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炎の試練 その14

 階下はだだ広い場所となっていた。まるで火山口なのではないかというほどにマグマが周囲を占め、その中央へ申し訳程度の道がある程度。
 そんな広い見通しの狭い場所で、紫のローブの集団とリベルにイレーヌの陣営と炎の戦士達の陣営が刃を交えていた。
「メラミ!」
 いち早く辿り着いたアンは、ローブの集団ごと炎を投げつける。
「おい、アン! ……って、まあええか……」
 ローブの集団が人外であるのは承知のこと。ただ、アンもそれを知っているのが不思議でもあった。
 炎はローブの集団を蹴散らし、その煽りで炎の戦士をなぎ倒す。
「く、貴様ら!」
 一応は味方であるらしいローブの集団を倒されたことにリベルがアンを睨む。
「リベル! 貴方はそんな奴らと組んで平気なの!」
 さらに風の精霊を集めると、そのローブを切り刻む竜巻を放つ。
「うぼぉ……」
「ぐぅ……」
 ローブを剥げば屍鬼の群れ。イレーヌはその焦点の合わぬ同行者達に軽く悲鳴を上げ、どちらを攻撃すべきか悩みだす。
「まずはこのぼんくらどもをなんとかせんとな……」
 一本道に立ちふさがるローブの屍鬼と炎の戦士達。遅れてやって来たリョカ達をまず排除しようと、のそのそとした敵意を示す。
「はぁ!」
 空に舞うシドレーに気を取られる一団に、リョカが昆を両手に突っ込む。
 彼らが人であったのは事実だが、今はもうその面影もない。そして彼らに取り殺される必要もないと、遠慮はしない。
「大地に犇く精霊達よ、我にその力を弾けて示せ! イオラ!」
 アンは大地から精霊を呼び起こすと、エネルギーの塊を集団に投げる。起こる爆発は、炎の戦士を吹き飛ばし、リビングデッドを蹴散らす。
「いきましょう! アンディさん!」
 リョカはアンディを促し、走る。
「行かせるか!」
 イレーヌのマジックバリアで魔法による爆風を凌いだリベルは、剣を構えてリョカに挑む。
「退いてください!」
 振り下ろされる剣に両手でのフルスイングをあわせた。
「ぐっ!」
 リョカの膂力を込められた一撃に剣こそ離さぬものの、痺れてしまうリベル。
「後で治療します!」
 そして手首を強く打つ。
「ぐはっ!」
 ナックルカバーの上から強打されることで十分な衝撃を受けたリベルは、今度こそ剣を落とす。
「リベル!」
 イレーヌはリベルの治療をしながら、先を行くリョカを睨む。
「イカセルカ! 指輪ハ我ラノ女王ノモノ」
 さらに行く手を阻む炎の戦士達が閃熱系の魔法で道を遮る。
「マホカンタ!」
 アンディは光の壁で自らを覆うと、閃熱魔法に飛び込み、乱反射しながら先を急ぐ。
「マホステ!」
 リョカも紫の霧を纏うとそれに続く。
 炎のリングは目の前にある。このおかしな旅もここで終わるのだと思うも、最後まで気を抜くまいと周囲を見る。
 頭数も地力も劣勢なのは間違いないリベルは、それでもその鉄面皮を崩さない。
「イレーヌ!」
 リベルの叫びにイレーヌが頷く。同時に道の先に置かれていた道具袋が爆発した。
 爆発魔法を封じ込めていた魔具を破裂させたのだろう、大爆発を起こし、道が崩れる。
 一本道を爆破した彼らを追う術は、アンディにも他の求婚者にも無い。
「ったく、毎度毎度壊すのが好きなやっちゃな……」
 しかし、空を自在に飛べるシドレーにそんなものは意味がなく、ぶわっと中空に出ると、アンディを掴んで台座に向かう。
「おーい、お前! リベル! お前にはしっかりキラーシェルの養殖場の落とし前つけてもらうで~。さ、これでリングは俺らのもん!」
 器用な指をわきわきさせながら炎のリングと思しき指輪に手を伸ばす。
「そうはいかないわ!」
 イレーヌは護符の貼られたナイフを台座の根元に投げつける。
 すると突然群青色の煙が出て、シドレーを覆う。護符には精霊文字で風の精霊に眠気を誘うように願う言葉が書かれていた。
「な、なぬ!?」
 不意の睡眠魔法にシドレーは台座から飛びのく。けれど、あおりを受けたせいで立ちくらみのような眠気に襲われる。

