FC2ブログ

目次一覧はこちら

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

チゾット村で その2

 血相を変えて村へとやってきたリョカに、村人は目を丸くしていた。
 村に来るものといえば商人の一行がほとんどで、旅人が物見優山で来ることなどそうそうない。そして、リョカの勢いに山賊かもと驚いていたものだった。

「特に異常は見られませんね。奥さんもなれない登山で体調を崩されたのでしょう。くれぐれも気をつけてください」
 村医者は宿の一室、ベッドで横になるビアンカの脈をみると、問題ないと頷いた。
「お、奥さんって、私たちはまだ……」
 そんな中、ビアンカが気になったのは奥さんと呼ばれたこと。村医者には二人が夫婦に見えたのであろう。
「あ、あの、僕らはまだ結婚は……」
「ええ、違うんですか? でも、まだなんでしょ? ふふふ」
 村医者はへぇとリョカを見ると、言葉のあやをとってくすっとわらう。
「チゾットは地上に比べて空気が薄いですからね。なれないと貧血、高山病を引き起こしかねません。体調が戻りしだい、山を降りることをおすすめします」
「はい、ありがとうございます」
 リョカが深く頭を下げると、村医者はお大事にと言い、診療所へと戻っていった。
「ごめんなさい、リョカ、また迷惑を掛けてしまって……」
 二人きりになると、ビアンカはすまなそうに視線を伏せ、そう告げた。
「それは言いっこなしだよ。もとはといえば僕が問題を引き寄せるのがいけない。ビアンカだってそんな僕についていくことを選んだんだ。なら、お互い覚悟のうえさ」
「リョカ……」
 ほっとしたのか笑顔で言うリョカが、ビアンカは意外だった。
 いつもなら神妙な様子で繰り返し悔いる彼とは思えなかったから。
「ええ、そうね。うん。それじゃあ今日はしっかり休んで明日にでもこの山を降りるつもりで行くわ! と、いうことで、今日はもうお休み……。ゴメン、なんだかすごく眠くて……」
「ああ、お休み、ビアンカ……」
 そういうのが早いか、ビアンカすぅっと眠りにつく。あまりに自然に寝入ってしまうのが逆に不安になるが、安らかな寝顔を見ているとそんな気持ちもすぐに消える。
「おーいリョカ~!」
 すると荷物を拾いに洞窟を往復していたシドレーが戻ってくる。
「しー……」
「お、わるい悪い……」
 ひとさし指をたてるリョカにシドレーは声を小さくする。
「いやあまいったわ。荷物、拾ってきたけど、鞄が壊れてはいらへんのよ。仕方ないから道具屋に下取りしてきたん。二足三文かと思ったけど品薄なんやて。買値ぐらいはどうにか確保できたわ」
 そういって小銭をじゃらじゃらと見せる。どうやらあまりの品薄に翼竜のことなどどうでもよいらしい。
「へぇ、それは良かったね。でも、商隊はここにも来るはずじゃないのかな?」
「ああ、それがどうにもな。ほら、俺が空から越えようとしたとき、ダックカイトの群れが居たっていうたやろ? あれがどうにも曲者らしくってよ。メダパニやマヌーサをかけて、商人達を追い返しちゃうんだと」
「混乱魔法か。でも、品薄は最近なんでしょ? なら、これまではどうだったんだろう。何か対策とかなかったのかな?」
 リョカはかつてオラクルベリーでキャラバン隊の護衛をしていたときを思い出す。
 オラクルベリー近辺には砂を撒き散らすスカンクの魔物がおり、その対策としてゴーグルをつけること。
 東の港近くに出没するウサギの魔物の睡眠魔法には蓬を乾燥させたものを口に含み、眠気を堪えた。
 他にも魔力を奪う人形相手には魔法使いを同行させないなど、地域ごとに対応策があった。
「いや、それが最近になって急に魔法を使うようになったんだってよ。たいして強くなったわけじゃないみたいやけど、魔法が魔法だけに皆困ってるんやと」
「そうか……。なにか原因があるのかな?」
「魔物の動きが活発になったとか?」
「いや、そういうわけじゃないと思うんだ。もっと別にあるのかも……」
「ふうん。ま、今考えてわかることでもないじゃろうし、俺らも早いとこ寝て明日に備えようぜ」
「うん、そうだね」
 リョカは頷くと、ひとまず食堂へと向かった……。

