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グランバニア山脈

 リョカとシドレーは水汲みと薪割り、風呂の焚きつけ。ビアンカは料理の手伝いをすることとなった。
 さらにそこへ宿賃が掛かるわけだが、山頂付近で屋根と布団のある中で休めるのならそれほど高いことでもなかった。
「しっかしけったいなばあさんじゃの。なんでこんなところに一人で住んでるんやろ」
「さあね。こうして人が来たときに泊めてあげるとか?」
「にしてはなぁ……。高い金とるいうても、何時誰が来るかもわからんのに、普通そんなことするか? もっとこう……、追いはぎとか?」
「追いはぎ? あのおばあさんが?」
 リョカはははっと笑うが、シドレーは真顔のまま。
「いやいや、ばあさんは俺らを油断させるだけで、本当は近くに仲間を潜ませて……」
「ん~、でもそれならシドレーの言う、何時誰がくるかも判らない場所だし、それにここを通るような旅人がお金を持ってるかな?」
「ん~、言われてみればそうやな。俺らも金ないしな……」
 船の代金を割高で支払ってしまったこともあり、手持ちも少なくなってしまった。そもそもリョカ自体みすぼらしい格好であり、またキラーパンサーのような獰猛とされる魔物を連れているのだ。襲う相手としては不相応だろう。
「ま、考えてもしゃーないし、ほら、水汲んでくるで」
 そういうとシドレーは桶を抱えて低空飛行で飛んで行った。

**

 山頂にも関わらず温かい風呂と寝床を提供されたリョカ達は、日中の疲れもあってか夕食後にはすぐに布団に入って高いびきを上げていた。

 ……だが、
「……リョカ、起きて……、リョカ……」
 夜中、肩を揺さぶられ、目を覚ました。
「どうしたんだい、ビアンカ……」
「ほら、聞こえてくるでしょ、なにか、包丁でも研ぐような音……」
 言われて耳を済ませるリョカ。
 シュリ、シュリ……シュリ……イヒヒ……。
 老婆の笑い声と一緒に聞こえる刃物を研ぐ音。
 違和感に立ちあがろうとするリョカだが、身体が鉛のように重い。
「あれ、力が入らない……」
「うぅ、ほんまや、なんか立てんわ……」
「ごろごろ……」
 近くを見るとシドレー、ガロンも同じ様子。
「ビアンカ、君は隠れていて……」
 なんとか昆を杖代わりに立つリョカは、ふらふらと部屋を出る。
「ぐぐぅ、わても……」
 シドレーもガロンと一緒にはいずりながらそれを追う。
「リョカ、私も……」
「いい、君はここに居て。もし何かあったら君だけでも逃げて……」
 そう言いながら隣の部屋へ。
 シュリ、シュリ、シュリ、イヒヒ……こいつは業物さね……。
 さらに大きくなる老婆の声。薄明かりで巨大化した影は剣を構えている様子。
「ここやな」
「うん」
 リョカとシドレーは頷き合い、扉に手を掛ける。そして、がばっと開き、飛び込もうとした。けれど、まだ身体が思うように動かず、よろよろとへたり込む。
「うう、力がはいらへん……」
「く、これは……」
「ん? あんたらどうしたん? まさかこのババに夜這い?」
「アホ言え、婆……」
 老婆の趣味の悪い冗談にシドレーは毒付く。けれど、剣を片手に自由に歩ける老婆と地べたに這い蹲るリョカ達なら、どちらに分があるか。
「ふむ、朝まで起きないように調整していたんじゃがの。まあええわ。どうじゃい? この研ぎ具合」
 老婆は明かりと一緒にやってくると、パパスの残した剣を構える。
 それはかつてパパスが揮っていた頃と同じ輝きを放っていた。
 細かな傷も薄く、まるで鏡のように滑らかな刀身。涼しげな光を放つそれは、老婆が吹き付けた髪の一本を触れただけで切った。
「お主、剣の手入れを怠っていたの? せっかくの業物が台無しじゃの」
 剣を薄い布で拭きつつ、再び明かりに翳す。まだ仕事に曇りがあるのか、老婆は金床と研ぎ石へと戻った。
「おばあさん、父さんの剣を一体……」
 手入れしているのは見てわかった。問題は何故手入れをしているかということ。
「ん? ああ、お主の掲げていた剣が余りにも業物でな。ちょいと手にとって見たかったんじゃよ。じゃからまあ、泊めてやったわけじゃな。いひひ」
 しょりしょりと剣を研ぐ老婆。どうやら危害を加えるつもりは無い様だった。
「んむ、しかしかなりの業物。この輝きはそうそう見ないの。一つは雷神の剣。ミスリル銀が帯びし雷の剣。二つ目はカグツチ。伝説の刀鍛冶がガイア鋼より生み出しジパニズムソード。熱き炎の剣。三つ目は神々の金属オリハルコンに飛び立つ赤き隼の剣。風に舞う剣。これは、そうじゃな、隼の剣に近いかの。おそらく柄に埋め込まれている宝石が風の精霊を呼ぶのじゃろう。いっぱしの剣士ならばそれ相応、素早く動けるじゃろうて。お主、知らんのか?」
「僕は剣を振るいません。魔物とはいえみだりに傷付ける必要はありませんし」
 よろよろしながら昆を見せるリョカ。
「なるほどの。じゃがまあ、手入れはしっかりせんといかんぞ。業物が泣いておるわい」
「僕なりにはしていたんですけど」
「うむ、普段から剣を扱っていない素人仕事じゃの。せめて街についたら鍛冶屋に見せんとの」
「はい、そうします」
「まあ、今日はこのババに任せんしゃい。久しぶりの獲物じゃし、念を入れて仕上げてみせるぞえ。いひひ……」
「よろしくお願いします……」
「おいリョカ、本当に任せてだいじょぶか?」
 シドレーは頭を指差しくるくる回す。すると木槌がひょいと投げられ、頭をゴツン。
「いってぇ……このくそばばあ……」
 頭を押さえるシドレーだが、まだ身体が思うように動かず、すごすごと退散する。
 リョカも不安を抱えつつ、寝所へと戻った。

 しかし、その後もイヒヒ、イヒヒと気味の悪い老婆の声が聞こえていて……。

**

 翌日、青い空の下、リョカ達はチゾット村を目指して出発することにした。
「うむ、また来ることがあれば、格安で研いでやるぞえ~、イヒヒ……」
「ありがとうございます」
 リョカは深くお辞儀をし、ビアンカもそれに倣う。
「け、誰がこんな山奥の妖怪ババを尋ねるっての」
 シドレーの言葉に老婆は木槌を振り上げる。
「ひぃ!」
「ふん、トカゲの分際でえらそうに……。ああ、そのなんじゃ……」
「何か?」
「……いや、まあええわ。この年になるとどうも忘れ物があるみたいに引っかかっていかん。道中険しいこともあるじゃろうが、気をつけてゆけ」
「はい。それではお元気で」
「殺したって死なんじゃろうけどな」
「こら!」
 ビアンカの言葉と拳骨にシドレーは再び頭を押さえることに……。


続く

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