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グランバニア_その10

「ちょっと! それどういうことよ!」
 デボラに首を絞められるシドレーは、翼をはためかせて抗議する。
「ぐえ~! くるちぃ! 離して~」
「社長、それではシドレーさんが死んでしまいます」
 ルカが執り成すことでようやく解放されるシドレー。げほげほいいながら額を拭う。
「いやまぁ、ほら、早いもの勝ちというか、まぁ、ああ見えてリョカってもてるし、俺の知ってるころから片手じゃ足りないくらい女の子はべらしてたんよ?」
 本人が聞いたら誤解だといいたくなる文言に、デボラはさらに怒り心頭。
「もう! どうなってるのよ! フローラとのことは父さんが悪いけど、でも私の知らないところで女を囲うなんて! 赦せない! 抗議してやるんだから!」
「いや、まあ、ビアンカはんも身重やし、デボラはんもそういうことやし、あんまし騒がないように……」
「うっさい!」
 穏便に計らうようにもとめるシドレーだが、身重のデボラはずんずんと廊下を進む。目指すはビアンカが居る医務室だ。

「たのも~!!」
 まるで道場破りがごとく文句で医務室へやってくるデボラ。新たな負傷兵の手当てをしていたビアンカは、彼女を見て驚いていた。
「ええと、妊婦さんですか? ひとまずこちらへ……」
 マタニティドレスのデボラを立たせたままではまずいだろうと、近くのベッドに促す。
「貴女がビアンカ……」
 デボラはビアンカを見た瞬間、なぜか彼女がそうであると確信していた。
 そして不思議と怒り(筋違いともいえるが)が消え、代わりに懐かしさを覚えた。
「はい、私がビアンカですが、あの、貴女は?」
「私はデボラ・エド・ゴルドスミス……。あの、ビアンカさん、いきなり失礼ですが、どこのお生まれで……」
「生まれ? ええと、私は孤児でして、物心つく頃にはアルパカの宿屋の娘となっておりまして、正確な場所はわからないんです……」
「そう……、その、ちょっと瞳を……」
 デボラはビアンカの頬を寄せると、瞳を覗き込む。
「あ、あの?」
「青い瞳……、私と……?」
 デボラは手鏡を取り出すと、自分の瞳を覗きこむ。
「似てる……。けど、どうして?」
 デボラは自分の出自が不明であることをしっている。彼女のミドルネームであるエドは彼女の産着に残っていたものだ。
 もしかしたら生き別れの父母兄弟がいるのかもしれない。探すことこそしてはいないものの、縁があればと心の隅においていた。
 そんな気持ちが今、ふと心に灯った。
 だが、ビアンカの肌は自分よりも白く、髪も金髪、自分は赤みがかった黒。
 はっきりと他人とわかるのに、それなのにフローラよりも、義理の両親よりも近いなにかを感じた。
 その決め手が瞳。二人とも同じ色をしていた。
「あの、デボラさん? 機嫌が優れないようでしたら、産婦を呼んでまいりますが?」
「あ、いいの。貴女のほうこそ妊娠中でしょ? なら座って休んでなさいよ。手当てならフレッドがいるわ。フレッド? 今は緊急みたいだし、お願いできるわね?」
「ええ、血を見てせざるは勇なきなり。なんなりと……」
 デボラの声に白髪の老人は頷き、医者に指示を求める。
「ん~?」
 血の雨が降るかもと恐れていたシドレーだが、どうやらそんな不安も杞憂らしく、デボラはビアンカに色々と尋ねていた。
「なんでですん?」
「さぁ?」
 それはルカにもわからない。
「ルカ! 貴方は強いんだから、ぼうっとしてないでリョカの手伝いをしてきなさい! シドレー、あんたも!」
 入り口で様子を伺っていた二人に檄を飛ばすデボラ。二人はむしろそのほうがありがたいと、城の上、轟音鳴り響く屋上へと急いだ。

