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サラボナ その5

 サラボナの街の一等地にある大きな店。武器や防具、日用品まで備えた総合商店、ラーズ商会。バーナードカンパニーのライバルとされ、虎視眈々とゴルドスミス家から首位の座を狙っている。
 そんな企業に旅人風情がアポイントメント無しに通されるのは異例のこと。
 応接間にて豪華なソファで縮こまる一人、珍しそうに部屋の中を見て回る一翼、行儀良く丸くなる魔物に、使用人達は奇異の視線を向けていた。
「なんかおちつかない……」
 この街に来てから幾度となく感じた場違いな感覚。リョカは出された紅茶の香りもわからず、ただ飲み干した。それでも喉が渇くのは、極度の緊張ゆえだろう。
 コンコン……。
 しばらくしてドアを叩く音がした。
 開くと同時に老齢の執事がお辞儀をし、それに続いて金髪の男性がやってきた。
 年の頃はリョカと同じくらいで、背丈も同じくらい。肩に届く程度の髪は手入れが良いらしくほつれも見えないサラサラなもの。優しげな瞳と高い鼻の好青年であり、口元に微笑みが浮かんでいる。それはリョカを見下す類のものではなく、元々のものなのだろう。
「やあ、初めまして。君がリョカさんだね? フローラから聞きました」
「あ、はい。リョカ・ハイヴァニアと申します。この度は試練の協力をさせていただきたく……」
「ふふ……」
 リョカが直立不動で早口で捲くし立てるので、金髪の青年は噴出してしまう。
「楽にしていいですよ。僕はアンディ。アンディ・ラーズよろしく」
 アンディはリョカに手を差し伸べ、握手を求める。
 手を握ることと、彼の優男風情な様子からは想像しにくいほどに硬さがあり、握り返す力にもそれなりのものを感じた。
「こちらこそ」
 握手を終えたリョカはアンディに促されて座る。
「フローラから聞いたよ。君が僕の助っ人になってくれるって。はは、彼女も心配性だからね」
「ええ、まあ」
「でも、試練はかなり危険が伴う。君はフローラに借りがあるみたいだけど、僕にあるわけじゃない。彼女には僕から伝えておくから、この件からは手を引いてください」
「え? いえ、でも」
「それにこれは僕の試練でもある。ゴルドスミス家、フローラの夫になるにあたって相応しいかどうかを試すための」
 手をがっちりと握り、真剣な表情になるアンディ。その覚悟の程はリョカにも伝わってくる。
「アンディさん、僕はフローラさんのことを正直よく知りませんが、彼女は貴方と結ばれたがっている。これは僕の個人的な話ですが、好きな人、大切な人と離ればなれになることはとても辛いことです。僕の父もそれで命を失いました。けれど、そうまでしてでも繋ぎ止めたいモノがあるんです」
「リョカさん、貴方の気持ちはわかりました。けれどそのために危険な目に遭わせるわけにはいかない。過去の試練では魔物に襲われて怪我どころか命を落とした人もいます。貴方の力がどの程度かしりませんが、生半では……」
「そうですか。なら、僕なりに力をお見せしましょう」
 リョカは花瓶の花から葉を一枚千切ると、ごにょごにょと何かを呟く。それをおもむろにコップに振り下ろす。するとコップがぐしゃりと砕けた。
「僕は十分に強いですよ。オラクルベリーでは名の知れた用心棒でしたし、ラインハットでは英雄とともに戦いました。ルラフェンでベネットさんに魔法も教えてもらいましたし、戦力として考えていただければ……」
「そうか、名前が似ていたからもしやと思っていたけれど、君が……」
 アンディはどこか合点がいったと頷く。
「まぁま、金髪兄ちゃん、そう言わないでコイツに協力させてやってくれよ」
 話の方向が決裂に向かいそうな雰囲気に、シドレーが口を挟む。
「君は人語が喋れるのか……、驚いた」
「まな。それよかまあ、聞いてやってくれよ。コイツは人様の為に働きたくてしょうがない生き物なんやて。それこそ一日一善を体現するバカ……もといお人よし……じゃなくて聖人様でな、マジでお前のことを助けてやりたいのさ。でないと死んじゃうってさ」
「ちょっとシドレー……」
「あっはは……、そうかい。リョカさんは確かに良い人そうだけど、そこまでとはね……」
「んでな、もしその危険な試練で死ぬかもしれないやったら、どっちにしろ死ぬんやし、せいぜい使ってやって欲しいのよ」
「君ねぇ……」
 無茶な理屈を並べ立てるシドレーにリョカは頭をおさえる。
「そうかい。そこまで言うならしょうがないな……。リョカ君、前言は撤回する。改めて君の力を借りようと思う。君の壊したコップの分だけ働いてもらう。いいかな?」
「ええ、僕でよければ」
 再び差し出される手をリョカは握り返す。するとシドレーもそれに手を差し伸べて、アンディを見る。
「俺もな」
「ええ、貴方にも協力願います」
「ふふん、俺様が味方になれば怖いもんなしやって……!? これ!」
 鷹揚に構えるシドレーだが、目下砕けたコップを見て目を丸くする。
「ん、どうしたの? シドレー」
「おま、これお前がしたの?」
「えと……、その行きがかり上……」
「アホ! ドアホ! バカ……もう本当にこの子は!」
 シドレーはリョカの頭を翼で叩くと、ため息をつく。
「ほんまえろうすんません、この子、悪気はないんです」
「あはは、大丈夫。代わりはいくらもあるから。それにティーセット、変えようと思っていたんだ。丁度いい機会だよ」
 慌てるシドレーと笑顔のアンディ。わけもわからずやり取りを見つめるのは、リョカとガロンのみ。共通項は物の価値を知る者と知らぬ者……。

続く

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