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炎の試練 その5

 次の朝、リョカが目覚めるとごそごそと物音がした。
「……ん、あ? ビアンカ?」
 ベッドに居ないビアンカを探し、居間へ行くと、彼女が荷造りをしていた。
「ビアンカ?」
「あ、リョカ……。よいしょっと……」
 彼女はフード付のコートと大き目の道具袋、薬草や毒消しをテーブルに並べていた。
 日持ちのよい固く焼かれたパンにベーコンをスライスしてバターと一緒にはさんでいた。朝食の準備かと思っていたが、彼女はそれを竹の皮に包む。
「どこかに行くの?」
「うん」
 ビアンカはその問いかけに笑顔で頷き、続ける。
「リョカの旅についていくの」
「え!?」
 予期せぬ言葉にリョカは面食らう。
「だ、だめだよ。旅は危険が伴うんだ。僕だってこの前……」
 死に掛けたり、異形の集団に襲われたり、日銭を稼ぐつもりで地獄の殺し屋と対峙したり……。
 数えれば両手で足りない危険な思い出に、リョカは被りを振る。
「じゃあ聞くけど、この村に私が一人でいて本当に安全?」
「え……」
「女一人でいて、本当に安全なの?」
「それは……」
 オラクルベリーでマリアを一人残していた日々。彼女が彼を待たずに修道女となったのは、その不安もあったのかもしれない。苦い記憶を思い出せば、彼女の言い分もよくわかる。特に彼女は両親の墓を暴かれるなどの悪質な行為に曝された。はいそうですと頷くことは、これまでの経験からできそうにない。
「ビアンカ。旅はとても危険だ。昔、レヌール城へ行ったよね。あれだって一歩間違えれば、僕らお化けの仲間入りだった。今、僕が続けている旅は……、何でか知らないけど危険のほうがやってくる。それでも平気なのかい?」
 否定はせずに覚悟を求めるリョカ。
 彼の知る限りでも、この世はある日突然平穏を崩されることがある。この閑静な田舎の村でさえ教団による魔の手が忍び寄り、その生活を脅かされたのだ。それならばむしろ、自分が能動的に彼女を守れたほうがよいのではないか? そんな気持ちが、ビアンカに決断を求めた。
「ええ。ここで一人居る日々に比べれば……」
「わかった。君は僕が守る。絶対に……」
 リョカは頷くと、彼女の手を取る。
「絶対に、約束する……」
 彼女と共に歩み、父の遺言を全うする。光の教団の野望を挫くためにルビス正教会を巡る。それらは彼の願いを包括的に行えるように思えた。
 いかなる困難であろうと、リョカの隣には彼を支えてくれるであろう彼女や友が居るのだから……。

**

 ビアンカの暮らした家はルビス正教会の診療所とすることとなった。その対価は両親の帰依を認めさせること。

 ミゲルは亡骸の無い墓標を前に二人の帰依を認めてくれた。
 リョカは彼にマホステの印と詠唱を教え、天候の精霊の好む向日葵を植えるようにと依頼した。
 彼らが村を出る際、リョカに助けられた人々が名残惜しげに手を振っていた……。


 山奥の村を出たリョカは、シドレーと合流するためにサラボナへと戻ることにした。ついでにサラボナのルビス正教会の神父に例の奇病について話すつもりで。
 ビアンカは自分からついてくることもあり、リョカの足手まといになるまいと気丈に振る舞い、二人は四日目の昼にサラボナへと戻って来られた。



「さてと、僕はまず教会に行ってくるよ」
 村を出る際、ミゲルに渡された紹介状を手に、街の東にある正教会を目指す。
「うん。私はガロンちゃんを見てるから……」
 いくら大人しいガロンといえど、街中を闊歩すれば徒に怖がらせてしまう。ビアンカはガロンを連れて街のはずれへと向かう。
 リョカも急いで教会へと走った。


続く

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