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試練の終わりに その4

「で、リョカはこれからどうするのだ? 見たところ怪我の程度も回復しているようだが?」
「ええと、僕は父さんの故郷を目指そうと思います。グランバニアですから、地理的にオラクルベリーかラインハットから船に乗ろうかと」
「いや、それは無理だろう。先の戦争でラインハットとグランバニアはあまり良い関係と言いにくい。船も制限されている。おそらくお前のような浮浪者崩れの冒険者が行ったところで許可が下りないな」
 自分も浮浪者崩れの冒険者なことを棚にあげてインディは言い放つ。
「それにポートセルミから戻るのなら、ガロンがまずいな。そこのバカ竜はなんとでもなるが、キラーパンサーとなると恐れるものも多い」
「それは……」
 かつてガロンとシドレーが海を渡ったのは、密航してのこと。その頃はガロンもまだ小さく、積荷の隙間で小さく隠れることもできた。けれど今はそうも行かない。特に地獄の殺し屋とも呼ばれる存在ではなおさらだ。
「もちろん方法が無いわけではないぞ。テルパドール経由の南周りの船に乗ることだ」
「テルパドール経由? ええと、砂漠の国家ですよね。すごくお金持ちな」
「あちらは雅な貴族が多いからな。キラーパンサーのような獰猛で凛々しい魔物を見たがる物好きもいる。興行目的といえば許可も下りるだろう」
 その凛々しい魔物は宿の裏で転寝をしていたり……。
「なるほど。ありがとうございます」
「遠回りするのもばかばかしいからな」
 得意そうに鼻息を鳴らすインディに、シドレーは首を傾げる。
「ん? お前、ついてくる気?」
「ん? いや……それは……まぁ、行く先が一緒というか……まあ、そのなんだろうな? はは」
「まったく、計画性のない奴やな……」
「なんだと下僕の分際で」
 笑い飛ばすシドレーに、インディはじろりと睨む。
「誰が下僕や」
「貴様、あの時……、ああ、そうだな。まあいい、そのなんだ、噂によれば例の装備をテルパドールの女王が集めているそうでな。もしかしたらパパス殿の情報があるかもしれない。北周りか南周りかの違いなら、もののついでに調べるのも悪くないだろう?」
「そうなんですか。僕はまったく知りませんでした」
「うむ、感謝しろ」
「はい、ありがとうございます。インディさんが一緒に来てくれるなんて心強いです」
「いや、一緒ではない。たまたま行き先が一緒なだけだ」
 横柄なインディにリョカもビアンカも苦笑い。シドレーは生意気な奴と舌打ちし、お付の女性はというとこれまた渋い表情。

「……それじゃあ僕はルドマンさんに挨拶していくよ。寝ていた間のこともあるし」
 朝食を終えたリョカは立ち上がると背伸びをてからそう告げた。
「そうね、その間に旅の準備をしておくわ」
「そういえばアンさんは?」
 ここしばらく青髪の少女がいないことを思い出す。
「それがわからないのよ。たしか時間がもう無いから戻るって言ってたけど、なんのことかわからなくて」
「時間? 門限か何かかな?」
「さあ。でも、リョカにありがとうって言ってたわ」
「僕に?」
「ええ。アンディさんのことは残念だったけど、リョカは最後まで約束を果たそうとしていたって。貴方がうそつきじゃないからって……」
「うん……」
 アンの目的がアンディを守ることであったのなら、自分はその役に立てたと言えない。まだ残る苦い気持ちが虫歯のように胸に染みてくる。
「う~ん、この石ころどないしよ……」
 一方、例の石を抱えていたシドレーはアテが外れたとため息ばかり。
「道具屋で二束三文にでもしておくんだな」
「簡単に言うなや。ガロンさんが一生懸命背負ってくれたんやで」
「背負わせたの間違いだろう?」
「くぅ~、しゃあない、ちょっくら回ってくるわ……」
 シドレーは石ころの詰まった大げさな荷物を抱えると、のしのしと食堂を出て行く。
「それじゃ僕も……」
 リョカもシドレーの荷物を片方担ぐと、ルドマン邸へと向かっていった……。

