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試練の終わりに その6

「キャンキャン!」
 するとそこへやってきたのは白い犬。リョカ目掛けて飛び込んできたので、思わず胸で受け止める。
「あらあらリリアンったら。皆さん真面目な話をしているのにだめですよ~」
 続いてやってきたのはフローラだった。
「フローラさん。貴女は……平気なんですか?」
「何がです?」
「結婚です」
「……平気かといわれましても、正直、リョカさんにそこまで嫌がられては悲しいですわね」
 それほど悲しいという様子もなく、笑顔で言うフローラには違和感ばかりがある。
「そうじゃなくて、こんな形で結婚を決められて……」
「私は姉さんと違い、サラボナでの安穏とした生活を享受していました。その対価としてお母様から何度も名誉市民のことは聞いておりました。私とてゴルドスミス家の人間ですし、こうなるとことも想定しております」
「けれど!」
「ただ、お父様。私も親しいアンディが亡くなり久しくありません。今、リョカさんと結婚したとして、私はどんな顔をすればよろしいでしょうか? 笑わぬ花嫁を娶る次代の名誉市民がいかにしてこの街を守れるのか? いささか不安です。そして心ここにあらず、亡きお父様の道しるべを辿るリョカさんにそれができますでしょうか?」
「フローラ、お前も反対というわけかな?」
「いえ……。せめてリョカさんの心残りを晴らしてからでも良いのではないかと思いまして……。それにパパスさんの足跡を辿れば、きっとお父様のところへ戻る必要があります」
「……それはどういう意味かな?」
「お父様のお部屋の鍵をもう少し強固なものにしてはいかがかと思いまして」
「なるほどな」
 フローラの言葉にルドマンは深く頷くと、一呼吸おいて続けた。
「リョカ君、君に時間を与えよう。これより三年、猶予を与える。その間、君はパパス殿の足跡を辿るが良い。君が父の志に殉じる気持ちがあれば、きっと私の力が必要になるはずだ。その時はフローラの婿として迎えよう。逆に三年経っても戻らぬというのなら、私はパパス殿の足跡を君から奪おう」
「そんな……」
 一方的な宣言に当事者であるはずのリョカは、いま一つ事態を把握できない。彼からすれば虫食いの本の内容を把握して続きを書けといわれているようなもの。到底納得できる内容でもないが、ルドマンが今更覆すはずもない。
「それでは失礼する」
 これ以上、話すことも無いと、ルドマンは踵を返す。
「ま、まって……?」
 待ってもらったところで考えもまとまらない。リョカは自分に疑問さえ抱いてしまう。先ほどまでの威勢も殺がれ、昆を片手にしりもちを着く。
「く、田舎者がでしゃばるから……」
 苦々しそうに吐き捨てるリベルはマントを翻して去っていく。イレーヌもそれを慌てて追いかける。その頃には衛兵達も持ち場に戻り、落胆したリョカを囲うように数人が佇んでいた。

++

「リョカよ、貴様はどうする?」
「僕は……わからない……」
「そうだろうな。猶予はもらったのだ。とりあえず、頭を冷やすといい」
「はい……」
 よろよろと立ち上がるリョカに、あわててシドレーが肩を貸す。
「りょ、リョカ、気を落とすなって……。大丈夫やって、生きていこうと思えばなんでもできるって……。それにいざとなったら俺もついてるし……大半のことはなんとかなるって……」
「うん、ありがとうシドレー……」
 とはいえ翼竜にできることも知れている。けれどその勇気づけようとしてくれる言葉がありがたい。身長差から肩を借りることはできずとも、彼がいることが心強かった。
「……しかし……」
 その二人の姿が門のところへ行ったところで、インディはフローラを見る。
「もし奴が自分の出生を知れば、ここへ戻る理由もないだろうな? そして、お前の父といえど奴の邪魔はできんぞ?」
 にやりと笑うインディに、フローラは表情を変えない。
「女の私にはさっぱりです。殿方の腹心など……」
「ふん。よく言うよ……」
「考え過ぎですわ」
 ようやく笑うフローラとインディ。けれど瞳は冷静であり、交差する視線には、互いの胎の探りあいが見て取れる。
「……ねぇ、インディ、早く行きましょうよ」
 その読みあいの蚊帳の外の女性はインディの袖を引っ張る。ただ、どちらかというと疎外されているからというより、別の理由がありそうで、先ほどからフローラのほうを見ない。
「あら、できればお話をしたいと思っていたのですが……。特にそちらの女性と……。そうだ、特別なローズヒップティーがありますの。どうです? 今から……」
「だそうだが、どうする?」
「冗談じゃないわ」
 女性は精霊を集めると三人の両足に纏わりつかせる。それは運動能力を一時的に向上させる風の魔法、ピオリム。
「おお? やけに体が軽いな……」
 普通に歩いているつもりが駆け足の如く去り行く二人。一方、フローラは自分の周りに集まる土の精霊に邪魔をされ、緩慢な動作でそれを見送る。
「ま~った~く、い~た~ず~ら~ず~き~な~か~たですわ」
 パチンと指を鳴らすと土の精霊によるボミオスは薄れて消える。その間にも二人は加速度的に遠のいていき、いつのまにやらリョカを追い抜いてしまうほど。
 追う方法もあるけれどいたちごっこになりかねないと、フローラも屋敷へと戻った……。

続く

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