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水の試練 その6

 最下層には人が居る。つまり、人が通れる場所で最下層に行けるということ。
 けれど、それは最初に通った者が罠を仕掛けているということを予想させる。
 これまでに仕掛けられた罠は致命傷に至るものこそないが、魔物の闊歩するこの洞窟で手傷を負うのはあまり好ましくない。特にガスダンゴのような有毒な魔物が居る以上、少しの傷でもリタイアの可能性が出てくる。

「浄化の風よ、かのものに付きまといし悪しき誘惑を振りほどけ、キアリー……」
 岩場に隠されていたナイフで肘に切り傷を作ったアンディに、リョカは念の為防毒魔法を施していた。
 ベネットのところで治癒系の魔法の基礎を学んだおかげか、毒素は空中へと霧散する。
「リョカさん、ルビス教会でお勤めをするつもりはありませんか?」
 その手際にアンディは感心した様子で呟く。
「これぐらい……僕はできないといけないんです」
 キアリーに関わる記憶はあまり良いものではない。無力と無知の作る不幸は、たまに夢に見る。
「リョカさん?」
 真面目というよりも険しい顔のリョカに、アンディは不思議そうに声をかける。
 眉間に皺を寄せ、唇を噛む。施術を成功させ、人を救ったという時にする顔には見えない。魔力での疲労や偏頭痛の場合もあるが、目線を下げたことで、それが何か心情起因するものとも読み取れる。
「あ、ええ。平気ですか? なら先を急ぎましょう」
 リョカはすぐに素面に戻ると、先頭を切って走り出す。
「リョカさん、一体何かあったのでしょうか?」
「ん~、俺も別れた後のことは聞いとらんし、なんじゃらほい?」
「なんかすごく、とても悲しいことがあったのかもしれませんね……」
 ちょっとした動作から相手の気持ちを邪推する。商売柄身に着けたクセは、シドレーも知らない一面をおぼろげに垣間見た。
「おーい、あんまりはしゃぐと転ぶで~」
 そんな彼を明るくサポートする不思議な友人に少し羨ましいと思えたのは、この先で待ち受けているであろう彼の友人が故……。
「まったく、えげつないことをするよ。君はいつも……」
 岩場の鎌は東国で見かける直線的な物。そんなものがここにあるのは当然罠のため。刃先に毒を塗っていたのは直ぐにわかった。切り口が痒みだけでなく熱を持ったから。
 何故東国のものかといえば、東国の人間が仕掛けたと思わせたい人が先にいるから。
 狡猾というには姑息な行為に、アンディは珍しく舌を打つ。
「だから僕に勝てないんだ……、君は」
 ナイフを地面に刺すと、リョカの後を追った。

**

 滝の音が大きくなるのは、最下層が近づいた証拠らしい。
 滝の穿つ穴をらせん状に降る一行は、ついに最下層を目視できる場所まで来ていた。
「うへぇ、自然の力はすげえな……」
 やや広い場所に出てようやく翼を伸ばせるシドレーは、滝の周りを舞い始める。
「そうだ、俺がこのまま下に運ぼうか? そしたら罠に引っかかることもないで?」
「ああ、その手がありましたね……」
 翼竜ならではの提案にアンディは頷くが、隣のリョカは渋い顔だった。
「僕は歩いて下に行きますよ」
「一緒に行きましょうよ。いくらリョカさんが強くても、一人で行くのは危険ですから」
「いえ、その……」
 アンディの申し出にリョカはたじろいでしまう。その理由はかつてお化けの城で感じたおかしな幽霊の浮遊感が原因。
「なはは、リョカは高いところが苦手やからな。ま、心配すんな。すぐそこやし、おら、乗れ」
 シドレーはアンディを乗せると、そのまま滝の周りを滑空しだす。
「次はリョカのばんやで~」
「僕は遠慮するよ~!」
 どうにも好きになれない空を舞う行為に、リョカは急いでらせん状の道を走る。
 色の違う地面を飛び越え、見えにくい糸を昆で引き契り、壁に隠れるニビ色のナイフを折りながら、走る。
「ん?」
 だんだんと近づく最下層、洞窟になっている部分に人影が見えた。二つ編みの赤毛の女の子。ローブ姿を翻し、杖を片手に何かを唱えている様子。彼女の手にはだんだんと炎の精霊が集まってくる。
「こんな火の気のない場所で炎の精霊を集めるなんて……、いや、道具か」
 シドレーの炎で洞窟内の精霊達が活気付いたのもあるが、そう簡単なことではない。とはいえ、方法がないわけでもない。例えば魔道具の類を事前に準備するなどだ。ここまで来る途中、割れたルビーがいくらもあったが、それも炎の精霊を呼ぶのに十分な効果がある。
「魔物? でも、あの子は誰かに襲われてる雰囲気もなし……?」
 彼女の構える炎が形を成したとき、その視線の先が見えた。
「まさか! シドレー! 危ない!」
 リョカの声に上を見る女。彼女はすぐに向き直ると、炎の塊をシドレーに向かって放つ。
「うおっと!」
 滝の周りを回りながら降りてきたシドレーは、突然の炎に急上昇する。
「君! その竜は敵じゃない。それに人が乗ってるんだ! 攻撃しないで!」
 リョカは叫んだ後で気付く。後を行く者を阻むために罠が仕掛けられているというのなら、それを仕掛けた者がいる。そして、それが彼女ではないと言い切ることはできないということに。
「くっ!」
 リョカは坂を駆け上がり、彼女の居る場所の真上へと行く。そして大地の精霊を自分と昆にはべらすと、苦渋の決断をする。
「でーい!」
 リョカはその身を中空へと投げた。

続く

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