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水の試練 その9

「ふぅ……ほんましんどいわぁ……」
 リョカを引き上げた後、一行はヅルトンの小屋まで戻っていた。
「まったく、本当にお人よしね。キラーシェルの大群の中に生身で突っ込むなんて……」
 青い髪の女性は呆れた様子でため息をつく。
 ヅルトンは温めたスープをリョカとリベルに渡していた。
「ありがとうございます」
 リョカはそれを飲みながら、だんだんと身体に力が戻ってくる感覚を確かめる。もともと魔法による一時的な体力低下に過ぎず、精霊さえ振り払えばその効果も無くなる。先ほどの無力感はどこへいったのか、自分自身嘘のようであった。
「インディさん、どうしてここへ?」
「どうしてって、俺は冒険野郎だからな。水のリングをコイツにプレゼントしてやるために一肌脱いだわけさ」
 インディはそう言うと青い髪の女性を抱き寄せると、ポケットから真珠の埋め込まれた指輪を取り出し、彼女の左手の薬指にはめる。
「ちょっとインディ?」
 女性は真っ赤になって俯き、恥ずかしそうにそれを取ろうと引っ張る。
「人助けもいいが、お前には大事な目的があるのだろう? ならばその大儀の前の小事に踊らされるな」
「はい、気をつけます」
 リョカは彼に助けられたことを恥じ入りながら、深くお辞儀をする。
「うむ。それではまた新たな冒険の風が俺を誘う。名残惜しいがさらばだ!」
 インディはそう言うとマントを翻し、高笑いをしながら去っていった。その後ろを続くのは青い髪の女性であり、しげしげと薬指を見つめていた。
「あの方は?」
「冒険家のインディさんです。サラボナに来る前に助けていただいていて……」
「ん……。まぁ春先の温かい気持ちが抜けない奴やな……」
 皮肉を言うシドレーだが、友人の窮地を救ってくれたことに一応の感謝の気持ちはあるらしく、彼ら去ったほうに手をすり合わせていた。
「なるほど。求婚者ではないのですか……。またライバルが登場すると思うと困りますから……。それよりリベル、君が仕掛けた悪質な罠。毒を塗ったものはしっかりと外しておいてください」
「なんのことかな?」
 その問い詰めにリベルは視線も合わさずにしらばっくれる。
「貴方のことだから自分のやった痕跡は残さないでしょうけど、度を過ぎた行為はルドマン氏に報告せねばなりません」
「ふん。過去の名誉市民の試練ではもっとえげつない罠もあったという。あの程度突破できぬものにその任務は務まらないさ」
「死にかけとったくせに……」
 ごちるシドレーは不平不満だらけらしく、坊主頭の男と一緒に彼を睨む。
「ふん。俺は頼んだ覚えはないからな……」
 その視線に耐えられなくなったというよりは、立って歩く程度の体力が回復したことで彼はふらふらと来た道を戻る。控えていたイレーヌに肩を借り、そのまま向こうに消えた。
「ったく、女連れで冒険とか……うらやましいやっちゃな……」
「まったくです」
 色々な不満から意気投合した二人はリベルのしかめっ面から態度、性格について愚痴を言い合っていた。
「でも指輪……材料が……」
 あの惨状とぼろぼろの天使のローブでは真珠の採取は難しいだろう。いかに天才ホビット兄弟三男ヅルトンも材料なしには何も作れない。
「その点は抜かりなく……」
 アンディはポケットを弄ると、一枚の貝を取り出す。
「今眠らせてあります。採取、お願いできますか?」
「あ? ああ、おやすい御用だ。あの仏頂面ぶっとばしてくれたお礼だ。やってやるよ」
 坊主頭は差し出されたキラーシェルを受け取ると、腰に挿していたダガーナイフで手早くこじ開ける。そして親指より小さい程度のいびつな形の真珠を取り出すと、それをアンディに渡す。
「ありがとうございます……」
「おう。こっちこそな。しっかし、このローブ、修理しないといけねーわなぁ……。ヅルトンさん、お願いできますかい?」
「ん? ああ、オレはそっちが本職じゃぞい? お前さんが仕事できないとおれっちも仕事できないし、急ぎで仕上げる。まぁ、先にこっちの指輪が先か? 待つ間、掃除してて構わんからな」
 ヅルトンはアンディから真珠を受け取ると工具片手に外に簡単な作業台を造り、作業を始めだす。
 リョカ達は顔を見合わせると、軽く笑い合い、掃除を始めだした。

「ん~、なんか不思議な取引じゃな……」
 シドレーは炎でキラーシェルを炙りながら、作業に従事する面々を眺めていた……。

++

 物陰に隠れて一行を見るヘンリーは、掃除を始めていたリョカ達を見て頭を抱えていた。
「……まったく、人がいいというべきかなんというべきか……」
 その後ろではエマが指輪を外そうと必死で格闘している。
「……なんで取れないのよこれ……」
「ああ、指輪ならお湯に使って蜂蜜をたらせば取れると聞いたぞ」
「そうなの? お湯はまだしも蜂蜜なんてないわよ……もう、本当にしょうがない人ね」
 うんざりといった様子で呟く彼女に、ヘンリーは不思議そうに見る。
「そんなに嫌か? 悪いデザインではないと思うぞ。テルパドールの王族もご用達らしいからな」
「違うわよ。なんで左手に嵌めるのよ。しかも薬指……」
「お前の利き手は右だろ? 指輪を嵌めていては何かと具合が悪い。それに、サイズだと薬指がぴったりだったんだ」
 しれっといいのけるヘンリーに、エマは真っ赤になって反論する。
「こういうのは大切な人にするもんでしょ? 人間はそうするってパパが言ってたわ」
「ほう、人間の世俗に詳しいんだな」
「そりゃ人間だったし」
「なんと……ルビーエルフに認められるほどの戦士か……」
「違うわ。ただの吟遊詩人……ってそんなの今はどうでもいいのよ……たく……あーもうこれでいい」
 エマはそう言うと手のひらを返し、精霊を集めだす。
「おいエマ?」
「ほらほら、こんな潮臭いところさっさとでましょう。髪がべとつくわ」
 時の精霊が彼らに集まりだすと彼女の「リレミト」という言葉を合図に光となって彼らを運んで行った……。

続く

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