FC2ブログ

目次一覧はこちら

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

船旅 その1

 翌日、リョカは首の痛みと共に目を覚ました。苛立ち紛れに枕を投げたことが災いしてか、寝違えたらしい。
「いたた……」
 ベッドに座り、首の鈍痛を和らげようと摩る。もっとも、昨日のことを考えればそれどころでもないのだが。
「ビアンカ……」
 今すべきことが何なのかを思えば再び夢の中に逃げ込みたくなるが、生憎眠気もすっきりなくなっている。それに何時までも先送りにできることでもないと、覚悟を決めるしかない。
「よし、行こう!」
 リョカは服、髪を正し部屋を出た。

「ビアンカ!」
 食堂で朝食の準備をしていたビアンカに、声を掛ける。
「リョカ、おはよう……」
 心なしかやつれて見える彼女の元へと走ると、思い切って抱きしめる。
「ビアンカ!」
「ちょ、リョカ? 何? ほら、もう朝だし、皆……」
 インディも女性もシドレーも突然の抱擁に目を丸くして見つめていた。
「ビアンカ、ゴメン。余計な心配を掛けた。僕は決心した。まず、父さんの足跡を辿るためにも一度グランバニアへ行こう。全てはそれからだ。未来のことで悩んでいるよりも前進したい!」
「う、うん。わかったわ。だからリョカ……」
「ビアンカ……」
 見詰め合う二人。特にリョカには周りが見えていないらしく、熱いまなざしで彼女を見る。ビアンカも最初は視線に戸惑っていたものの、彼の熱意ある視線にだんだんと瞳を縛られる。
「リョカ……」
「ビアンカ……」
 しばし二人の世界を作り出す彼らに、外野はひそひそ声で愚痴りだす。
「おい、竜よ。こいつらはいつもこんなんか?」
「ん~、目を離すとかな~」
「……いいな……」
「がおん……」
 そんな朝の出来事……。

**

 宿を後にしたリョカ達は、サラボナ港へと向かった。
 昨日言ったとおりシドレーが手配していた船の出港時刻が迫っていたのだ。
「しかし、よくもまあ竜のクセにチケットを買えたな」
「ん? まあにじみ出る人柄の良さやろうな」
 ふふんと鼻を鳴らすシドレーはガロンの背中に乗って優雅なもの。例の荷物をリョカに背負わせ、のんきなものだった。
「つか、お前らのチケットはないで?」
 ぴらぴらと振る乗船券は二人分。自分とガロンは荷物というくくりらしい。
「ああ、構わんよ。そうだな……、見送りだけでいいか?」
 インディは女性にそっとウインクをすると、彼女は「それで大丈夫」と頷く。一体何が大丈夫なのかはこれまた不明。
「インディさん達もグランバニアに向かうんじゃないんですか?」
「ああ、そのつもりだが、まあ直ぐに追いつくさ……。どれ、荷物を運ぶのを手伝ってやる。さあ、貸せ……」
 張り切ってみせるインディだが、リョカの背負う例のバッグを持つと、そのまま地べたに落としてしまう。
「ぐお、なんだこの重さ……。中に石でも詰まってるのか?」
「そうだよん」
「貴様、アホか。こんなクズ石を……」
 こぼれた石の欠片を女性が拾うと、しげしげと見つめる。
「へえ、少量だけど良い魔法金属ね、ミスリル銀も含まれてるみたいだし……」
「ほう、さすがじょうちゃん、お目が高い。どっかの胡散臭い冒険家とは目の付け所がちがいますな」
「俺にはさっぱりわからんな」
 気を取り直して持ち上げ、ふらふらしながら船へ運びこむインディに、リョカは慌てて片側を持つ。
「あ、まってよ~」
 ビアンカもそんな二人に続いた。