**

 上空より襲ってきたのはリョカの見覚えのある魔物だった。
 一人は幼少の頃、氷の城で氷の棺に閉じ込められた氷の女王。
 もう一人は死の火山で出会った炎の女王だ。
「しぶといね! 大人しく炎に焼かれてしまえばいいんだよ!」
 バルコニーを煽る炎に、兵士達はばらばらに逃げる。
「バギマ!」
 リョカは迫り来る炎を風の防壁で相殺してしのぐ。
「ふん、姉さんの炎なんかじゃ無理さね。ここはあたしのツララで串刺しにしてやるよ!」
 空中に出現する大きなツララは、人間三人分ぐらいはある大きなもの。あれから随分と強力な魔力を得たのだろうか。
「死にな!」
 リョカ目掛けて投げられる複数の氷の槍。大きさが大きさだけに大きくかわすことでしっかりとかわす。
「……っ!」
 さすがに連発は無理だろうと踏み、一気に距離を詰めて反撃に転じるリョカ。
「だぁ!!」
 大きく振りかぶった昆を叩きつけようとすると、小さな槍のような氷が向けられ、一斉に射出される。
「ひゃはは! くらえ! ヒャダルコ!」
 リョカは昆の中央にある紐を緩め三本にバラけさせる。前の部分を回転させて弾く。そして再び中央の紐を締め、一本に戻すと氷の女王の前に突きたて、それをジクに回転し、顔面に蹴りを放つ。
「ぐはぁ!」
 直撃を受けた氷の女王はバルコニーを滑る。
「はっ、大口叩いていたわりに情けない妹だね。しかし、貴様! あの時の女はどうした? あたしはあいつに用があるんだよ」
「……?」
「ま、隠していても勝手に見つけにいくんだけどね。そんときはあんたの黒こげの死体でも見せてやろうか?」
「ビアンカのことか? させない!」
 リョカは昆を握り締めると、炎の女王へと駆けて行く。
「だぁあああ!!!」
「ふん! そんなのきくかよ!」
 昆の一撃は以前と同じく炎の身体を揺らぐだけ。逆に燃え盛る火炎を放たれる。
「く!」
「邪魔だ!」
 炎が放たれる寸前、リョカを真横にふっとばす一撃。そして周囲に張りつめるびりびりした空気。
「ライデイン!」
 周囲に見たことの無い精霊が集まり、現れた銀髪の剣士の手から雷の紫の光が放たれる。
「ぐわっ!! こいつ、デイン系!? 勇者か!」
 炎の女王も魔法まで無力化できるわけではないらしく、感電して膝を着く。
「貴方は、テリーさん?」
「暫くだな。しかし、一体なんの騒ぎだ? 奴を追っていたら城に魔物が攻め入ってるとは……。まぁいい。見ない魔物なら我が従魔にしてやろうか」
「ふん、何が従魔だ。色男さん、一体どうなるっていうんで?」
「俺のサーカスショーの出し物にしてやるさ。そしてルビスの前で踊るのだ。光栄だろ?」
「はん! 炎の女王をおいてサーカスだ? ふざけんじゃないよ! メラミ!」
 バカにされたことに立腹した炎の女王は両手一杯の炎を掲げると、テリー目掛けて放つ。
「テリーさん!?」
「前言撤回だな。性格に難がありすぎる。我が麗しの姫君には毒だ」
 テリーはフバーハを唱え周囲全体を光の衣で包む。
「リョカ、俺のフバーハで受け止めている間に風の魔法で炎を吹き飛ばせ!」
「は、はい! 荒野を駆ける自由な風よ! 我が願いに友好の情を持って応えよ! バギクロス!!」
 リョカは印を組み、丁寧に詠唱し、風の最高魔法を放つ。
 ぐおおぅっとあらぶる竜巻が二つ、フバーハに遮られるメラミを飲み込むと、そのまま上空に吹き飛ばす。
「ほう、あれから随分とまた進歩したものだな?」
 感心した様子で言うテリーにリョカは照れ笑い。
「おっと、おどけている場合でもないな……」
