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グランバニア_その11

「サンチョ様、配備、完了いたしました」
「うむ、目標、敵騎兵団、投石器!」
 サンチョの号令に魔法部隊がマホカンタを発生させる。そこへ中級閃熱魔法を放ち、増幅させ、方向を一つにさせた。
「ファイエル!」
 城壁から放たれる閃光の筋。荒野上空を駆けると、波状に並んだ投石部隊目掛けて照射される。そして巻き起こる爆発。積んでいたものが爆発したのだろう。けれど長距離照射では威力が分散され、精度もさがり、全てを打ち砕くとまではいかない。
「やはり爆発物か。当然か。弓兵、火矢をつがえ、空を破るつもりで撃て!」
 後衛に戻した弓兵が一斉に火矢を放つ。
 敵方から射出された物にぶつかると、空中で爆発が起こる。しかし、ごく少数がそれをかいくぐり、城へ降り注ぐ。
 揺らぐ空気、黒煙の上がる城。
「不覚!」
 こぶしを地面に叩きつけるサンチョ。けれど、悔やむ暇もなしと自身も火矢を構える。
「敵の目的は直接の城攻めではない! 弓兵は投擲物を狙え。魔法部隊は投石器を破壊せよ」
 サンチョは今すぐにでも城へ駆けつけたい気持ちを堪え、檄を飛ばした。

**

 間一髪、シドレーによって上空へ救い上げられたリョカとルカ。
「ふい~、爆弾岩の自爆か……。メガンテやったらここいら一体更地やったな」
「ありがとう、シドレー」
「おう、しかし……」
 空を見ると、北の空の方で爆発が見えた。そして閃熱の線が彼方に注がれている。
「サンチョのおっさんのほうやな。つか、まだ爆弾岩は投げられてるっぽいな」
「リョカさん、あれは?」
 ルカが下を指差す。
 丁度医務室の辺りの壁が剥がれており、そこへ向かって忍び込むガーゴイルたちの中に紫のローブの魔族が見えた。
「あいつは、まさか! シドレー、降ろしてくれ! 僕はアイツを追わないといけない!」
「あそ? んじゃ、俺は爆弾岩を迎撃してる。お前は怪我人を運んでくれや」
「はい!」
 リョカとルカを降ろすと、シドレーは放られる爆弾岩に向かって飛び去る。するとすぐに空中で小規模な爆発が起きた。