**

 ルドマン邸へとやってきたリョカとシドレーは、その先客に驚いた。
 最近のせわしなさに忘れていたが、その影と形をみるなり怒りがこみ上げてくる。
 リベルがいたのだ。
 彼はさも当然のように門を潜ると、そのまま屋敷へと通される。
「おい、まさかアイツ……」
「まさか!」
 もし二つのリングを彼が入手しているのであれば、リベルがフローラの……。
 そんな想像が脳裏に瞬間的に再生されると、リョカはいてもたってもいられない。彼を追って駆け出すリョカ。
「止まれ、何者だ」
 当然ながら制止する執事達。リョカはシドレーをちらりと見るとその背中に駆け上がり、そのまま上空に飛び去る。
「いくで!」
「おねがい!」
 中空を滑空し、リベルに先回りを成功するリョカ。
「これはこれは……なんの用かな?」
 不敵な面構えのリベルは、リョカを前に空々しく嘯く。
「僕は貴方達を赦さない」
「赦さない? 一体なんの罪で? そして貴様に俺を裁く権利があるとでも?」
「あの時、どうしてアンディさんを助けなかった! 彼は貴方を助けてくれたのに!」
「ふん、お互い生死の関わる極限状態のこと。仕方の無いことさ。それに、見捨てたのは俺ではない、イレーヌだ。そうだろ? イレーヌ」
「……うん」
 頷く女性は苦い表情。彼女にはまだ人としての倫理が残っているらしく、それでもリベルに従うという矛盾した態度が表情を曇らせているのだろう。
「ふざけるな! 貴方は恥ずかしくないのか!」
「冒険者風情に説教をされるとはな……」
 まるで取り合おうとしないリベルの態度。彼からすれば格闘でも魔法でも適わないだろう。けれど、この場でリョカが能動的に襲い掛かるかといえばそれが無いと踏んでいる。それゆえの強気な態度だ。
「……なにかな? 騒々しい……」
 するとそこへ騒ぎを聞きつけたルドマンが顔を出す。
「はい、ここに賊が魔物と共に侵入しておりまして……」
 リベルは腰に差した剣に手を掛ける。その頃には門にいた執事が衛兵を応援に呼び寄せたらしく、リョカ達を取り囲むようにやってくる。
「今、捕らえますからご心配なく……」
「けっ、なかなかの下衆やな……」
 シドレーはリベルを睨みつつも、相手は普通の人間。もし下手に手を出せばお尋ねモノならぬお尋ね竜になりかねない。もちろん空へ逃げることも出来るが、そうすればリベルに有利に働いてしまう。
 ここにいるのがあの青髪の青年なら適当に繕って窮地を脱出できるのだろうとごちるのは、いささかリョカが人心を知るに頼りないところがあるため。
「ルドマンさん、彼はアンディが炎の魔物に焼かれる時、適切な救助もせずに逃げた男です。そんな人をフローラさんの婿にするなど、できるのですか? 名誉市民の名前に泥を塗るような彼に!」
 怒りに燃えるリョカは何時になく強い口調で言う。
「ふむ、それは本当かね? リベル君」
「ライバルを助ける理由もありません」
 意外なほどにあっさりと肯定するリベル。対し、ルドマンも顔色一つ、表情も変えない。
「そうだな。名誉市民は必ずしも品行方正である必要もない。大切なのはこの街を守ること。わしの場合はそれが金によるもので、リベル君の場合はその狡猾さが武器だろう」
「そんな……」
「リョカ君、人を、街を守るということは些細な正義に拘ることと一致しないものだ。君が彼を赦せないのも大体察しがつくが、それを踏まえた試練なのだよ」
 顎髭を撫でながらさも当然という様子のルドマン。リベルもそれを知っているのだろう、余裕の表情だ。

続く

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