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炎の試練 その13

 地面から噴出す熱気、硫黄の臭いが強く漂い始める。
 その有毒性にリョカは濡らした厚めの布をビアンカに渡す。
「ありがとう。リョカは?」
「僕は平気」
 それはやせ我慢からの言葉ではない。彼は呼吸器周りに風の精霊をまとわせることで有毒ガスを防いでいた。それはアンやアンディも同じらしく、涼しい顔でいた。
 シドレーは毒ガスの耐性があるものの、卵の腐った臭いに何度も鼻を擦っていた。
「しっかし、こう臭いと大変やな……」
 道行く中、熱や毒気に中てられた求婚者が居り、いちいち手当てしてでの進行は遅々としていた。
「はい、これでおしまい」
 アンはガスに中てられて眩暈を起こしていた冒険者に治癒魔法を施していた。
「あんた、女神様のようだ。オレと結婚してくれ!」
「はいはい。その元気があれば一人で帰れるわね」
 炎のリングを諦めた冒険者の求婚はこれで何度目か? きつい言動の目立つ彼女だが、普段はおっとりとしたタレ目であり、雰囲気清楚、おしとやかであった。口さえ開かなければ深窓の令嬢ともいえる器量なのだ。
「ね、シドレー。アンさんて誰かに似てない?」
 その横顔に、リョカはふとシドレーに声をかけた。
「ん? ん~、さぁなぁ……」
 しかしシドレーは思い当たる節がないらしく、首を傾げるのみ。
「誰かに似てるの?」
「うん。けど、想い出せなくて」
「ま! リョカったらあんな綺麗な子と知り合いだってわけ? 隅に置けないわね」
「違うよ。そういうわけじゃなくて……」
 どうにもこの年上の幼馴染が近くに居ると調子が狂う。そんな雰囲気にアンはイライラしたようすで彼らを半眼でみる。こういったときはやはりリョカの知っているアンでしかなかった。

 坂道を下り、マグマの見える岩場を石飛でもするように行く。
 はたしてこの道が正しいのかすらわからないリョカ達を尻目に、アンはどんどん先へといってしまう。
 彼女の持っていた地図は古ぼけていたが、アンディとシドレーが数日かけて作ったそれよりもずっと最深部まで行き渡っていた。
「……調べてたんなら最初から俺らに渡してくれたらいいんとちがうん?」
 こそっと耳打ちするシドレーにリョカは笑いながら頷く。
 リョカ達と同行せずとも探索できるだけの力、もしくは協力者がいるのであれば、リョカにアンディの護衛を頼んでみたり、絵を描けなどとおかしなことを言う必要はないのではないだろうか?
 もっとも前々から妙にちぐはぐな行動をする彼女なので、むしろそのほうが自然とも思えたが。
「お?」
 暫く歩いて辿り着いた先にあったのは、溶岩で敷き詰められた道と呼べない代物。もしガロンがいたら、肉キュウがやけどしてしまいそうなほどに赤くなった石がごろごろしていた。
「え……うそ」
 アンはその道を見て驚いた様子だった。
「おい。こんなん俺しか無理やで? つか、本当にこの道で正しいん? まあちょっくら行ってくるけど」
 シドレーはそう言って翼を広げる。
「大空を舞う支配者よ、地を這い蹲る我らにつかの間の自由を与えたまえ……、トラマナ……」
 珍しく両手で印を組んで詠唱をするアン。彼女の周りどころかリョカ達の周りに青白いものが集まりだし、身体を空気の層が包む。
「お? おお?」
 リョカは普通に立っているつもりが、地面より少し高い位置にいることに気付く。まるで空気のゲタを穿かされたような感覚に戸惑いつつ、数歩歩いてみる。
「へぇ……これは……」
 溶岩周りを歩いても熱が届かない程度に離れているおかげで平気で歩ける様子。
「さ、行くわよ」
 アンは溶岩の上をひょいひょい進み、リョカもビアンカもそれに続く。
「お、おう」
 せっかくの翼の出番もすっかりお株を奪われてしまい、シドレーは面白くない様子で追いかけて行った……。

**

 溶岩の道を暫く進むと、明らかに人工的な階段が見えた。
 新しい足跡はいくつもあるが、戻った痕跡は見当たらない。
「ここか」
 アンディに先立ちリョカが降りようとしたとき、階下から声が聞こえた。
「……オレは、オレはこの試練に勝ち、フローラを手にするんだ! ……名誉市民になれば我がバーナードカンパニーの栄光が約束される。そのためにオレは今日まで!」
「……渦を成し、刃となりて敵を討て! バギマ!」
 階下ではリベルとイレーヌの声がした。おそらく魔物の一団と対峙しているのだろう。他にもいくらの気配もした。
「く、あいつ!」
 アンはいてもたってもいられぬようで、階段を転がり落ちるようにして降りると、豊富にある炎の精霊を両手に集める。それはかつてフローラが氷の城で見せたそれに匹敵した。
「お、おい、殺す気か!?」
 驚いたシドレーはリョカ達の頭を飛び越し、アンを追う。
「ビアンカ、君はここにいて」
「でも」
 心配するビアンカに振り返らず、リョカも走る。彼女もまたそれを追おうとしたが、非力な自分が行けば足手まといになると、それを止めた。


続く

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