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サラボナ 旅立ちの前に

 夜、リョカは街の外れにある宿で休んでいた。アンディは泊まるようにと申し出てくれたが、豪華な部屋では居心地が悪いと辞退した。
 とはいえ、どこもかなりの高級ホテルであり、ようやく見つけたところでも他の街の五倍近く取られるはめとなった。
「試練か……」
 リョカはベッドに横になり、窓の外を見つめて呟く。
 フローラから聞かされた試練の内容はおおまかにこうだ。
 水のリング、炎のリングを持ってくること。
 水のリングは滝の洞窟にあり、炎のリングは死の火山にある。
 広い世界の中を探すのなら途方もないが、存在する場所をあらかじめ教えられてのこと。リョカはそれほど危険が伴うとは思えなかった。
「ま、考え過ぎんでええと思うで? 火山みたいな危ないとこでも俺ならお前らよかずっと平気やしな」
「そっか、ドラゴンだもんね」
「まな。それに、あのおっさんも軍隊使ってこなしたんだろ? 人海戦術でできるようやし、心配ないで」
「うん。たよりにしてるよ」
「ああ、それとお前、フローラはんと結婚したいとか考えてないよな?」
「え? まさか。僕には無理だよ。尻に敷かれるって目に見えてるし」
「なはは。そうじゃな……。つか、あの兄ちゃんもよくあんな裏表激しい性格悪な女を嫁にしたいと思うよな?」
「シドレー……そこまで言っちゃ悪いよ」
 苦笑するリョカだが、完全否定はしない。フローラの裏表は確かに驚く物であり、性格もそれほど良いとは思えない。
「ま、安心したわ。お前が変な気を起こすと、いろいろ面倒やしな」
「どうして?」
「ん? 俺のビジネスに支障をきたすのさ。お前がフローラはんと結婚すると」
「ふうん」
 それほど深い人脈を持たないはずの彼の思惑のわからないリョカは生返事を返して寝返りを打つ。すると、そこには人影が見えた。
「というか、困ってるんですけど!」
「うわ!」
 腰に手をあて仁王立ち。青い胸当ての軽装姿に魔力を帯びたプリーツスカート姿の女の子。青く長い髪はツインテールで風に揺れる。
「なんだ、アンさんか……」
「なんだじゃないでしょ! このスケベ、うそつき! なんでまだいるのよ」
「おちついて……。夜だし、他のお客さんに迷惑だよ」
「貴方は私にとって迷惑なの!」
「うぅ……」
 リョカにとって頭の痛い相手は何もフローラだけに留まらない。アンとのことは約束もあり、いまはまさに反故にしているのだ。
「私はあなたにサラボナに長くいるなと言ったわよね? なのにどうしているの? 剣は渡したんでしょ? なら!」
「それはそうなんだけど、ちょっと込み入った事情があって……」
「何? まさかフローラに結婚でも申し込むつもり? ったく、本当に節操がないのね」
「いやいや、その逆なんだ……。僕はフローラさんに頼まれて、彼女の想う人を助けるためで……」
「フローラの想う人? えとつまり、アンディのこと?」
「そうだけど、アンさん、アンディさんのこと知ってるの?」
「そりゃまあ……ね」
 彼女の口から彼の名前が出たことにリョカは驚きつつ、少々納得してしまう。彼女はフローラのことを知っていた。もしかしたらアンディの関係者なのかもしれないと。
「どうも危険が伴うみたいだし、僕もそれなりに強いつもりだから、罪滅ぼしにせめて二人の力になってあげたいんだ。だから……」
「ったく、誰かれ構わずキスするからそうなるのよ。このヘンタイ」
「うぅ……」
 フンと鼻を鳴らすアンにリョカは呻くしかない。全ては身から出た錆であり、反論の余地もない。不思議といえば彼女がキスのことを知っていることなのだが、今のリョカにそれを考える余裕がない。
「……でも、貴方は強いし、そうね……、ならこうしましょう。貴方はアンディを命に代えても助けなさい。それで赦してあげるわ」
「最初からそのつもりだ」
「それと、私もリングを探すのについていくわ」
「え? アンさんもリングを探しに行く気?」
「いいわね。はい決まり。それじゃあまた来るから、貴方からアンディに伝えておきなさい。必ずだからね!」
「ちょ……待って!」
 反論の暇を与えず捲くし立てるアンは、言いたいことを言うとさっさと部屋を出る。
「なんやアイツ……」
 そのやり取りを見ていたシドレーは、うるさいのがいなくなったのを見てまた丸くなる。
「なんだか忙しい人だね、アンさんも……」
 リョカも迷惑な闖入者がいなくなったのを見て、布団に潜りなおした。

**

 サラボナの街、入り口のアーチにてリョカとアンディは出発の時を待っていた。
 昨日一緒に来るといっていたアンは姿を見せない。一応はアンディに話をしておいたが、危険が伴うこともあり、彼女を待たずに出発することで合意した。
 まず探索するのは水のリング。既に他の求婚者達が捜索に向かっているらしく、リョカ達は遅めのスタートだった。
「アンディ、本当に気をつけてください」
「ああ。僕の無事を祈っていてくれ」
 見送りに来たフローラは、心底アンディが心配らしく、過剰なほどの兵站を用意していた。
 アンディはそれを優しく断り、動くに支障の無い程度の荷物と武器、薬の類、干物に留めていた。旅慣れていない彼だが、多少なり心構えを持っていることにリョカも素直に感心した。
「それじゃあきりがないし、この辺で……。さ、リョカさん。行きましょう」
「ええ。それでは……」
「はい……。あの、アンディ、お気をつけて。リョカさん、彼を頼みます」
 リョカ達はフローラに軽くお辞儀をすると、門を潜る。とはいえ、まだアンディとフローラは別れを惜しんでいるらしく、後ろ髪を引かれるように何度か後ろを振り向いていた……。

続く

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