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炎の試練 その3

 次の日の昼、ルビス正教会の神官、ミゲル・ノートンが山奥の村へとやってきた。
 リョカは青い胴衣に白十字の描かれた帽子を被る彼を見つけると駆け寄り、その荷物を取る。
「ああ、これはありがとう」
 白髪交じりのミゲルはリョカに穏やかな笑顔を返す。
「いえ。それよりも大事な話がありますので、急いでいただけますか?」
 リョカも愛想笑いを返すと、村の教会へと先導した。

 教会の掃除はビアンカがしており、二人が来る頃にはお茶も準備されていた。
 赴任したばかりのミゲルは聖堂にあるルビス像に祈りを捧げることしばし、振り返るとリョカに向き直り、お辞儀をする。
「リョカ君と申しましたね。大事な話というのは一体?」
「はい、最近この村に蔓延した奇病についてです。なんでも光の教団のみが治療法を知っているという……」
「ああ、はい。そのことなら私も他の村で何度か聞きました。残念ながら今のルビス教会では対処の方法が……」
「あるんです」
「ある?」
 自信満々かつ、ちょっと怒った様子のリョカにミゲルは気圧される。そのせいで老眼鏡がずれてしまい、慌てて直す。
「簡潔に申しますと、あれは病気ではありません。魔法です」
「魔法?」
「はい。ルビス正教会よりもダーマ神殿のほうが詳しいと思いますが、あれは死の魔法、ザキによるものです」
「ザキ? 何故、死の魔法が……?」
 ダーマ神殿はルビス正教会とは別に存在する教義であり、運命神ダーマを信仰の対象としている。
 特殊な職業に就くための資格を与えたり、斡旋を行い、時に相談を請負う。教会というよりは職業斡旋所に近く、村によっては学校の代わりもする。
 また信者という概念が薄く、魔法や医療による治療を行うこともあって、人によってはルビス正教会とごっちゃにしている。
 おおまかな違いといえば、ダーマ神官は運命の精霊を操ることが許されており、死の魔法は高位の神官にのみ伝承され、重病、重症患者の安楽死などに使われる。
 ルビス教会の神父であるミゲルもザキの意味は知っており、その不穏な言葉に眉を顰めた。
「ええ。昨日患者の一人を診ましたが、その際、運命の精霊がいました。それを払うことで回復しました。この辺りは海岸沿いにキラーシェルがいますが、村に持ち込まれた話は聞きません。おそらくは何者かが意図的に魔法を放出しているはずです……」
「それはまさか……」
「断定はしません。僕はミゲルさんに払い方だけを教えますので、それでこの村を守ってください」
「うむ……」
 リョカが断定をしないと前置きすることでミゲルは自分の想像を肯定させられたと感じる。彼もまた、光の教団を胡乱じるところがあるせいだ。
 死の魔法の出所と最近の光の教団の信者獲得方法は、あからさまな右肩上がり。ルビス正教会の信頼失墜もそれに利する事であり、納得しやすくあった。
「してその方法は?」
「はい、古代魔法であるマホステです」
「マホステ……。ええと、確か天候の精霊を使うというアレじゃな?」
 白髪は伊達になく、ミゲルは額をとんとんと叩いて頷く。リョカは話の早そうなミゲルにようやくほっとした様子になる。
「はい。天候の精霊はルビス正教会でコントロールしているとお聞きしています。印、詠唱に付いては……」
 リョカはミゲルにザキを払うべくマホステの印と詠唱方法を教えることとなった……。

++

「ビアンカ……。お願いがある」
 夕方頃、教会の手伝いを終えたリョカが戻ってきた。夕食の準備を終えていたビアンカが出迎えると、開口一番そう告げてきた。
「何?」
「やっぱり僕はこの村で暮らせない」
「うん……」
 大方の予想はついていた。
 あの奇病の原因を知り、解決方法を知ったのなら、多くの人を助けることができる。
 優しい彼のことだから、きっとそうするだろうと知っている。
「ビアンカ?」
 決意を固めていただろう彼は、彼女の反応に逆に面食らう。
「例の魔法をルビス教会に教えて回る。病気に困っている人を助けたいから……。そうでしょ?」
「う、うん……」
「わかってる。リョカはそれが出来るし、それをすることでたくさんの人が助かるもん。たとえ私がこの村で一人寂しく暮らしていても……ね?」
「それは……」
 優しい彼ならどう出るだろう? ちょっとした悪戯のつもりだが、彼は迷っている。
 ――ダメね……。本当に騙されやすい人……。
「冗談よ。ね、それよりちょっと付き合って……」
「え? ああ、うん」
 ビアンカは返す言葉に窮す彼の手を引き、外へと出た……。

続く

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