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グランバニア その4

 ラインハットから書状が届いたのはそれから一週間後のことだった。
 先の戦における謀事の謝意と慰謝として技術者の協力を申し出る内容だった。
 そこにはリック王の署名につらなり、ヘンリーの名前があった。
 さらにそこにはリョカ・ハイヴァニアの助力により国難を退けることができたとあり、他にも彼を讃える言葉が盛られていた。
 またリョカは国内に居る魔物使いを集め、マタンゴの育成を要請した。
 一説によるとマタンゴの胞子がバッタ系も魔物の腹部にある気穴を塞ぐことで呼吸困難となるらしく、結果として天敵となるとのことだった。
 また、ミラーコーティング技術によるミラーシールドの使用でグランバニア山脈に出没するようになったダックカイトのメダパニも弾くことができるようになり、安全面の改善も図られた。

「……ふむ、まさかとは思ったが、リョカ君よ。立て続けに国難事項を解決しるとはな。感服したよ」
 再び謁見の間に通されたリョカに、オジロンはそう告げた。ドイル大臣も表情こそ崩さぬものの、焦りのためか冷や汗が見えた。
「いえいえ、どれもこれもたまたま知っていただけのことですよ。それにヘンリーから助力を得られたのだって偶然でしか……」
「そしてリョカ君、君が例の戦争で兄の無念を晴らしていたとはな。それに各地で起こる難病の魔法的解決策を発見していたとは……」
「それは、多分、まだです。奴らは……」
「リョカ、今はまだ内密にしておけ」
 何時の間にやら戻ってきて、こっそり謁見の間に侵入していたインディはリョカに釘を刺す。
「真相を知るとはいえ、表立って戦うには国だと危険も伴う」
「そうなんですか」
「ああ、どの地方にも奴らの根っこがはびこっているからな」
 光の教団のこととなるとインディもリョカも顔つきが険しくなる。
「ふむ、まあよい。してドイル大臣よ。リョカはこうして国難事項の解決策を講じてきてくれた。おそらくはこれまで世界を見て回ってきた経験が故だろう。こうして国に閉じこもり、上げられてきた数字に右往左往するだけの私よりもずっと王に相応しいと思うのだが?」
「はい、この若者は確かに解決策を講じてまいりました。ですが」
「ほう、まだ食い下がるというのか」
 まだなお何か不満を探しているドイル大臣に、オジロンは愉快そうに笑っていた。彼もこのしかめっつらの大臣に久しぶりに一泡吹かせたことが楽しかったようだ。
「この若者の知恵、人脈は確かに素晴らしいものでしょう。ラインハット王子ヘンリーと共に賊を討ち、サラボナの名誉市民ルドマンからの親愛も厚い。けれど、ここはグランバニアです。その伝統に従い、王家の証を手に入れてきてからでも遅くはありますまい」
「王家の証じゃと!? いや、あそこは既に何十年も使われておらず、魔物の居となっている。第一、わしとて王家の試練を受けには行っていない」
「オジロン様は先代の弟というゆるぎない確証があります。けれど、この若者には国民に示すべく証もない。もしかしたらラインハット、サラボナと通じた傀儡として先代の息子を名乗っているとも限りません」
「彼の髪は我らグランバニアの民に多い黒髪だ。こうして無事に戻ってきたものを、たとえリョカでないにせよ同胞の若者をただ危険な場所に差し向けるというのは……」
「くくく、むしろリョカにとってはそのほうが楽な課題だろうに。ドイル大臣殿。リョカのオラクルベリーでの評判は知らぬのですかな?」
「先代の王、パパス殿の子とあらば、当然でしょうな。ですが、あえて王家の試練を踏破することで、民に納得させることもできるでしょう」
 あくまでも国民と嘯くドイルにオジロンもインディも、そこまで頑なに王家の試練をもちだすことに何か意味があるのだろうかと呆れた様子だった。
「ま、まぁ、それじゃあとりあえずその王家の試練を受けてくればよいのですね? わ、わかりました」
 だが、リョカはそれに応じるらしい。
「リョカ、本気でそんな面倒なことをするのか?」
「まぁまぁ、それに、僕みたいなみすぼらしい格好の旅人がいきなり王様っていうのも納得できるほうが変だよ。ねぇシドレー?」
「ん~、まぁ坊主は住所不定の日雇い労働者やしな……おまけに俺やガロンさんみたいなの連れてるし」
「ははは……。とにかく、僕がその試練を受けて戻ってくれば良いのですね?」
「うむ。まぁ、そうなれば大臣も文句はあるまい?」
「ええ、王家の証を手に入れて戻ってこられましたら、私も異存はありません」
「それじゃあ早速……」
「ぼっちゃまぁ~~!!」
 リョカがその場を去ろうとしたとき、階下からサンチョの声がした。そしてドアを開くなり、リョカを目指して駆け出してくる。
「どうした、騒々しい……」
「はい、それが、ビアンカちゃんが、おめでたで……」
「おめでた? 誕生日とか?」
「違います。あかちゃんですよ、あかちゃん!」
「え? ビアンカに!」
「おい、リョカ……」
「坊主……」
「あ、ああ、そういえば……」
 シドレーとインディの視線にリョカは思い出した様子で頷く。彼女とはサラボナを発つときに一度……。
「どうにも月のものが遅れているとのことでお医者さんに伺ったところですね、いやあおめでたい!」
「ふん、となればなおさら王にならねばな? まさかビアンカを孕ませておいてフローラと結婚するわけにもいくまい?」
「あ、うん……そうか……そうだね……はは……」
 まだ当事者として自覚が薄いのか、リョカはぼんやりした様子。
「ま、とにかくじょうちゃんのところ行こか」
「そうだね……。それじゃあオジロン王、僕はこれで……」
 シドレーに促され退出するリョカ。
「ドイル殿、気を落とさずにな」
「リョカ殿に子が儲けられたのなら、それはお祝い事でしょう? 気を落とす道理もありますまい」
 皮肉たっぷりに言うインディに、ドイルはいささかも顔色を変えなかった。


続く

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