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炎の試練 その8

「おーい、リョカ! 行くで~」
 サラボナのはずれに位置する比較てき安い宿屋で朝を迎えたリョカは、シドレーの呼ぶ声に目を覚ます。
「ん~ん、シドレーどうしたんだい? こんな朝早く……」
 寝ぼけ眼を擦りながら欠伸をするリョカ。隣では既に身支度を済ませたビアンカが、むっつりした顔でいた。
「どうしたの? ビアンカ」
「んもう、シドレーったら……」
 どうやら彼女の不機嫌はシドレーにあるらしい。
 彼女の隣には鞄が二つあり、旅の必需品が押し込まれている様子。火山への写生に行くのだろうかと安易に考えたリョカだが、そうなると彼女の不機嫌の理由が見当たらない。リョカの写生行脚は彼女も了承済みなのだ。
「おはよ! リョカ! シドレー、ビアンカさん」
 すると弾んだ声と一緒にアンがやってくる。
「あれ? アンさん?」
 一瞬戸惑うもビアンカの不機嫌とアンの上機嫌を考えれば導かれる答えは一つ。
 窓の外を見るとアンディとフローラがのんきに談笑しているのが、それを裏付けた。

**

 期日を迎えた水のリング捜索と、境にして始まった炎のリング捜索。
 それを耳にしていたシドレーはこっそりとアンディの元へと行き、火山までの護衛と、キャンプの設営、確保を引き受けたのだ。
 渋るビアンカだが、火山の写生を行うためにはリョカがそこまで行く必要があり、それならば大人数のほうが安全であると諭される。
 するとどこからかアンもやってきて、無理やりに同行することとなった。
「それじゃあアンディ、気をつけて……」
「ああ。次に戻るときは炎のリングを持ってくる。そうしたら晴れて君と一緒になれる」
「ええ、アンディ……」
「フローラ、愛してる。きっと戻ってくるから、待っていてくれ」
「私もよ、アンディ……」
 周囲の視線などお構いなしに愛を囁く二人に、リョカもビアンカも照れてしまう。
「……アンディさん、情熱的なんだ……驚いちゃった」
 アンだけはそんな彼に感心した様子でそれを見ていた。
「さ、さぁ、それじゃあ行きましょう。炎のリングは水のリングと違って先着一名限りみたいですし……」
 放っておけばいつまでも見つめあいそうな二人にそっと水を指すリョカ。
「ええ、それじゃあ道中、よろしくお願いします」
 アンディは頷くとリョカに握手を求める。
「ええ、しっかりサポートします」
 強い力で握られる手に、その決意を感じ取るリョカ。
 一行は、見送るフローラを後にしてサラボナを出た……。

**

 死の火山を目指す道中、温暖な気候のせいか大型の魔物が多く生息している。
 大型の象もモンスターパオームは巨体と群れを成して旅人を襲う。
 それに踏み潰された冒険者の亡骸は悪意を持った精霊が宿り、やりをもって誰かれ構わずに追い掛け回す迷惑な亡者と化す。
 海岸沿いを行くことでホークマンの群れに空から見つかるなど、危険が多い。

「くるで!」
 遠くに砂煙を見つけたシドレーが上空から叫ぶ。パオームの集団は直線に位置する限り脅威だが、その巨体ゆえに小回りが利かない。事前に察知できれば余裕を持って回避することが可能だ。リョカ達は物陰に隠れながらその一団をやり過ごす。
 そうしたら今度はランスアーミーの小隊がやってくる。
「そら!」
 亡者相手に遠慮は無用と、リョカは鋼の昆を構えて敵の輪の中に飛び込む。突然の出現に、ランスアーミー達は互いにやりで突き刺しあい、それをリョカの昆でなぎ払われる。
 一度転んでしまえば亡者が故に起き上がることが難しいらしく、じたばたしだす。
「天高く眠るルビスよ、今こそ彼らに安息の日々を……ニフラム」
 そこへアンディが鎮魂魔法を唱え、亡者達を光の中へと消し去る。
「ナイス、アンディさん」
「はい!」
「おいおい、今度は空からやで!」
 シドレーの声と共に黒こげのホークマンが落ちてくる。ホークマンの群れは空を舞う竜相手にはやりにくいと、その目標をリョカ達に向けた。
「くっ!」
 空からの攻撃には防戦に陥りやすい。闇雲に昆を突き出すにも、相手は全方位に逃げることが可能であり、一体に集中することが難しい。
「きゃぁ!」
 さらに御しやすいビアンカを狙うホークマン達。彼女も懸命にレイピアを翳すが、戦闘の経験が乏しいせいでそれほど功を成さない。
「バギマ!」
 そこを救うのはリョカの放つ風の刃。思わぬ突風に身を持ち崩すホークマン。リョカは遠慮なくそれを払いのけ、ビアンカを背にしょう。
「リョカ」
「大丈夫、君は僕が守る」
 襲い来るホークマンの群れをいなし、防戦に徹するリョカ。
「まったく、貴方が守るのは誰なのかしら? 冷度をもって全てを制す、水の精霊よ、全てを凍らせろ! ヒャダルコ!」
 二人の様子を呆れながら見つめるアンは水の精霊を集めると、空中に氷の塊を出現させ、ホークマン達に放つ。
「ぐぇ! げー!」
「ぎゃっ、ぎゃっ!」
 空中一杯に放たれる氷の塊に戸惑うホークマン達。その翼を貫かれては空を舞うこともできず、地に落ちる。そうなればすかさずガロンの爪に伏せられ絶命する。地獄の殺し屋の名に恥じぬ戦いは、敵味方ともに戦慄を覚える。
「げぇ~!!」
 ホークマンのうちの一体が長い声でそう叫ぶと、一斉に撤退が始まった。
「退くのか?」
「ええ、ホークマンは比較的知能が高いですから……」
 無駄な殺生を好まぬリョカは彼らが退いてくれたことにほっとする。しかし、
「こら!」
 そんな彼の頭をアンが小突く。
「あいた」
「もう、貴方が守らないといけないのはアンディさんでしょ?」
「いや、でもアンディさんは十分強いし……」
「いい? アンディさんを無事に死の火山まで連れて行くのが貴方の仕事なの」
「は、はい……」
 いつもどおりの剣幕で押し切るアンにリョカは圧されつつ、いつもの雰囲気に戻ったことにほっとしていた。
「ちょっと、その言い方はないでしょ? リョカだって一生懸命やってるわ」
 けれど、ビアンカがそれに頷くかといえばそれもまた別の話。自分を守るために果敢に戦ってくれた彼を責められては面白くない。
「そうですね。一生懸命ビアンカさんを守ってくれましたもんね!」
 アンもやはり面白くないらしく、むっとした様子で口答え。
「二人とも、そんなにケンカしないで……ほら、先を急ごうよ……」
「リョカは黙ってて!」
「は、はい……」
 二人の剣幕に圧されてだまるリョカ。
「大体、貴方は……!」
「そういうビアンカさんこそ!」
 まだまだ続くいい争いにリョカはお手上げ状態。この旅路、何度となく繰り返してきたことだが、一向になれることがない。
「アンさん。言い争いはあとにしましょう。僕らは旅を急いでいます。それにリョカさんにとってビアンカさんが大切な人なのは確かです。そのことでリョカさんを責めるのは……」
「はい! ごめんなさいアンディさん!」
 叱られているわけだが、アンは嬉々として答える。
「なんやアイツ……怒られて笑ってる……」
 これもまた繰り返されていることであり、どうも不公平感のあることだった。
 そんな思いを飲み込みながら、リョカ達は先を進むことにした……。

続く

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