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炎の試練 その15

「りゃあああ!!」
 リベルを溶岩に引きずり込もうという手を打ちのめし、さらに昆を突き刺す。だが泥の魔物と比べて強靭らしく、その程度では怯まない。
「バギマ!」
 一メートルくらいの竜巻を巻き起こし、それを振り払うと、リョカはリベルの肩を掴む。
「シドレー、アンディさんはその人達を連れて行って! 僕はおとりになる!」
「ん? ああそう? ほなアンディはん、いきまひょか」
「ええ。リョカさんも無理をなさらず……」
 アンディはリベルを担ぐとまだ襲い掛かる一体に氷結魔法をぶつける。
「うぅ、リベル……ごめんなさい……」
「他に言うことあんだろうが……」
 二人の間にどんな関係があるのかはさておき、シドレーは比較的安全な方へリベルを引きずる。
「さあこっちだ! 逃げる獲物より僕に来い!」
 リョカは昆を振り回し、高らかに叫ぶ。後ろにアンを庇いながら三体の溶岩魔人に果敢に攻める。
「バギマ! せりゃ!」
 竜巻を起こし、岩場に昆を突いて縦横無尽に戦場を駆けるリョカ。彼を追う炎の勢いは激しいが、外套の切れ端すら焦がせない。
「遅い。のろまだな!」
 緩慢な動作でリョカを追うその脳天に一撃を打ち込む。
「ぎゅぇ!」
 搾り出した悲鳴を上げながら凹む溶岩魔人だが、暫くすると修復してしまう。
 ――本当に倒せるのか?
 そんな疑問を感じつつ、それでも表情は優勢を誇る。弱気を見せてはきっと彼らに勢いつかせるだろうから。
 階段付近ではアンディ達とビアンカが見えた。階下のざわめきに気が気で居られなかったのだろう彼女はイレーヌに肩を貸しながら、リョカに不安の眼差しを送っていた。
 ――心配しないで。僕が時間を稼ぐ。その間にアンさんの切り札を見せるから。
 背後ではアンが難解で聞きなれない言葉を呟き、光に見紛うばかりの炎の精霊を集める。
 それが自分達に向けられるのだろうと気付いた溶岩魔人は、リョカからアンへと矛先を変える。
「アン!」
 魔法に集中していたアンは、その燃え盛る火炎にも微動だにしない。
「だぁ!」
 リョカは彼女の前に立つと、真空魔法で壁を造り、さらに外套で炎をはらう。
「え……リョカ!?」
 集中しすぎて周囲に気がつかなかった彼女は、目の前で自分を庇ってくれたリョカに驚きの声を上げる。
「私にはフバーハがあるわ。だから……」
 眉、前髪を焦がし、鼻に頬に炭をつけて笑うリョカ。
「大丈夫。僕が守るからアンは集中して」
 一度に二つの魔法を使うことは非常に集中力を要する。特に系統の違う精霊を使うとなれば、反発することもある。ベネットのところで一応は練習したものの、せいぜい同系統のホイミとキアリーを使用するに留まった。
「う、うん……ありがとう……」
 アンはその笑顔に、その後ろ姿に久しぶりの笑顔を返してくれた。
「せりゃああああ!!」
 そんなことにも気付かず、リョカは炎の戦士の残党をなぎ払う。

++

 十分に練られた炎の精霊。そして魔力。
 それはまるで太陽というべく輝きを、彼女の手に掲げさせていた。
 あびせられる炎、奮われる拳の壁になっていたリョカが膝をつき、回復魔法を唱えだした頃、アンは彼の前に立つ。
 吹きかけられる炎は彼女の凝集された魔力の前に打ち消されてしまう。
「ありがとう、リョカ。十分だわ……」
 手にはシドレーから奪った炎のリングを掲げる。
「あんた達が守っていたこれ、私が持っている……、取り返すつもりなんでしょ?」
 アンはリングを懐にしまうと、上昇する。
 炎の狙いが定まらなくなったところでフバーハを解く。仕上げの詠唱を諳んじる前にすうっと一呼吸。
「……わが身を焦がす紅蓮の炎、探求の道を究めんとする……、大賢者にして大莫迦者、フェーゴ! かの者の名を語りて、我は貴様らを使役しよう!」
 潤沢な炎の精霊はかつて炎に殉じたヒーローの名に集まりだし、強い言葉とその放出される魔力にひれ伏す。
 彼女の掲げられた右手の先には大きな炎の塊が作られ、それはまるで室内に太陽を作り出したように見るものを焦がす。
「メ……ラ……ゾーマ……いけえええ!!」
 比較的固まっていた三体目掛けて投げ放たれる火焔球。十分に練り上げられ、詠唱も精霊に命令する形の高度なもの(リョカは魔力の程度から存在も教えてもらえなかった)。
 向けられた溶岩の魔物達は逃げるという選択肢を選べそうにない。あまりにも荘厳すぎて身動きができそうにないのだ。なにせ自分に太陽が降り注ぐのだから。
「ぐ、ぐぇ……ぐぇ……」
「ぎ、ぎぇ……」
 口々に呻く溶岩魔人だが、その炎の玉と触れたとき、自身を構築する石が一瞬にして溶かされてしまう。
 火焔球は溶岩の地面をごごごと穿つ。溶岩魔人から溶岩へと変わり、そのまま地中奥深くまで引きずり込まれていった。

++

「うへぇ……あいつ、炎きかねえとか言っておいて、炎でとどめ刺しやがった……?」
 二人を階段付近まで戻したシドレーは、その光景を見ながら額に汗を垂らしていた。
 過去、氷の女王を氷に閉じ込めた小さな魔女に感じたことの無い寒気は、溶岩に囲まれたこの場所でもぞくりとさせてくれた。
 アンは魔力の使い過ぎなのか、飛翔魔法を維持できなくなり、ふらっと落ちる。リョカはぼろぼろになりながらもそれをキャッチするが、そのまま倒れてしまった。
「おいおい! ったく、考えなしやな……」
 仕方なしにシドレーは台座へと引き返した。さすがの魔女も炎に囲まれてはたまらないだろうから。


続く

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