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グランバニア その1

 森の開けた場所に関所が見えた。石造りの高い塀が連なっており威圧感を与えるものだ。物見櫓には兵士が構えており、不審な旅人に目を光らせていた。
「そこの旅の者、止まれ。ここより先はグランバニア王国領内。不審な者を通すわけにはいかない」
 関所の門のところに居た兵士達は槍を交差させ、通せんぼの意思表示をする。
「僕は、僕たちは旅の者でして、わけあってグランバニアを目指しておりました。どうか入国をさせてください」
「ふむ、入国には審査が必要となる。見たところネッドの開拓地の者でもチゾット村の者でもないようだな。一介の旅人がグランバニア山脈を越えるとはにわかに信じがたい」
 口調は厳しいものの、兵士のリョカを見る目は穏やかだった。というのも彼の髪、目が理由だ。兵士達の髪は西国ではみられない黒髪であり、瞳も黒く、リョカと同じだった。おそらく同郷のものと判断したのだろう。
「わかりました。どうすればよろしいでしょう」
「うむ、何か素性のわかるものがあればよいのだが、お主はこちらのほうの人間だろう? 名前はなんという?」
「ぼ……私の名前はリョカ・ハイヴァニア。父をパパス・ハイヴァニアと申します」
「パパス!? パパス・ハイヴァニア……」
 パパスの名前に兵士はぎょっとした様子で眉を顰め、ひそひそと話し出す。
「いや、まさか……。パパス殿の子でリョカ?」
「だが、ハイヴァニアと名乗っているではないか?」
「偽名のはずだ。先代は地位と共に奥方様の姓を名乗っていた。それが確か……」
 じろじろとリョカを見る兵士達。不審感と驚き、そして期待を込めた視線。
「いや、ここで論じてもしょうがあるまい。かといってザル警備というわけにもいかん。そうだな、ペドロ殿をお呼びしよう。彼なら従者としての暦も長いしわかるだろう」
「はっ」
 比較的若そうな兵士が敬礼をすると、急いで城下町へ馬を走らせる。
「こちらにてしばし待たれ……」
「はぁ……」
 兵士に言われるまま休憩所へと案内されるリョカ達。
「どうしたんだろう」
「さあ? んでもリョカの父ちゃん、かなり重鎮ぽいし、それ関係じゃない?」
「ああ、なるほど。もしかして騎士団長とか親衛隊長とかかしらね」
「ありえるな。うでっぷしがとんでもなかったし」
 そんなことを話しながら待つことしばし、はや馬に乗せられてやってきたのは中年太りした栗毛の男性だった。
「ぼっちゃま!」
 聞き覚えのある声にリョカが振り向く。すると目を丸くしていた男性はわなわなと口を震わせ、言いたいことも言えずに涙を零す。
「サンチョ!」
「サンチョさん」
「おっさんだ。生きておったんかい」
「うおおおお!! ぼっちゃま~!!! まさか生きて再びお目にかかれる日がこようとは! このサンチョ、まだ天に見放されてはいなかったのですね。ルビス様、時のめぐり合わせに感謝いたします。ダーマ様、この運命にどれほど感謝すれば!」
 二つの信仰対象に祈りを捧げるサンチョはリョカを前に膝をおり、おいおいとうれし泣きをしていた……。

**

 馬車に乗せられ城下町へ向かう一行。まだぐずつくサンチョにリョカは「おおげさな」と宥めていた。
 謀事に巻き込まれヘンリーと共にさらわれたこと。パパスに逆賊の汚名が着せられたこと。総本山での奴隷の日々。そこから抜け出し、庸兵として日暮をしていたこと。再会したヘンリーと共に父の汚名を晴らしたこと。西国へ渡り、結婚騒動に巻き込まれたこと。再び父の足跡を追い、グランバニアを目指したこと。
 道中、揺られながら、リョカはサンチョに聞かせていた。
「なるほど……。すっかりたくましくなられたと思えばそんなことが……。しかし、何故すぐにグランバニアへお戻りになられなかったのですか?」
「えと、剣を届けることがあったから。というか、僕は父さんがグランバニアの人だって知らなかったし」
「ああ……、そういえば……」
 ふと思い至ったサンチョはあごひげをかく。
「旦那様も奥方様を探す旅の中、身分を隠すためにハイヴァニアを名乗っておられましたからね」
「うん。実のところ、僕は父さんのことをほとんど知らないし。ねぇサンチョ、いったい父さんは何者だったんだい?」
「ふふふ、そうですね。気になりますか。でしょうね。しばらくしたらわかります。旦那様の正体が」
「イジワルだな、サンチョも」
 ふふっと笑いながらリョカは背もたれに深く身を預けた。
 窓から見える景色。そこに見覚えが無いのが少し寂しかった……。

続く

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