**

「おはよー!!」
 次の日の朝、ビアンカの声がリョカを起こす。
「ううん、おはよう、ビアンカ、もう体調はいいのかい?」
 昨日の今日ということもあり心配するリョカに、ビアンカは満面の笑顔と元気一杯とがっつポーズをする。
「そう、ならいいんだ。山頂は空気が薄いってお医者さんも言ってたし、早いところ下山したほうがいいからね。少し無茶をするかもしれないけど、いこうか」
「ええ!」
 リョカの提案にビアンカはこくりと頷く。
「おお、もう朝? 早いっすなぁ……」
「がぅ……」
 そんな二人につられて起きてきたシドレーとガロン。まだ眠いのか欠伸をしていた……。


「それじゃあこれで失礼します。ありがとうございました」
 リョカは下山の前に村医者に挨拶をしていた。
「ああ、気をつけて。道中には危険な魔物もいるからね……、ああ、そうそう、お土産にこれをあげるよ。もし道に迷ったら、これの赤い矢印が示すほうへいきなさい。出口の方向だから」
 村医者が取り出したのは、赤と青に色分けられた球体で、それを弓じょうのものが二つ止めたものだった。不思議なことにそれはどう持っても一定の向きになるようだった。
「お、コンパスやん。もらってええの?」
 シドレーはリョカからそれをひったくると嬉しそうに眺める。
「へぇ、君は竜のわりによく知ってるね。コンパスの材料の磁石はここでよく取れるんだ。お土産屋でも売ってるよ。とはいえ、磁力も弱いから直ぐ使えなくなるけどね」
「ふうん。まあええわ。あんがと」
 シドレーは楽しそうにそれを眺めている。
「へぇ、不思議な石ね。なんで一定の方向なの?」
「ん? ビアンカはんはコンパス知らんの? 簡単に言えばこれ、磁石でんねん。んで、北にかたっぽが引っ張られる。だから一定になるんやね」
「ふうん。なんか不思議ね」
「まあ、なんで北に引っ張られるかって言われたら、不思議だとしかいえんけどな」
「もしずっと北に行ったらどうなるの? アルパカから北に行ったらテルパドールにつくわよね? 北を向かない時もあるのかしら?」
「いやいや、そりゃあないで。磁石にしたがっていったら北極でぐるぐる回るんとちゃう?」
「北極?」
「ああ、レイアムランドやろ?」
「レイアムランド?」
「そうやろ?」
「どこ? 聞いたことないけど」
「え?」
「え?」
 不思議な様子で向き合うリョカ一行。
「いや、だから北極はレイアムランドで……、南極がロンダルギアで……」
「そんな場所あるんだ。知らなかったよ……」
 感心した様子で言うリョカに、シドレーはさらに困惑した様子。
「いやいや、皆知っとるやろ? 俺かて習ったし、本にもあるで? リョカもビアンカはんもわいみたいな子竜をからかいなさんな」
 リョカの肩をばしばし叩きながら言うが、彼はいたって真面目な様子。
「いや、本当に知らなかったから……」
「……あれ? 俺のほうがおかしいん?」
 その様子にシドレーはだんだん自分のほうが信じられなくなってしまう。
「ま、まあ、とにかく行こうか。まずはグランバニアへ!」
「お、おう」
 いざ目的地へと行こうとするリョカ。けれどシドレーはおかしな疑問を抱えてしまって……。

続く

彷徨いし者達~目次へ戻る
トップへ戻る

Trackback

Trackback URL
http://13koharu.blog73.fc2.com/tb.php/689-aafd6fab

Comment

Comment Form
公開設定

プロフィール

小春十三

Author:小春十三
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ

創作検索ぴあすねっとNAVI
dabundoumei
trt
オンライン小説/ネット小説検索・ランキング-HONなび  
リンク予定


二次元世界の調教師様のサイトです。



無料アクセス解析
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。