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サラボナ 閑話

 サラボナの街、おしゃれなオープンカフェでのんびり椅子に座る一組のカップルがいた。
 青い短髪の青年はテーブルに背を向け足を組む。周囲の様子をちらりと眺めてはカップを口に運び、エスプレッソコーヒーの苦味に口を渋くさせる。
 物見夕山の観光客というのは、その身なりを見れば大体わかる。ただ、青年の物腰は優雅で気品があり、一見粗野な振る舞いも気にならない。
 その向かいに座る、というか、彼の背中を見る格好の女性も青い髪であり、ショートヘアを内向きに整えている。
 こちらは行儀良く足を揃えて斜めにしており、目の前の冒険野郎気取りの青年に注文をつけていた。
「ね、ヘンリー、いつまでここにいるつもり?」
「おいおいエマ、俺はインディだ。ヘンリーなど知らんな……」
 ようやく向き直った彼は笑顔を浮かべながら言う。
「はいはい、で? どうするの?」
「うむ。まあそうだな。俺も観光がしたいわけではない。とはいえ、ケインほど経済に明るいわけでもないからな」
 世界を見て回ると大見得を切ったは良いものの、具体的な計画は未だなし。さらに身分を隠しての旅ゆえにコネクションもない。
「そうだな、サラボナといえば名誉市民と呼ばれるものがいる。ひとまずそれでも見に行くか?」
「それじゃただの観光じゃない。でも、貴方みたいな冒険野郎がアポ無しで会えるの?」
「そこら辺は心配ない。会う必要自体はないからな」
 ヘンリーはにやりと笑うとエマを指差す。今、彼にはエマという十分な協力者がいるのだ。
「まったく……、調子がいいんだから……。というか、そんなこそ泥みたいな真似をするために私を使う気?」
 エマは誇り高きルビーエルフ。ルビーエルフとは戦闘に長けたエルフであり、サファイア、エメラルドエルフ達を守る存在だ。
 彼女は禁止魔法である透明化呪文、レムオルが使えるわけだが、それをこそ泥的な使い方をするとなれば首を縦に振るはずもない。当然それはヘンリーも理解している。
「名誉市民についてエマは知っているか? なんでも巨大な魔物からサラボナの街を守る立場らしい。ルビーエルフと似ているな。まあそれはいい。前になんだが、現在の名誉市民であるルドマンがある道具を探していると聞いた。それは伝説縁の武器らしい。もしかしたら戦争の準備をしているのかもしれないからな……」
「たかが武器でしょ? 大量に用意しているならともかく、業物一つ二つあれば変わるようなことなんてないわ」
 エマの指摘はもっともなこと。いくら強い武器があろうと、戦争は状況と数で大勢が決まる。
「その通りだ。だが、それが勇者の装備となれば、一つ違うところが出てくる」
「勇者? まさか空のお城の竜のカミサマの話?」
「その通りだ」
 冗談で言ったつもりが真顔で返されてしまい、エマは言葉に詰まる。
「ルビス教会の経典の一節になるぐらいだからな。うろんじる者は多いが、知るものも多い。そこが問題なのだ。巨悪とされた存在と渡り合い、ねじ伏せ、世界を救った勇者。その再来となれば、それに刃を向けることが出来るか?」
「ん……それは……まぁ……」
「それにリョカの剣、あれは業物で括れる代物ではない。真偽はともかく、特殊な効果を秘めた武具を身に着けた勇者。それを迎え入れる準備をしているのがルドマン。もしそれが実現すれば、サラボナは世界の経済流通を握る街、すぐに噂も広まるだろうな。そうなると、世界の中心は一気にサラボナに傾く。今よりこの街が強くなれば、それだけ東国も弱くなる。ああ、お前にとってはそれでも構わないか。目的が違うからな……」
 持論を語る上でエマの立場を思い出す。彼女の目的は以前に語っていた「世界の王」ではない。
「いえ、貴方が強いほうがいいのは今も同じよ。でも勇者ねぇ……。そんなのがいたら、どうして里は……」
 マグカップを見つめ、輪切りにされたレモンを見つめることしばし、彼女が口を酸っぱくさせるのは、何もレモンティーのせいではない。
「勇者は世界を救う……か。俺にはどうにも信じがたいがな……」
 ヘンリーは立ち上がると、丘の上を見る。レミリアで光の屈折をゆがめると、何人か丘の上の別荘を目指すのが見えた。
「何かあるのか?」
「そうね。私達以外にも旅人が多いし、旅行というよりいかつい人ばかりかしら?」
 そんなことを言っている間も街を行く重装備の旅人達。
「ふむ……、いくとするか……」
 ヘンリーは勘定をテーブルに置くと、街を行くいかつい人々についていった……。

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