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グランバニア_その12

「ビアンカ……そいつは!」
 医務室へ戻ってきたリョカは、目の前の惨状に愕然とした。
 砕けた壁と、それに押しつぶされた人。ベッドで横になるデボラは無事なのだろうか? そしてビアンカが向かおうとしている先、そこには……。
「貴様!!!」
 リョカは昆を構えると、仇敵に襲い掛かる。
「ふん!」
 ローブの魔族は巨大化させた爪でそれを弾く。だが、膂力ではリョカに分がある。
「やぁ! とりゃぁ!!」
 手数、腕力で打ち込むたびに攻め入るリョカ。魔族は肉弾戦が得意ではないのか、もう片方の手で印を組み、炎の塊を作る。
「無駄だ!」
 それをリョカはマホステで打ち消す。
「なんと!」
 予想していない古代魔法に驚く魔族。その虚をついたリョカは魔族の肘を打ち払う。ガードを崩したところに昆を突きたて、さらに結び目を解き、左腕ごと胴に回して締め上げる。
「ぐふぅ!!」
「お前だけは赦さない!!」
 リョカは渾身の力を込めてローブの魔族を締め上げる。
「リョカ……」
 ビアンカは目の前での格闘劇にそれほど興味がないのか、彼を呼ぶと、空気を揺らめかせる。
「ビアンカ!?」
 空気の壁にむりやり押し戻されるような感覚が来ると、昆が砕けて落ちる。
「ぐ、赦さん!!」
 ローブの魔族は戒めが解かれたことで再びリョカに襲いかかろうとする。
「バカね」
 再び空気の壁が現れ、魔族は地べたに伏される。
「ビアンカ……、君、一体どうしたんだい!? 何が……」
「リョカ、ゴメンなさいね。私は思い出した……? いえ、わかってしまったのよ。私が何者か、どこから来たのか……。そして、この瞳……」
 ビアンカはそっとリョカに踏み出すと、頬を交わす。
 リョカの左の瞳とビアンカの左の瞳、間近で見ることでそれがわかる。
 彼女の瞳は赤く、瞳孔が縦に伸びていた。
 魔族に多い瞳。
「ビアンカ……」
「私はビアンカ・ルードではないの。ビアンカ・カミューリア・ピサロ……」
「ピサロ? 魔族……?」
「そう。人とは交われない定め……」
「そんなの関係ない! 君はビアンカだろ! なら、僕の恋人で、大切な人で、子供を……僕と君の子供は……」
 恋人、子供、大切な人。
 ビアンカの瞳が困ったように彼を見たあと、そっと唇を交わす。
 彼女の甘く、酸っぱい、太陽の匂いがした。
 何も変わらない。
 あの日、かわしたときから何も変わらない。
 なのに……。
「ビアンカ……」
 リョカの周りに集まる時の精霊達は、無情にも彼を睡魔で煽る。
「待って、いかないで……」
 膝を突くリョカ。昆は粉砕され、すがれるものもない。
「さよなら……。もう、会えない……」
「なんで……さ……」
 瞼が重くなり、視界がまどろむ。上下が歪み、四肢の感覚が麻痺してしまう。
「さあ、参りましょうか……」
 再び魔法の絨毯にビアンカを促すローブの魔族。
「また、邪魔者か……」
 ビアンカはぽっかり開いた穴から一歩下がる。そして響く轟音。
「ちぃ! しとめそこなったか!」
 黒い雷を纏った剣士が窓から急襲する。けれど、その大仰な剣が騒がせた精霊がそれをビアンカに察知させたのだ。
「解呪に手間取ったが、間に合ったようだな。今度こそその首、貰い受ける……」
 テリーはビアンカに向かって剣を向ける。
「これで三度目かしら? 飽きないわね。貴方も……」
 ふっと嗤うと、ビアンカは右手を構える。
「貴様が居ては世界の安寧は得られないのでな。悪くおもうな」
「ふうん、世界のためにっていうタイプには見えないけど?」
 テリーの瞳が真っ赤に燃え上がる。
「黙れ! 今度は容赦しない!」
 鋭い一撃は雷を周囲に放ちながらビアンカに襲い掛かる。けれど、空気の壁がそれを押し返す。
「く、まだ足りないか! 大空を舞う怪鳥ラーミアよ、今こそ世界が願いに同調せよ! 共に魔を討たんと!」
 さらに首にかけた青いネックレスが輝きを増す。
