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チゾット村へ

 山脈に穿たれた穴は人の出入りがあるようで道が出来ていた。さらに蜀台と思しき物や、人工的な壁も見えた。
 旧世代の遺跡なのかと思えば、土のろくに整備されてもいない坂もあり、歩くと土がばらばらと崩れることも。他にも大きな根っこがみえていたりと、色々なものがごちゃごちゃにくっついているような場所のようだ。
「なんか道というにも崩れてるし、変な場所やな」
「そうだね。多分、地殻変動でこうなったんだよ。ほら、サラボナの洞窟みたいな」
 蜀台を翳しながら先頭を歩くリョカは、珍しそうに周囲を見る。
「ここはかつて村かなにかだったのかな」
 時折落ちている干からびた球根を見る。土の具合を確かめつつ、まだ生きているであろう根をポキリと折った。その断面はねとっと糸が引き、どことなく芋に似ていた。
「お、なんや? 食える? ばりばりと……あんまし美味くないな」
 独特の匂い、薬臭さがあり、齧ってみると酷く苦かった。
「薬草に近いのかな? 不思議な根っこだね」
 何かに使えるかもと袋に入れるリョカは、ついでに球根もいくつか拾う。
 ズズズ……。
 洞窟の奥のほうから音がした。
 布と地面のすれる音。歩くたびにぐしゃりとなにかがひしゃげるような音がする。
「魔物。ビアンカ、下がって、シドレーはしんがりを」
 リョカは昆を構えると、一行の前に立つ。
 奥から現れたのは人に形を壊した何か。ぼろぼろの法衣は土なのか別の何かで黄ばみ、ところどころ破れ、裾の辺りは擦り切れている。
 緑の宝石のはめられた杖にしがみつくようにして歩くそれは冠を被り、マントを羽織っていた。
 おそらくは高貴な身分の死体なのだろう。悪霊の類は高貴な身分の躯を好むものが多い。
「やぁ!!」
 リョカは一礼した後、思い切りワイトキングに殴りかかる。
 腐敗し、土に侵食されたからだは脆いが、法衣がかろうじて繋ぎとめる。
「グギギ……」
 ワイトキングは杖を翳すと、祈りを込め、閃光魔法を放つ。
「炎のならわいの出番やな!」
 シドレーが前にでしゃばると、翼を広げてそれを受け止め、払いのける。
「へぇ、頼りになるときもあるのね」
 その影に隠れながらビアンカは感心した様子で言う。
「さ、いつまでもゾンビの王様なんぞに構ってる暇ないで!」
 手ごろな石を天井にぶつけると、どさどさっと土が降ってくる。骨の折れたワイトキングはもがくことしかできない。
「えっと、浄化の光よ、彼のモノをヨコシマなる精霊から解き放て、ニフラーヤ……」
 リョカがルビス教会で教えてもらった浄化魔法を唱えると、ワイトキングの身体から黒いもやもやした霧が浮かび、周囲に消えていった。
「へぇ、器用なこと覚えたな。それあればゾンビとかリビングデッドとかいちころなん?」
「ん~、動かれると魔法が不完全になってしまうから、それほど万能ってわけじゃないね。それに、その後放置されたらまた悪霊に魅入られるし……」
「なるほどな……」
 リョカは昆で土壁を殴り、ワイトキングの躯を隠す。こうすることで過去の王も眠りにつくことができるだろう。
「さ、行こうか」
 と、リョカが先を進もうとした矢先、今度はさらに大勢の足音がした。
 金属が石ころとぶつかる音。何か崩れたものを引きずる音。先ほどとは少々違うが、漂う匂いが同じ……。
「え、まさか……」
 続いて出てきたのは欠けた鎧に身を包んだ躯。前に見たランスアーミーよりもさび付き具合が酷いが、かすかに残る紋章に身分の高さが伺える。
「リョカ、これを全部埋葬するん?」
「さすがに無理かな……。ビアンカ、僕の後ろを離れないで!」
 躯兵の大群相手をしていては埒が明かないと、リョカはバギマの印を構えると、群れにむかって竜巻を放つ。
「行くぞ!」
「うん」
 竜巻に巻き込まれて崩れゆく躯兵。それを逃れたモノも振りかぶられる昆や鋭い爪、翼に弾き飛ばされる。
「このまま一気に行くで」
 しんがりを務めるシドレーが追いすがる一体をなぎ倒したのを見て、リョカ達はさらに洞窟の奥へと走った……。

**

 逃走の中、広い場所に出た。土作りの人工物と思しきものがあり、その向こうに光が見えた。
「はぁはぁ、もうすぐ出口かな」
「この場合の出口ってなんだろうな? ん? 人がおるん?」
 よく見ると人工物の上にルビス教会の法衣を纏った男性が見えた。彼は出口らしき光の差し込むほうから来たようで、リョカ達を見ると小走りになる。
「行ってみようか」
「そやな、どうせ戻るわけにもいかんし」
 リョカ達は人工物をぐるりと回って上がりの階段を見つける。向こうからも男性が急ぎ足で来るのが見えたので、声をかけた。
「あの~、すみません。僕らはグランバニアへ行きたいのですが……」
「おぉ、珍しい。キャラバンを組まずにグランバニアを目指すなんて……。道中、危険はありませんでしたか? む? なんと、ドラゴンにキラーパンサーをお連れで。これでは挑み来る躯のほうが危険ですな」
 はっはっはと笑う男性は、はっと気づいた様子で咳払い。
「ええと、グランバニアでしたな。そこを抜ければチゾット村で、反対側の山脈から下山なさればもう一分張りですよ。ひとまず休んでいかれるとよいでしょう」
「ありがとうございます。神父様はチゾット村の方ですか?」
「私はグランバニアのルビス教会の神父です。この山脈の躯達に安息を与えるためにこうしてきております」
「それはそれは、御勤めご苦労様です」
 神父は一礼すると、仕事場へと歩いていった。
「さ、僕らも行こうか」
 光の先へ行けばチゾット村。グランバニアとネッドの開拓地の中間地点とされている場所だ。自然と歩が早くなるリョカとシドレー。けれどガロンがくぐもった泣き声を上げる。
「どうかしたかい? ガロン」
 振り向くと、ビアンカが青い顔をしていた。
「ビアンカ!?」
 驚いたリョカは彼女へ走り出し、その肩を抱く。
「どうしたんだい? 熱は……無い。怪我?」
「ん、んーん、なんだかちょっと眩暈がしただけで……。ほら、なれない登山だし、体調を崩したのかしら……」
 弱々しく笑うビアンカを抱えると、リョカは一目散に出口へと走る。
「リョ、リョカ?」
「心配しないで、すぐに村だから。きっとお医者さんも居るはずだ。すぐの辛抱さ」
 荷物をばらばら撒き散らしながら走るリョカ。シドレーは金目のものだけでもと拾いながら追いかけていった。

続く

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