++

 ごごご……。
「きゃぁ!」
「うわあ!!」
 上の階からの衝撃に医務室に居たものは頭を抱えて身を低くする。
「デボラさん!」
 ビアンカは同じ身重でありながら、既に大きくなっていた彼女を庇う。
「……」
「貴女……」
 少しの間、デボラはビアンカと話をしていた。
 昔のこと。リョカのこと。村での生活。ここまでの旅。これからのこと。
 なんでそんなことを聞いたのかわからなかった。
 ただ、彼女の話に頷いていると、どうにも他人と思えない気持ちがあった。
 ――まあ、ある意味親戚なんだろうけどね。
 心の中で舌を出しつつ、フローラやルドマン、ハルマにも感じたことの無い親近感に戸惑う。ずっと昔、とても近しい縁があったような気がしてならないのだ。
「私のお姉さん? それとも従姉妹とか……」
「え? どうかしたの? デボラさん……」
「もしかして、本当はどこかで同じ……」
 自分でも何を言っているのかわからないデボラは、うわごとのように思いを述べる。
「きっとそう。貴女は多分、私と近い人なのよ……」
 ビアンカの手を握るデボラ。
「これは勘だけど……」
「そう。でも、不思議。私も同じ感じがしたの……。だって目が似てる……」
 互いに同じ感想を抱いていたらしく、その瞳が交差する。
「ええ、きっと……」
 ――だから同じ男性を好きになったとか? それは、関係ないわよね……。
「あの、ビアンカさん……私はルドマン・ゴルドスミスの娘、この度は父が酷く愚かな提案をしたらしく、本当にご迷惑をおかけしました。ただ父は……」
 再び爆音が響いた。
「きゃぁあああ!!!」
「うわぁあああ!!!」
「まものだぁ!!!」
 すぐ近くでの爆発で壁が崩れ、外が見えた。
 そこから顔を覗かせる魔物に混乱は頂点に達する。負傷兵たちは逃げ惑い、われ先にと駆け出す。
「デボラさん!」
「ビアンカさん!!」
 身重である二人は動けないと、身体を寄せ合い庇いあう。
 ホークマンが城内へと侵入すると、何かを探しているらしく、きょろきょろあたりを見回す。そして逃げられずに居たビアンカ達を見ると外に向かって手を振り、紫の霧を放つ。
「リョカ……」
 絶体絶命のピンチに最愛の人の名前を呼ぶ。
「リョカ、さっさと来てよ……」
 しかし、無情にもやってきたのは紫のローブの人影。
 土気色のそれはシルエットこそ人型だが、赤い瞳は魔族の証拠。
「おほほ、ここにおられましたか。探しましたよ。我らが女王……」
 その魔族は気味の悪い嗤い方をしながらビアンカたちに歩み寄る。
「あなた、何者!」
 ビアンカは炎の精霊を呼び出すと、あまりよく練られていない火炎魔法を放つ。
「無駄なことを……」
 しかし、紫のローブの魔物はそれを片手で受け止めると、裾を焦がす程度で打ち消す。
「デボラさんには指一本触れさせない!」
 立ち上がり、彼女を逃げるように促すビアンカ。
「駄目よ! 貴女だって……」
 デボラは彼女の腕を引っ張り、共に逃げるように言う。
「ふん、そっちの赤毛に興味はありません。そうですね、貴女が大人しく私についてきてくれるというのなら、我々も軍を引き上げましょう」
「……? 私が? 私に何のよう?」
 いま一つ話が飲み込めないビアンカは怪訝そうに魔族を見る。
「貴女は知らないでしょうけれど、我らが希望、魔の血を引く勇者を身篭れるただ一人の存在」
「は? 魔の血を引く……?」
「はい。どうやらご記憶が混乱なさられておられますが、貴女は経典……、予言により運命付けられた存在なのですよ……」
「何を言ってるの!? 私は人間よ! それに魔の血を引くだなんてふざけないで!」
「まぁ、そう仰られるのも無理はありますまい。人間どもとの生活が長かったようですし……ですが、こうして魔族の福音を奏でれば……」
 魔族は小さなオルゴールを取り出すと、ぜんまいを巻く。
 そして奏でられる低音の物悲しいメロディ。周囲に渦巻く運命の精霊を呼び集める。
「……? ……何? この音……」
 悪阻とは違う気分の悪さ。額、眉間から鼻先にそって火花のようなものが視界に現れる。目を閉じても網膜に白い光が放たれるようで、眩しくて仕方が無い。
「何……なんか……眠い? の?」
 うつらうつらとなる頭が揺れる。
「ビアンカさん!?」
 ビアンカの様子に驚いたデボラは肩を揺さぶる。
「……大丈夫……、離れていなさい。貴女は殺さないから……。そっとしていたら……ね」
 ビアンカは首を振ると、デボラに離れるように示す。
「でも……」
「貴女は誰なのかしら? とても、とても懐かしい感じがするけれど……」
 向き直ったビアンカの瞳は燃えるような赤だった。
「私は……、デボラ・エド……ゴルドスミス……」
「どこかで、きっと出会っていたのかしら。遠い昔に、どこかで……」
「きっと……多分……」
 けれど、やはり自分と似ていることがわかる。色が違うのに、おおよそビアンカが人間ではないだろうに、それでも近いものが消えない。
「ごめんなさい。さよなら」
 そっと風の精霊を呼ぶビアンカ。デボラはまだ彼女にすがろうとしていたが、訪れた眠気に膝を落とす。
 ビアンカはそんな彼女を抱きかかえると、壊れやすいガラス細工のようにそっとベッドへと運ぶ。
「たかが人間ごときに……」
 待たされることに不満げなローブの魔族はつまらなそうに吐き捨てる。
「……ッ!」
 ビアンカは彼を睨む。一瞬、二人の間の空気の密度が変わる。陽炎のようなゆらめきが魔族の瞳に映ると同時に、壁へ叩きつけられる。
「がっ!」
「彼女は大切な人なの。私にもわからないけれど……。手を出せば、どうなるか理解なさい」
 そして再び空気が揺れる。
「グッ!」
 叩きつけられたまま、さらにめり込み、壁が砕ける。
「がはぁ!!」
「さ、案内なさい。私を迎える場所へ……」
 地べたにはいずるローブの魔族をまるで毛虫かなにかのように睨むビアンカ。
「は、はい、ただいま……くくく……」
 ローブの魔族はぞんざいに扱われつつも、その力の強さに笑いがこみ上げてくる。
「さあ、我らが総本山へ……」
 魔族が指を鳴らすと魔法の絨毯がやってくる。ビアンカに恭しく手を差し伸べ促すも、彼女はそれを無視して一人であがる。
「ビアンカ!! どこへ行くんだ!」
 上から落下するかのように乱入してきたリョカ。
「リョカ……?」
 ビアンカは赤い瞳で不思議そうに彼を見ていた……。

続く

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