「まぁ、魔の力だけでは飽き足らず、怪鳥の力まで? 器用なものね。サーカスでも開くといいわ……」
 剣に帯びる雷の勢いがさらに高まる。空気の壁を切り裂き、徐々に徐々にビアンカに迫る。
「ふうん、さすがは勇者ね。でも……、紛い物の魔王がこのピサロ家の末裔に逆らえるとおもって?」
 空気の壁が歪み、ビアンカの右腕から棒のようにおかしな空間が伸びる。
「く、バギマ!」
 それを探ろうと竜巻を起こすテリー。しかし、その空間に触れると同時に逆回転して消える。
「馬鹿な……」
「ふふ、愚か者!」
 今度は一転してビアンカが攻め入る。
「く!」
 雷神剣は稲光を放ちながら、見えない空気の剣を受ける。
「さすが勇者様!」
「ふん、病み上がりの魔王が! 調子に乗るな!」
 受けたまま蹴りを放つテリー。
「!?」
 するとビアンカは何かにおびえるようにその蹴りに大きく距離を取る。おなかを気にするビアンカにテリーは遠慮なく攻め入る。
「いい気なもんだな! 勝負の最中に!」
 たとえ強力な魔力があれど、戦いはまだまだ素人。周囲の瓦礫にまで意識が及ばず、彼の蹴上げた破片に思わず顔を庇う。
「貴方、卑怯よ!」
「魔王相手にそうも言っていられない! 俺は、彼女の愛したこの世界を守る必要がある!」
 テリーはライデインを剣に込めると、勝機とばかりに切りかかる。
 バランスを崩して転倒したビアンカは、空気の剣をさらに魔力で強化し、せめて致命傷は避けようとする。
「ぐ! させない!」
 そこへ割ってはいるリョカ。彼は砕けた剣の代わりに父の剣を構えて雷神の剣を受ける。
「ぐぐ!」
 雷を帯びた剣は直接リョカにライデインを通してくる。マホステで軽減するも肉体を走る電撃と睡魔に意識がぶれる。
「貴様! どこまでバカなんだ! コイツは魔族、いやそれを統べる魔王とも呼べる存在だぞ! 今ここでとどめをさすのが人間である貴様らの……」
「ビアンカはビアンカだ!」
 リョカはまだ唇を噛み睡魔を払うと、踏み込み、テリーを思い切り蹴り飛ばす。
「ぐぅ!!」
 無防備な腹に蹴りを喰らったテリーは数メートルふっとぶ。リョカもまた、それが最後の力なのか、どっと床に倒れこむ。
「リョカ……貴方は……」
 ビアンカは彼に駆け寄り、肩を取る。
「ビ、ビアンカ……君は……逃げて……」
「なんで……私は魔族……貴方達の敵よ?」
「さっき言った。君は僕の大切な人なんだから……だから、早く」
「リョカ……」
 瞳の赤が涙に消えていくのが見えた。
「ほら、君はやっぱりビアンカさ……だから、お願い……」
「くっくっく、どこまでお人よしなのかと思えば……」
 そんな二人を嘲笑うかのようにローブの魔族は好機を見逃さない。
 毒気の抜けたビアンカの脇をすいっと抜けると抱え上げる。
「貴方! 離しなさい! くっ!」
 空気の剣を放とうにも魔族の力が薄れてしまいおもうように形を成さない。
「すみませんが、しばらく寝ていてください」
 また暴れられては困ると、時の精霊を彼女にけしかける。
「ぐ……く……ぅ」
 強い睡眠魔法に瞬時に眠りにつくビアンカ。
「ふぅ、さて、貴方はわれらが偉大なるビアンカ様を守ってくれましたが、そのお礼に私自らとどめをさしてあげましょうか……」
「貴様、ビアンカを……」
「さようなら……」
 鋭くした爪を構え、リョカに向かって振り下ろすローブの魔族。
「そうはいくか!」
 それを中断させる黒い剣。爪を弾き、壁に刺さる。
「まだ生きていましたか……ふふ、貴方も大変興味深い存在ですが、あくまでも我々と対決するようですし、ここは一旦退かせてもらいましょうか……それでは……アウフヴィーダーゼン……」
 ローブの魔族は壁に手を突くと、爆裂魔法で砕き、そこから飛び降りた。
「ぐ、逃したか!」
 追いかけるテリーだが、悠々と時の精霊に運ばれる魔族とビアンカを目で追うしかなかった……。

続く

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