 ふらつくシドレーにアンは舌を打つ。
「ほんっとにあのバカ竜!」
 アンは苛立ちまじりにそう叫ぶと、再び空の精霊を呼び、自分にまとわりつかせる。
「トベルーラ!」
 未だ炎の戦士とリビングデッドの集団と奮闘中のリョカを尻目に、アンは一直線に台座へと飛んでいった。
「あんな魔法があるんだ……」
 リョカは崩れかけた岩場に昆を突きたて、棒高跳びのように飛び越える。
 台座ではザメハを受けたシドレーが眠気を振り払い、炎のように輝く赤い石を手にしていた。アンはそんな彼を小突きながら、石を手にして空に翳していた。
「それにしても彼女、一体何者なんでしょう?」
 アンディは炎の煽りを受けた部分をリョカに治療してもらいながら、アンについてリョカに尋ねていた。
「ええと、僕もよくわからないんですけど、ピンチのときに助けにきてくれる正義の味方の一人というか……」
「なるほど。リョカさんには正義の味方が多くて頼もしいですね」
「はは、なんか頼りない僕を皆ほっておけないのかな? でもこの勝負、アンディさんの勝ちですね……」
 向こう岸ではリベルが悔しそうに剣を突きたてているが、この距離を越えることは出来そうにない。数をそがれた炎の戦士達も撤退を始め、リビングデッドたちはわけもわからずマグマに消えていく。
 その様子にリョカはほっと息を着く。危険とされた炎のリングの試練もこれで無事に終る。そう思っていた。しかし、

 シドレーは、周囲のおかしな雰囲気にきょろきょろとする。
 溶岩の一部が盛り上がり始め、それは意思を持っているらしくだんだんと彼のほうへと近づいてきた。
「なんや?」
 最初は波がせり上がっただけに見えたが、手のような二本が出てきて、節穴の奥で何かが光ったとき、それが魔物だとわかった。
「うぇ……やっぱりボスってのがおんねんなぁ……、でりゃぁ!」
 シドレーは大きく息を吸い込むと炎を吐き出す。
 湧き出した溶岩の魔物は炎の塊をものともせずに近づいてくる。
「ちょっと、溶岩魔人に炎なんて効くわけないでしょ? ったく……」
「なはは。そうやった氷の間違いやな……」
 改めてふぶきを吐き出すシドレーだが、周囲の熱気のせいか、届く頃には勢いがなくなってしまう。
「うう、なんかオレ、意外と役立たず……」
 炎こそ平気なものの、攻撃手段も無効では互いに勝負になりそうもない。そんな合間にも溶岩魔人達は台座を目指してやってくる。その数は三体と少ないものの、逃げ場を絶たれた彼らは包囲される形だ。
「ぐぇえええ……」
 そのうちの一体が呻くと、がばっと大きく口を開け、炎を放射しだした。
「ぐ!」
 リョカとアンディは咄嗟に台座の影に隠れてやり過ごす。
「フバーハ!」
 アンは防壁魔法を唱えると光のカーテンをまとい、さらに氷結魔法を自分の周りに滞空させることで防いでいた。二つの魔法を同時に使うことと、魔法効果の高い装備のおかげだろう。
「これはあかんで。もう指輪手にいれたんやし、急いでにげまひょか!」
 シドレーはアンディを掴むと、そのまま来た道を戻る。リョカも昆を構えて撤退を始める。
「アン!?」
 けれどアンはその溶岩も魔物を前に動かない。敵の動きは緩慢であり、怖いのは炎くらいだろう。
「リョカ、お願い、時間を稼いで!」
「それより逃げないと」
「アイツらは溶岩を泳ぐ魔物。狭い道を戻れば逆に逃げ場を失う。だからここで叩く」
 アンの提案にリョカはしばし迷う。とはいえ、溶岩の魔物は溶岩を泳ぐことはさも当たり前の様子であり、今もリベル達を狙って這い寄っている。
「何か策があるのかい?」
「ええ、今回の為に練習したとびきりのがね」
 怪我で動けそうに無いリベルとイレーヌに溶岩の魔物が迫るのが見えた。このまま彼らを見捨ててよいかといえば、それも心が痛む。彼らのしてきたことが悪質な行為であったとしても、ならばこそ改めてサラボナの街で裁きを受けるべきだろう。
「わかった!」
 けが人を連れて脱出するための方法は、今のリョカに思いつかない。ならば彼女の自信に溢れた態度に賭ける。
 リョカはさしあたり、リベル達を助けるべく、崩れた道を越えた。

続く

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