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テルパドール その3

 王城を囲む塀は重厚な石壁で、高く聳え立っていた。その上部は人が作業できる程度の幅があり、等間隔に櫓がある。
 正門は二重三重の格子門があり、それをさらに鉄の大扉で閉められるようになっている。
 その脇に詰め所があり、見張りの兵士達が日陰で涼んでいた。どちらかというとのんきな警備とも思えたが、それはこの灼熱の大陸に攻め込む軍勢が存在しないから。
 金銀財宝を蓄えるテルパドール大陸といえば欲望を駆り立てるが、戦争を仕掛けるにあたってどこから兵站を補給するのか? 日中の暑さ、夜の寒さ、おまけに砂嵐なども起こる。

 詰め所を前にしたリョカ達に、兵士達がやってくる。
 白いターバンとボレロに身を包み、腰には三日月の刀を構えている。その柄にも金銀がちりばめられており、豪奢な貫禄と魔具の二つの意味があるのだろう。
「止まれ、貴様らは何者だ? 見たところ冒険者風情といったところだが、ここはアイシス様の控える王城だ。観光なら他所へ行け」
 浅黒い兵士はリョカ達を睨むが、剣を抜くほどの威嚇もしない。
「はい、僕の名はリョカ、リョカ・ハイヴァニアと申します。この城に天空の装備があると聞いて、無礼としりつつお話を伺いたくやってきました。どうか、お取次ぎねがいませんか?」
 リョカの丁寧な物腰に兵士達もそれほど警戒はしていない様子。
「リョカ・ハイヴァニアか、噂は聞いている。ラインハットの英雄の一人だな。だが、何故に天空の装備を探す?」
 リョカはインディに促され父の剣を取り出した。
「この剣なんですが、父、パパス・ハイヴァニアの剣にございます。非業の死を遂げた父の遺志を継ぎ、今こうしてその足跡を辿る旅をしております。幼少の頃、僕はこの城で例の装備を見た記憶があります。ただのひとかけらでも良い、父の足跡の手がかりに触れたく、こうしてまいりました」
「ふむ」
 業物の剣を差し出された兵士は、柄にあるGのマークに目を細める。
「何故、Gなのだ?」
「それは……」
「こやつの父の名はグランバニアだからだ」
 リョカが返答に詰まると、代わってインディが告げる。
「貴様もその剣の価値は判るだろう。だが、主なら知りえることも他にある。さっさと上役に話を通すのだな」
 横柄に言うインディに兵はむっとした様子だが、剣の価値も確かなもの。
「しばし借り受けるぞ」
 そう言うと兵士は王城の中へと走っていった。
「ふん、こんな暑い場所で待たせようなどと……」
 インディは詰め所の近くの日陰へ行くと、手で風をあおぐ。
「もう、貴方ももう少し言い方というのが無いのかしら? あんな横柄な態度では胡乱じられるわ」
 おつきの女性は小言と一緒に小さな氷の粒をぶつける。
「言ったろ? 俺には無い才能だと」
「まったく……」
 一際大きな氷の粒を頭にゴツンと乗せる彼女に、インディは冷たさ痛さを同時に噛み締める。
「ねぇリョカ、パパスおじ様、只者だとは思わなかったけど、グランバニアってどういうこと? 東のさらに東の国の名前よね」
「うん。僕も詳しいことはわからないけど……っていうか、なんでインディさんがそれを知ってるんだろう」
「ううん、やっぱり冒険者だから? ほら、パパスおじ様のことならいろんなところで噂になってるでしょうし……」
「それもそうか……」
 そういえばと納得するリョカ。自分の庸兵時代の話も海を渡った砂漠の国にまで来ているのだから、父の名前を知る者がいてもおかしくないのかもしれない。

 そんなこんなでしばらくすると、兵士に連れられ上質なローブを羽織った男性がやってくる。
「はぁはぁ……ふぅ……、暑くて適わないわい……、して、パパス殿の子は何処に……」
 きょろきょろと辺りを見回す男性は、リョカを見ると目を丸くして駆け寄ってくる。
「おうおう、君はリョカ君か……。すっかり大きくなって……、してパパス殿は?」
「ええと、すみません、貴方はどなたでしょうか? なにぶん、こちらに来たのは子供の頃で……」
「ああ、そうじゃったな、無理も無い。わしはカシム。テルパドールで大臣の一人をしているものじゃ」
「それと、父はもう……」
 リョカの沈んだ声にカシムも大体を察した様子で頷く。
「なんと……、そうだったのか……」
 ラインハットでの陰謀のあらかたは彼らも知るところだろう。ただ、パパスの死についてはラインハット側にデメリットしかなく公にはされていない。そのため、彼を知る人の中ではその死について知らぬ者が多いのも仕方のないことだ。
「惜しい人を失ったものだ……。それはさておき、リョカ君も天空の装備を探しているとな? やはり奥方……、君のお母上のことかな?」
「両方ともうしましょうか、僕もまだ手がかりがおぼろでなにがなにやらという感じなんです」
「なるほど。まあいい。アイシス様も話したがっておるし、ささ、来るがよい」
「ええと、アイシス様はこの城の……偉い人ですよね? 僕なんかが……」
「何を言っているんだ。君はパパス殿の子だろう? ならば何を戸惑う必要がある。さ、来たまえ」
「はぁ……」
 まだ納得できていないリョカだが、急かされるままにカシムの後をついていくことにする。
「うむ、いくとするか」
 インディはさも当然とばかりにリョカについて行こうとするが、兵士に止められる。
「む、どういうことだ? リョカは通して俺は通さないつもりか?」
「当然だろう? どこの馬の骨ともわからぬやからを通す必要があるとでも?」
 兵士は剣の柄にこそ手をかけぬものの、かなり警戒した様子で立ちふさがる。
「あの、カシムさん、彼らは……」
「従者まで連れてくるようには言われておらん。とはいえこんなところに居たら干物になる。応接間に通してやりなされ」
 カシムの合図に兵士が頷き、リョカとは別のほうへと案内する。
「インディさん、ビアンカ、またあとでね」
「うん。リョカもしっかりね」
 庶民なビアンカとしては王族と謁見などと恐れ多いこと。むしろほっとしてすらいた。
「ふん、俺を誰だと思っているのだ?」
 一方、インディは当てが外れたとばかりにご立腹。
「だから誰なのだ?」
 先ほどから横柄な彼に対し、兵士は首を傾げつつこぼしていた。


続く

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