**

 貨物船の二等客室は二段ベッドと簡単なテーブルがあるだけの簡素な造り。ドアを閉めるとむっとする熱気があった。
「こんな狭い場所に押し込められるのか……」
 インディは思ったより粗野で面白みの無い部屋に落胆した様子。少し前まではどんな部屋なのだろうとわくわくしていたのが嘘のようだ。
「あんさん、冒険家でっしゃろ? いつも一等客室つかってん?」
「あ、いや客船は初めてでな……」
「へえ、大陸専門の冒険家で?」
 胡散臭そうに言うシドレーに、インディはフンと言うだけで反論しない。
「僕はこういう風な部屋のほうが落ち着くよ。でも、少しせまくないかい?」
 リョカとビアンカだけならまだしも、シドレーにガロンまでいるとなればさすがに狭いだろう。その疑問にシドレーは指を振って答える。
「ちっちっち、俺らはリョカの荷物扱いだから倉庫やな」
「え? 平気なの?」
「ああ、大丈夫よん。つか、倉庫のほうが涼しいし、広いんやね。前に密航したときなんかはそうやったし」
「ああ、そういえばそんなこと言ってたね」
 レヌール港からポートセルミに移動する際の密航劇。ガロンとシドレーがどんな冒険をしていたのかは知る由もないが、彼のことだから上手くやるのだろう。
「ま、たまにガロンさんの散歩ついでに来るから、心配すんな」
「うん。わかった」
 そう言うとシドレーは荷物を置いて部屋を出る。自分で歩き回る荷物というのも不思議なものだったが……。
「さて、それでは名残惜しいが、俺たちもお暇しよう。またどこかで会うことになるだろう……」
「はい、色々とありがとうございます。インディさん」
 尊大なインディだが、窮地を救ってもらったのも事実。リョカが深くお辞儀をしようとすると彼はそれを制し、代わりに力強く握手を交わす。
「ではな……」
「はい」
 インディ達も部屋を出ると、途端に静かになってしまう。
「……」
「はぁ……なんだか久しぶりだな……」
「何が?」
「船の旅。ほら、僕はいつも父さんと旅をしていたろ? アルパカからサラボナに、オラクルベリー、テルパドール……。父さんは理由を教えてくれなかったけどね」
「うん」
「それに、ビアンカも昔はよく言ってたよね? 私もリョカみたいに冒険してみたいって……」
「よしてよ、昔のことだわ」
 照れくさそうに笑うビアンカは、昔を思い出して目を細める。
「あの頃は色々あったかな……」
「あの頃もでしょ?」
「そうだね」
「今もたくさんある」
「うん」
「けど、リョカ、一緒に一つずつ、乗り越えよう? ね?」
「うん。ビアンカが居るなら平気さ。絶対」
「そうね。私がついていてあげるから」
 ベッドに横になるリョカと、それに寄り添うビアンカ。
 蒸し暑い船室なのに自然と距離が狭まる。手を繋ぎ、腕を絡め、抱き寄せ、抱かれ、そして……。

++

 荷物扱いのシドレーは船の最下層にある倉庫へ戻った。
 ガロンはあくまでもキラーパンサーであるので、木枠の檻に入れられていたが、のんびり昼寝をしていた。
 シドレーが来ると鼻をひくっと動かし、頭を上げて一声なく。
「ガロンさん、元気しとったか? まあ一週間の辛抱やしな」
 檻の前に来てサラミを差し出すと、べろべろと舐めたり齧ったり。
 せわしなく積荷を運び入れる船員を尻目に、シドレーは積荷の天辺で昼ねをはじめた。

**

 船旅の間、リョカ達は例の石ころを削り、希少鉱石を取り出していた。
 たまにガロンの寝床の世話をしたり、散歩をさせて乗客の好奇な視線を浴びたりと、せわしない船旅であった。

続く

彷徨いし者達~目次へ戻る
トップへ戻る

Trackback

Trackback URL
http://13koharu.blog73.fc2.com/tb.php/682-1599d860

Comment

Comment Form
公開設定

プロフィール

小春十三

Author:小春十三
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ

創作検索ぴあすねっとNAVI
dabundoumei
trt
オンライン小説/ネット小説検索・ランキング-HONなび  
リンク予定


二次元世界の調教師様のサイトです。



無料アクセス解析
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。