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炎の試練 その7

「それではお願いします……」
「ええ。もしサラボナで例の病が流行りましたら、そのように対処いたします」
 例の奇病の正体と対処法を告げたリョカは、改めてお辞儀をして教会を出た。
 奇病の正体はザキである。そのことは自然発生であるとオブラートに包んで伝え、マホステの印を教えるに留めた。
 おおよそ光の教団の仕業であろうとも、明確な証拠も無く、さらにリョカ自体流の用心棒に過ぎない。余計なことを言えば逆に胡乱じられることもあり、伏せることにしたのだ。
 ――アンディさんならそうするよね。
 そんなことを考えながら通りに出ると、とぼとぼ歩く女の子の姿が見えた。
 青い髪のツインテールの女の子。普段はリョカを見るなり噛み付いてくるぐらい元気があるのに、今日はそんな様子が見えない。
「アンさん!」
 思わず声を掛けたのは、彼がやはりお人よしな故。
「え? あ、あぁ……」
 名前を呼ばれたことで辺りを見る彼女は、リョカを見つけてやってくる。
「どうしたの? 元気ないけど……」
「うん……」
「あ……、そうだ。例の約束なんだけど、水のリングは手に入れてさ……、炎のリングを手に入れようとしたら、アンディさんに解雇されちゃって……」
 今彼がこの街に居るということは、約束を反故にしてしまったことの証拠になる。そう考えたリョカは、咄嗟にあの日の茶番を口にする。とはいえ、それで彼女が納得してくれるかといえば、望み薄い。
「うん。しょうがないわ……。私、いえ、フローラがアンディを想うのと同じように、ビアンカさんだって貴方のことを想っているんだし……」
「え? ああ、ビアンカに会ったの?」
「さっきね……」
 彼女が落ち込んでいるのはそれが原因だろう。
「僕なら力になれると思ったんだけどね……はは、ははは……」
「ええ。貴方なら力になれる……。けど、無理かな……。私が余計なことしたせいで、変になってるし……」
「変?」
「んーん、こっちの話。ね、リョカはもう行くんでしょ? お父さんの意思を継ぐために……」
「そのつもりだけど……」
「なら……もう行ったほうがいいわ。その方が私も諦めがつく……」
「諦めって……」
「あ、でも一つだけお願いがあるの。貴方、死の火山の絵を描いてくれないかしら?」
「絵? なんでまた……」
「お願い。せめて私だけでもアンディを助けたいの……」
「アンディさんを助ける? それと絵がなんの?」
 いつもながら意味不明な彼女の言動にリョカは頭を捻る。ただ、その必死そうな表情からは、それが冗談や悪ふざけに見えない。
「それだけで良いのかい」
「うん……」
「それだけなら……」
 死の火山がいかなるものかわからないが、遠くから写生する程度ならそう危険も無いだろう。その程度ならビアンカを説得することも出来るはず。
「わかったよ。ビアンカにお願いしてみる。ええと、アンさんは……」
「私は暫くこの街にいる。というか、遠くまで移動できないし……」
「そう……」
「あ、できれば急いでくれるかしら? 一週間と待たずに炎のリングの試練が始まるから」
「ん? んぅ? うん、わかったよ……」
 絵と試練の関連はわからないが、それを果たすことで彼女の機嫌が直るのなら余計なことは言うべきにないと頷くリョカ。
 そして、久しぶりに絵を描くことに、彼自身気分転換したい気持ちもあった……。
「それじゃあ早速準備してくるよ。それまで待っていてね」
「うん。ありがとう……」
 そう言うと彼女はぺこりと頭を下げる。いつもの彼女の高慢な振る舞いからは考えられず、リョカも頭を掻きながら軽く頭を下げる。
「それじゃあ……」
 早速ビアンカの元へと走るリョカは振り返る暇も惜しんで走る。
「貴方がそうだったら良かったのに……」
 そんなアンの呟きはリョカに届かず、彼女は暫くリョカの後姿を見つめていた。
 その瞳は寂しさの中に少しの希望が見え、潤みを湛えていた……。

**

「反対」
 開口一番にビアンカはそう言った。
「ん~、なんつうか、かなりハードル下がったけど、やっぱり意味わからんし、オレもビアンカはんに同意かな?」
 街の入り口近くにあるオープンカフェでお茶を飲んでいたビアンカとシドレーに、リョカは先ほどのことを話した。
「なんでさ。ただ絵を描くだけなんだ。危険なんて無いよ……」
「それはそうだけど、どうして絵を描くことがアンディさんの手伝いの代わりになるの? そこを説明してよ」
「それは僕もわからないけど……」
 当然といえば当然の疑問に、リョカはしどろもどろになる。
「なぁリョカ。まぁなんや。今回はオレとアンディはんに任せておき。お前が人助けしたくて仕方ないのはわかるけど、ビアンカはんを安心させるのやて、人助けやで?」
 いい加減面倒くさいらしいシドレーはため息をエスプレッソで飲み下す。
「それにリョカかて目的有るんやろ? 聞いたで、なんか奇病の正体掴んだとかな。それ教えて金もうけ……はせんでも、いろんな人救うことのほうが大事やないか? アンディはんだけに肩入れする必要はないで?」
「それはそうだけど……」
 反論しにくい理屈立てにリョカは言葉が続かない。ビアンカの彼を睨む視線も厳しく、リョカは椅子に座りながら縮こまる。
「でも、アンさんは何か大事なことがあるみたいなんだ。だから、少しでも力になりたい。それにビアンカだって覚えてるだろ? 昔僕らがサンタローズの洞窟で危険な目に遭ったとき、助けてくれた。他にもレヌール城で僕をサポートしてくれたし……」
「あれ? そうやったっけ?」
「そうだよ。だって、あの時、ヒャドを唱えてくれたのはアンさんだろ?」
「ん~、覚えてへんな……。でもまあ、サンタローズのは確かにアンやったわな」
 記憶喪失の彼も例の事件は覚えているらしく、うんうんと頷く。
「それで代わりに今度は自分が危険な目に遭いたいと……」
「ビアンカ……」
 とげとげしい言い方にリョカは困ってしまう。
 そっと手を伸ばし、彼女が手にしたコップごと、その手を取る。
「ビアンカ、あの時だって僕らは十分危険だった。もしあそこで爆弾岩が爆発してたら、シドレーも僕もビアンカも親方も皆吹き飛んでた。それを救ってくれたのは彼女だ」
「それは……まぁ……」
 思い起こせば、あの時のビアンカは特に力になれるわけでもなく、リョカについていくだけであった。そしてレヌール城のときも彼女は誘われるままに捕まり、なんの力にもなれず、ただ彼の足をひっぱっただけ。彼の話によれば、アンが手を貸してくれたという。
 その負い目を無視できるほど、彼女もまた人でなしになれそうにない。
「わかったわ。絵を描くだけでいいのね? 本当にそれだけね……」
「うん。それに……、アンさんは僕の絵を好きだって言ってくれるし、そういうのが嬉しいんだ……」
 テーブルで繋がれた手に、ビアンカの手が重なる。
「私だってリョカの絵、好きよ……」
「ビアンカ……」
「リョカ……」
 互いに見詰め合う二人。オープンカフェの一席で二人だけの世界が繰り広げられる。
「うおっほん……」
 それが面白くないシドレーは乱暴にカップを置いて咳払いをする。
「あ、あはは……はは」
「もう、シドレーったら……」
 無粋な翼竜に邪魔される二人はちらりと彼を見る。とはいえ恥じらいをもつ二人は、シドレーのみならず周囲の和やかな視線に真っ赤になっていた……。
続く

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