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グランバニア_その5

「ビアンカ!」
 城内の医務室に飛び込んだリョカはベッドで寝ていたビアンカの手を取る。
「リョカ!?」
「君、僕の子を……」
「……ええ」
 恥ずかしそうに視線を伏せるビアンカを、リョカはぎゅっと抱きしめる。
「ビアンカ!!」
「リョカ……」
 ここへくるまで不安と混乱が心を占めていたリョカだが、こうして彼女の顔を見るとそれらはどこへやら。こみ上げる喜びと自身を奮い立たせる気持ちが強くなる。
「ビアンカ、落ち着いて聞いてくれ。僕はこれから王家の試練に行く。そこで王家の証を見つけてくれば、僕ははれて父さんの子だと証明できる。そうなればたとえルドマンさんだって僕らに手は出せないさ。君とのことは邪魔させない。そのために行ってくる。待っていてくれるね?」
「う、うん……。わかった」
 リョカの抱擁にビアンカも応じ、頷く。
「それじゃあ行くね」
 それが解かれることに若干の寂しさを感じつつ、笑顔で彼を送り出したかった。
「行ってらっしゃい」
 けれど、目じりを走るそれを隠すことは出来そうになかった。

**

 ガロンの背に乗り草原を駆ける。それに追いつくために必死で空を舞うシドレー。
「リョカ、急ぎすぎちゃうか!?」
「いてもたってもいられないんだ」
「やけど、準備ってもんがあるやろうに」
「ビアンカをこれ以上不安にさせたくない。今までもずっと、彼女を一人にしてきたから……だから!」
「まぁ、そうやな……」
 シドレーもそれに頷くと、リョカを掴み、ぶわっと上昇する。
「うわ、シドレー!?」
「空から一直線のほうが早いで~!!」
「そうだけど、僕は……!!」
「がたがた抜かすな! パパさんよう!」
 浮遊感だけは苦手なリョカ。けれど最善策と目を瞑っていた……。

**

 グランバニア北東に位置する遺跡は旧世代からのものらしい。
 ところどころ削れた精霊文字にはもう効力もなく、門を守る精霊の姿もない。だが、さび付いた門には施錠がされているらしく、新しい鎖とで厳重に守られていた。
「へぇ、開錠呪文対策されてるんか……。それにこの鍵、泥棒対策にしては大げさやな」
 シドレーは首を傾げながら文字を削る。するといくらか残っていた精霊もお役御免と去っていくのが見えた。
「シドレー、どいて」
 いわれるままわき道にのけると、リョカは得意の昆をぶんぶんと回し、一足飛びで門に飛び掛ると、空中でさらに回転させて勢い良く錠に昆を打ち付ける。ガギンと鈍い音を立てて砕ける錠。門はキイイと音を立てて動いた。
「さ、行こうか……」
「はぁ……、なんちゅう力技……。とはいえこいつは専用の鍵か魔法が無いとあかんやろうしな」
 先を行くリョカにおいていかれまいと、シドレーとガロンも続いた……。

++

「無駄になったな」
「ええ。でも、クレバーとはいえないわね」
「ああ」
 光の屈折を歪めて姿を隠す二人は、目の前で破壊された錠前に呆れつつ驚いていた……。

**

 門を潜り道なりに進むと、扉が四つ見えた。おそらくこれが最初の試練なのだろう。
「何か罠があるのかな?」
 明かりを片手に扉を調べるリョカ。
「よし、せっかくやから、俺は左の扉を選ぶぜ」
 けれどシドレーはかまわず一番左の扉を開けてしまう。
「ちょっとシドレー?」
「なーに、様式美、様式美」
 ずんずんと進むシドレーに仕方なくついていくリョカ。すると大きな広間に出た。
 広間の奥には物憂げな四枚の絵があった。
「なんだこれ?」
「さあ。この部屋は行き止まりみたいだし、戻る……」
 振り返るとやはり四つの扉が見えた。
「なんだ、どの扉でも一緒なんじゃないか。焦って損した……」
 するとここでもシドレーは左の扉をほいほい開く。
「せっかくやから左の扉を選ぶぜ!」
「シドレー、それって何?」
「ん? まあ、遺跡を巡る時のお約束やな」
 そのままずんずんいけばもと来た入り口に戻るはず。が、空気に外の草の匂いがなく、湿った黴臭さがあった。
「どういうこと?」
 もとの道のはずが、そこには下へ向かう階段があった。
「ん~、扉をあけることが何かのスイッチになってるんかな? まあ、ええやろ。ほないこか」
「そうだね。進むしかないんだ」
 リョカは松明を持つ手に力を込めて階段を降りた。

**

 階段を降りたところでさらに黴臭さが強くなった。湿気の篭る嫌な匂い。周りの壁にコケがあるところを見ると、水の流れがあるのだろうか?
「おかしな遺跡だね。人が住んでいたようにもみえないし……」
 入り口付近と違いT字路が見えたりもしたが、行き止まりが目視できるためか迷う心配もない。数分と動きまわることで階下へ降りる階段とおかしな取っ手のある壁、そして大きな岩を見つけることができた。
 ひとまず階下へ降りるも、これまた広間に出ただけで他になし。念の為壁を調べるもコケが生えていたり砂がたまっていたりするだけでめぼしいものはなかった。
「なんだろうね。行き止まりにしては変だし、もう一度上に戻ろうか?」
「ん? いやいや、あの取っ手が怪しいで? 何かあるかもしれないし、引っ張ってみるのが人情やろ」
 そういうとシドレーは壁に不自然につけられていた取っ手を引っ張る。
 するとズグググと音がして壁ががたがた震え始める。
「ん、なんかすごく嫌な予感がするんだけど……」
 壁の隙間からちろちろと水が噴出し始める。
「なはは、いわゆる罠ってやつやな?」
 ズズズ……キシッ……ドバァアア!!
 次の瞬間、石壁が門のように開き、大量の水が流れ出てきた。
「!?」
 咄嗟のことにリョカは昆を壁に突きたて、壁と天井に張り付く。ガロンは水に追いかけられるままにわき道に飛び込む。一人翼で難を逃れたシドレーは開いた壁のほうへと行ってしまう。
「おお! リョカ! 正解やで! こっちにきてみい! 階段あるで!」
「いけるなら行ってるよ!」
 今しばらく水が引くまで、リョカは昆にしがみつくしかなかった……。

++

「まったく、隠れているこちらの身にもなって欲しいわ……」
「ああ、せっかくの試練も運と力技で突破するとはな。いかにもリョカらしいが……」
 大岩に隠れて水が引くのを待つ二人。ただ、口調の割りにお付の女性は嬉しそうだったりも……。


続く

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