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水の試練 その2

 鍵を求める求婚者の中には詐欺に遭い、金を持ち逃げされたり、偽の鍵を渡される人も多く、さらにはルドマンが用意したサクラも混じっており、誰が真の鍵を持っているかを探ることすら困難であった。
「これは困った……ね」
 宿にて酔いを醒ますリョカ。アンディは精力的に情報を探しており、今も村を回っている。彼はリョカほど安易に騙されることはなく、けれど鍵入手にまでは辿りつけていない状況だった。
「俺らの苦手な分野やしな。つか、アンディはんも口は回るみたいやけど、誰が村人だかわからん限り、難しいわな……。つか、なんかそれどころじゃないみたいだし……」
 シドレーが窓の外を見て言うのには訳がある。
 最近、この静かな山村にて殺人事件が起こったそうだ。村長であるホセロ・マートンが惨殺された。
 遺体は肩から腰にかけて鋭い爪のようなもので引き裂かれたそうだ。
 犯人は魔物だろうと噂されており、切り口からして大型の魔物と予想されていた。
 しかし、ここ近辺にはキラーパンサー程度しかおらず、もしそうだとしてもサイズが違う。新たな魔物がやってきたのかと、村人たちは怯えていた。当然ながら、求婚者や鍵のことどころではなかった。
「なんだかな……。うちのガロンさん、大丈夫かいな。村人に追いかけられたりしてないかな?」
 怯える村人に配慮してガロンは村の外で待たせている。
「そうだね、ガロンもおなかすいてるかもしれないし、ちょっと見てくるよ」
「ああ。俺はここで休んでるわ……」
 彼も見てくれは魔物であり脅威の対象なのだが、器用にマグカップを使っていることからか、その場に馴染んでいた。彼はそれをにじみ出る人徳と片付けていた。

**

 村の入り口には洞穴のような庵があった。看板には「ヅルトンのおうち」とあり、既視感に囚われることしばし。リョカは眉間を抓んだあと、ガロンを探しに村を出る。

 すると、林の近くでしゃがみこむ姿が見えた。誰かが頭を撫でているらしく、赤い鬣が靡いていた。
 ――うそでしょ? 街中ならともかく、外でガロン見て怯えないなんて……。
 リョカは驚きつつ、小走りでそれに近づく。
 ガロンを撫でているのは金髪を三つ編みにさせた女性で、フードつきのジャケットが見えた。彼女は何かガロンに話しかけているらしく、かなり手馴れた様子だった。
 ――魔物使い? テリーさんみたいな?
 リョカの知る魔物使いといえば彼のみだが、他にもそういう素質の持った人がいることに、どこか心がざわめく感じがした。
「あ、あのぉ! その子、平気でしたか?」
 金髪の女性にそっと声をかけると、彼女は立ち上がり振り返る。ガロンはそのまま顔を上下しており、何か食べている様子。
「貴方がこの子の飼い主? だめよ。この子、すっごくおなかすかせてたんだから!」
 厳しい口調で言う彼女は、振り返ると同時にリョカに詰め寄り、怒った様子で言う。
「あ、すみません。ちょっと村に用がありまして、怖がられるかなと思って……」
「それはわかるけど、でもごはんはちゃんと用意しておかないと……」
「ええ、なんで今持ってきたんですけど、ありがとうございます。代わりにガロンの餌を……」
 リョカは彼女の顔を見て呼吸が止まる。
「ガロン?」
 それは彼女も同じらしく、いつの間にか眉間の皺も消え、ちょっぴり気の強そうな瞳は丸く開かれ、リョカを見つめ返す。
「あなた、ひょっとして……リョカ?」
 リョカより頭ひとつ低い彼女。肩にかかる三つ編みはかつての二つ編みを無造作にリボンで括ったものではない。
 スタイルも女性らしくなっていた。たおやかな鎖骨と豊満なバストの作る谷間。括れたウエストに丸みのあるお尻。十三歳で止まった記憶とリンクするには、彼女の驚く瞳以外に手がかりもない。
「もしかして、ビアンカ……ちゃん?」
「ちゃんはやめてよ……。もうそんな年じゃないわ……」
 そして嬉しさに歪む瞳、頬、口。涙が零れたとき、彼女はリョカの胸に飛び込んできた……。

**

 村の外れにある家にリョカは通された。アルパカからこの村に移り住んだ彼女の住居らしい。
 女一人で住むには広く、そして寂しさの漂う家。彼女を出迎える人は居らず、彼女も「ただいま」と言わなかった。
 そのことからリョカはある程度のことを察した。彼女もまた自分と同じく孤独なのだろうと。
 お茶を淹れるといって水場に向かった彼女の戻りが遅いことに気になったリョカは、彼女の後を追う。
 茶葉を探す彼女の肩を抱いたとき、震えているのがわかった。
「ビアンカ……」
「うふふ、変だよね。リョカに会えて嬉しいのにさ。なんで私、さっきから泣いてるんだろう」
「んーん、いいよ。そのままで……」
 先ほどの続き。ビアンカは気丈に鼻をすすって凌ごうとするも、振り返るとやはりリョカの胸に沈む。
「辛かったよね。一人で」
「……ん、すん……すん……うん」
「寂しかった?」
「……」
 無言で首を振り、そして頷く。
「お母さんとお父さん、居たから……」
「うん」
 窓の外に見える十字の墓標。ルビス信徒は盟友とされる地母ガイアに死者を抱かせるとされ、土葬が主流である。二つ並べられた墓標は、ガイアに抱かれた彼女の両親だろう。
「それに……」
「ん?」
「リョカも居るから……」
「うん」
 彼女を抱く腕に力が篭る。
 かつて想った人。初恋の相手。
 地獄を潜り、戦火を超え、火遊びに現を抜かし、今こうしてたどり着いた人。
 リョカは舌を噛みつつ、彼女の髪の匂いを胸いっぱい吸い込んでいた……。

続く

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