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……タイッ!?_03

張り込み

 桜蘭高校の家庭科教師である平山愛理は、里美の告発に目を丸くして驚いた。
 そういう年頃であるとはいえ、部室で女子の衣類片手に男子が自慰行為に耽っているなど、信じられない。そんな表情で。
 愛理は教育系の女子大学を出てすぐに教員となったせいか、あまり世の中を詳しく知っているほうではない。加えて中学高校も女子校であったせいか、男子の性徴というものに疎い。思春期の自慰行為についても、表面的な知識しかなかった。

 だからだろうか、証拠であるカピカピのスパッツを見てもいまひとつ理解が遅かった。
 ――これだからお嬢様は……。
 選択科目で技術を選んでいる里美は、愛理との付き合いは部活のときだけだが、世間とのずれっぷりは級友から聞き及んでいる。
 被服の授業ではヌイグルミを作り、調理の授業ではケーキを作る。育児の授業では姪の近況報告をしてみたりと、頭の痛いことを披露していたり。
 見た目もフリルのついたスカートにブラウスという、少女趣味丸出しのセンスであり、部活の試合の際は父兄と間違えられたほどだ。
 そして……、
「でもぉ、本当に男の子達、そんなことしてるのぉ?」
 間延びした喋り方。
 一部の男子には人気があるらしいが、その可愛い子ぶりっこした喋り方は同性からしてみれば、癇に障る音質でしかない。また、嫁き遅れと囁かれる学年主任の市原和子にも目をつけられていた。
「だって先生、これ精子でしょ?」
「きゃ、そんなこと、ハズかしいよ……」
 精子と聞いただけでも赤面して顔を覆う愛理に、里美は苦い気持ちになれる。今年で二十五になるハズの彼女なのに、今だ生娘という噂があるのはこのせいだろうか?
「いいですか。もしこれを放置しておいたらきっと問題になりますよ? ただでさえ部室に変な匂いがするのに、もしこれが市原先生に知られたら……」
「え、主任に知られちゃうの? それは困るわ。だって、また始末書かかないといけないもの……」
 市原女史は最近もまたお見合いを断られたらしく、眉間の皺が微妙に深くなっている。もし、部室での一件が公になれば、ここぞとばかりに憂さ晴らしをされてしまうのではないか? そんな不安が、愛理の中で膨らんでいく。
「でも、どうしよう。呼びつけて聞いたほうがいいかな?」
「ダメです。それじゃあしらばっくれます。こんなときは現行犯で逮捕するのが一番です」
「そうね、その通りだわ。よし、それじゃあ現場に張り込みましょう」
 勇ましく胸を叩いて断言する里美に、愛理は立場も忘れて従ってしまった。

**――**

 部活が終わったあと、いつものように女子部員は男子部員を追い出した。
 里美もごく自然に振舞い、着替えを済ませる。ただ、級友の一緒に帰ろうという誘いは断り、先に部室を出る。
 窓の鍵を開けておくのも忘れずない。行為を窓から確認しようとしたためだ。
 里美はひとまず部室棟裏に行き、待機していた愛理に駆け寄る。
 顧問の時は桃色のジャージを着用している彼女はやけに目立つが、この際不平は飲み込み、ただじっと時間が来るのを待った。
「ねぇ、本当に男の子達、してるのかな?」
「先生、あたしのいう事が信用できないんですか?」
 今更になってトーンダウンする愛理に、少々きつい口調で告げる里美。
「いいですか? 年頃の男子っていうのは皆性欲を持て余しているんです。いっつもあたし達のこと嫌らしい目で見てくるし、股間は膨らませているし、たまにイカ臭いし……。きっとヤルことしか頭にないんですよ」
「ヤルこと? 何を?」
 キョトンと首をかしげる十年上の女に、里美は不安を覚え始める。
「ヤルって言ったらセックスでしょ? まさか先生、処女じゃないですよね?」
 半眼を向けて冗談交じりにいうも、愛理は神妙な面持ちのまま黙り込んでしまう。
 小さな桜色の唇をきゅっとだし、眉間に皺を寄せる態度からは、その落ち込み具合が見て取れるが、まさか?
「もしかして、先生処女?」
「変かな?」
「あ、いや、いいと思いますよ。だって、ほら、やればいいってもんじゃないですし、それに病気とか子供できたら大変じゃないですか」
 とはいっても、クラスの女子の約三割は非処女を公言しており、おおよそ五割は女の貫禄を滲ませている最近では、齢二十五の女の子というのは異常なのかもしれない。
「それに、あたしだって……」
「なあに?」
「いや、なんでもないです。それより先生って好きな人とかいないんですか?」
「え、んーと、大学の頃とかは合コンとかで知り合った人いたんだけど、婚前交渉はやっぱりやだから、別れちゃった」
 髪を掻きながらにこやかに笑う彼女に、里美はどことなく親近感を覚える。彼女はまだ少し性的に幼いところがある。けれど、それは悪いところではない。それに、里美自身、男性経験が無かった。
 美人不美人の単純なニ分法なら、まちがいなく美人に属する里美だが、気の強さが災いしてか、未だ春が訪れる気配は無い。級友達は皆他の高校の子や同窓生などと仲むつまじくしているというのに、延々と遅れを取る自分を、彼女はどこかつまらないと感じていた。
 少々幼い風はあるものの、自分よりずっと魅力のある愛理がまだ男性経験が無いと知ると、おかしな希望がわいて来る。
 彼女より先に男を作り、知ろうと。
 ただし、陸上部男子は別だが。
 空が青さを増した頃、壁越しに足音が聞こえてきた。
「あ、ほら、来ましたよ……」
 予め開けていた窓の隙間から中の様子を伺う。総勢五名の男子部員はドアに鍵を掛けると、ユニフォームを脱ぎ捨て手持ちのタオルで汗を拭き始める。
 日々練習をこなしているだけあって、どの一人もそれなりに筋肉がついており、引き締まったウエスト、太い太腿とそれと比べれば細い腕を見せていた。

 そして……、

「きゃ、すごい……」
 ゴクリと生唾を飲み込む里美に対し、愛理は悲鳴を上げた。
 理由は男子達がみな一斉に短パンを下ろし始めたから。

続き

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