 向けられた氷の槍を雷神の剣で薙ぎはらい、敵に視線を戻す。
「リョカ~!!」
「リョカさん!」
 するとそこへさらなる援軍、リョカと赤みがかった黒髪の青年がやってくる。
「シドレーと……ボルカノさん?」
「おう、こいつはルカって言って、まぁなんだ。いろいろあって下にデボラ……アルマはんが来てるで!」
「アルマさんが!?」
 ある意味バッドタイミングなシドレーの報告に胸が痛む。かつて心を奪われた相手、一夜限りの火遊びと自嘲気味に封印していたアルマ。恋のようなどきどきが芽生え、一方で何故に今になってという気持ちがある。
「それよか、なんでこいつらおんねん? あの時……ええと、どうなったっけ?」
 シドレーも鉄の塊になったあとのことはよく覚えていないらしく、炎の女王を見て首を傾げるばかり。
「貴様、あの時の火トカゲか!? きぃいいい!! 貴様を殺して雪辱する!」
 氷の女王はシドレーを見て怒りのあまり、魔物の顔になる。
 馬鹿の一つ覚えというか、再び上空に氷の塊を作ると、それをシドレー目掛けて放つ。
「おいおい、そんな悠長な攻撃あたるかいな……」
 とはいえかわせば背後に被害が及ぶと、燃え盛る火炎で相殺する。
「ふん、能無しね。あんたは大人しくあたしの活躍を見ていればいいのよ!」
 今度は大きな炎がシドレーを襲う。
「残念やけど、ここ死の火山じゃないのよねん。炎の精霊もたいしていないし、その程度じゃ尻尾も焦げないよん」
 シドレーはそう言うと両手で印を組み、光のカーテンを作る。
「ん? なんだこれ? 俺が魔法?」
 それは無意識の動作らしく、自分自身驚いてしまい、魔法の発生が遅れてしまう。
「ぐわぁ!」
「シドレー!?」
 炎の直撃を受けたシドレーにリョカは慌てて彼のほうへ駆ける。
「あ、大丈夫大丈夫……。いきなりなんか出たから、ちょいと焦ってな。そもそも俺竜やし、こんなん平気……」
「まったく、マヌケな竜も居たものだな」
 竜相手に心配などしていないテリーもさすがに呆れ顔。彼は相手にしていられないと、邪魔者二人に挑む。
「とにかく、貴様らは邪魔なんだ。本命到着の前に退場してもらえるか?」
 テリーは駆け出すと、剣に雷を纏わせ、炎の女王を一刀に伏す。
「ぐぇええ!!!」
 魔法をともなう攻撃には弱いらしく、半身を切り裂かれた女王は身体を構成する炎が暴走する形。
「もう一つ!」
 さらに氷の女王へと切りかかるテリー。女王も氷の壁を発現させるが、その壁ごときりはらわれる。
「ぐはぁ!!」
 雷が身体を走り、がくがくと震える。女王は身もだえしながら必死に逃げようとはいずる。
「さすがテリーさん……」
 応援に駆けつけたのに見せ場もないシドレーにルカ。テリーの健闘を称えつつ拍手していた。
「くだらんな」
 とどめを刺そうと剣を片手に女王に歩み寄るテリー。
 小さな点が足元に見えた。それはだんだんと大きくなり、バルコニーに影をなす。
「なんだと!?」
 颯爽と翻すテリー。放られたのは岩の塊……とおもいきや、爆弾岩だった。
「まさか! 全員、退避!」
 テリーの声に兵士達は各々隠れられる場所を探す。テリーはアストロンを唱えると、全身を鉄の塊にする。
「やべ! おい、リョカ、俺につかまれ」
 シドレーはリョカ、ルカを掴むと翼を広げてバルコニーから飛び出す。
 次の瞬間、大きな爆発音と光が放たれた。

続く

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