頼むぞ」
「それでは……。ゴルドスミス家に良い明日を……」
 リョカはたちあがり、胸にこぶしを当ててルドマンに礼をする。
「ハイヴァニア家に良い旅を……」
 ルドマンもそれに応じ、座ったまま一礼する。
「あ、リョカさん、送っていきますわ。いいですわよね? お父様」
 部屋を出ようとするリョカをフローラが呼び止める。
「うむ? ああ」
 ルドマンは娘の親切な態度に満足そうに微笑むと、再び資料に目を落とした……。

**

 屋敷の裏門へ案内されたリョカは、導かれるままに人気のない茶店へと連れて行かれる。
 フローラは慣れた様子で奥の個室へと向かうと、リョカを手招きする。
「あ、はい……。なんだろう……」
 あまり良い予感のないリョカは、シドレーの同伴を求めるが、彼はガロンに跨ると「風が俺を呼んでいる」とのたまい、街へと駆け出した。
「あ、あの……」
「座ってください」
「はぁ……」
 笑顔のフローラだが、彼女の笑顔の裏にある本性が怖い。
 そして、ルラフェンでのひと悶着というかふた悶着。どちらも彼女の赦しを得られずじまいであり、さらには彼女にとって都合の良くないことをルドマンに喋ってしまったのだ。
 もちろん口止めされているわけではないので、それほど責められるいわれもないが、それでも言葉のやりくりで彼女に勝てる要素がなく、リョカは内心どぎまぎしていた。
「リョカさんはなんになさる?」
「えと、水でいいです」
「遠慮なさらずに……」
「それじゃあ紅茶を」
「ヴァニアティ?」
「いえ、サラボナの方のが良いかなぁ……」
「じゃあウバをミルクティにしましょう。あ、ミルクティを二つお願いします。ウバで……」
「はい、畏まりました……」
 ウェイターは注文を受けると、そっと厨房へ消える。
 そして訪れる二人きりの空間。リョカはヴァニアティ以上に苦い雰囲気に、借りてきた猫のようになっていた。
「リョカさんったら、本当に失礼なお方ですね」
「え? ええと、また何かしてしまいました?」
 かつて二度ほどしでかしたリョカだが、またも彼女の機嫌を損ねることをしたとはまだ気付いていない。
「さっき」
「はい?」
「お父様の申し出をお断りしましたよね?」
「ええと……、勇者の装備品なら……」
「そうではなく求婚のことですわ。本人を前に、ああまではっきりお断りするなんて、リョカさんはよっぽどフローラのことがお嫌いなのですね?」
 わざとらしく嘆いてみせるフローラに、ようやく失礼の意味を理解したリョカ。シドレーはそれに気付き、ガロンを伴って逃げたわけだ。
「ああいえ、そういうつもりではなく、その約束がありまして、この街に滞在することはできなくて……」
「うふふ、わかっていますわ。リョカさんは意外と世間知らずなところがおありですし、あまり苛めては可哀想かしら?」
 慌てて繕うリョカを見てくすくす笑うフローラ。確かにバカにされているのだが、気持ちがふっと高まるのを感じてしまう。それは彼女の愛らしい仕草が故なのかもしれない。
「フローラさん、勘弁してください……」
「どうしましょうね?」
「うぅ……」
「そうですわね、ちょっとお願いを聞いていただけたら、勘弁してあげましょうか?」
「はぁ、なんなりと……。あ、でも約束がありますから、あまり日が嵩むものは勘弁して欲しいのですが……」
「ええ、平気ですわ。少なくともサラボナに滞在するわけではありませんから……」
「はぁ……で、それは?」
「リョカさんも聞いての通りですが、私、ルドマン・ゴルドスミス、サラボナ名誉市民の娘として婿を求める必要がありますの」
「ええ……」
「で、そのためには条件がありまして、それは市民を守れる強さを持つことなのです。父、ルドマンは母、ハルマを射止めるために自らの財産を賭け、軍隊をもってして強さを示しました。そして試練を乗り越え、晴れて母を射止めましたわ」
「軍隊……」
 軍隊をもってして求婚を成功させる熱意、さらに規模の大きさにリョカの想像はおいつかない。本来結婚とは両人の合意によるものとしか認識していないせいもあるが、異常さのほうが勝っている。
「それはそれとして、私もまた求婚される身であり、先も見たように「力」を持つものが私……、いえ、名誉市民の称号を得ようとサラボナへ集まっております。私はその方々の何れと結婚することとなりますの……」
「ん~……それは……、ん……」
 そして、本来の結婚の意味を覆しかねない理由に、リョカは驚きと怒りに近い気持ちを抱く。
「ですが、私、心に決めた方がおります。もちろんその方も一求婚者として参加なさいます」
「そうですか……。わかります。その気持ち……」
「そこで、リョカさんにお願いしたいのですが、彼を助けてあげてくれませんか?」
「試練を? でも手伝ってよいのですか?」
「ええ。力といえど単純なそれだけではなく「人脈」というのも含まれます。つまり、力強い味方を得ているということも、彼の力になるのです。お父様もそういう方法で母を射止めておりますし、文句は言えませんわ」
「なるほど。じゃあ僕はフローラさんの本当に好きな人を助けてあげればいいんだね? わかった。任せてよ。これまで君にした失礼なこと、帳消しにしてもらえるかはわからないけど、そんな話を聞いたら見過ごしたくない。で、その試練というのは?」
「はい、二つのリングを探すことです」
「リング?」
 手で輪を作るリョカにフローラは首を振り、左手の薬指を示す。
「結婚指輪ですわ」
「へぇ……」
「まずは水のリングを探しあてること。それを踏まえて炎のリングを探し当てること。それを最初にこなしたものと私は結婚しないといけないのです」
「なるほど……。結婚指輪……。当然、かなりの危険が伴うわけですよね? アンディさんは……」
「アンディは……サラボナスクールでなら敵はいませんわ」
 高らかに語るフローラの瞳の輝きに、その想いが見える。
「けれど、あくまでも学校のような小さな場所でしかありません。魔法なら私に、戦闘ならリョカさんに適うことはないでしょう」
 魔法においてフローラを越える存在などそうそう居ないだろうという突っ込みは飲み込み、彼女の思う不安も察することができる。
「わかりました。できる限り力を尽くします。ところで……」
「はい?」
「赦してもらえますよね?」
「さぁ? どうしましょうね?」
 がっくり肩を落とすリョカにフローラは真意を見せない微笑を浮かべるまま。
 今日の交渉もやはり玉虫色。とはいえリョカは気持ちを固めていた。

続く

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