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グランバニア_15

 デボラが産気づいてから数時間、戦場とは違う慌しさが漂っていた。
 従者のフレッドは騒乱に巻き込まれたことで母体に影響がでていないか心配らしく、ぐるぐると応接間を回る。対し、ルカはそれほど気にしておらず、そのことで何度か小言を言われていた。

「こうしていると、坊ちゃまの生まれた日を思い出しますな……」
 応接間でその時を待っていたリョカにサンチョが話しかけてきた。
 彼は独特の香りのするバニアティを淹れると、昔を懐かしむようの目を瞑る。
「へぇ、リョカの生まれた日か。興味あるな」
 シドレーはまだ残っている皮膚を剥がしながら相槌を打つ。
「ええ、奥様、マーサ様の身を心配し、普段ではみられないほど落ち着きがありませんでしたよ。そうですね、まるでフレッドさんのようです」
 フレッドはぼそぼそと独り言を言いながら今も部屋を回り続けており、その様子にサンチョは懐かしそうに笑っていた。
「父さんがか……」
「なるほどな。それほどまでにお前は待望されていたというわけだ。リョカよ」
 ヘンリーがカップを取ろうとすると、さっとかわされる。
「ヘンリー殿下には田舎のバタ臭い茶など出しては失礼かと思いまして」
「ふん、根に持っていたか……」
 過去の余計な煽り文句を思い出したヘンリーは傷口に沿って指をなぞる。
「はは、サンチョは厳しいんだよ」
「そのようだな」
 リョカがヘンリーにも勧めるように言うと、サンチョもようやく頷く。
「しかし、子供か。あいつは確かルドマンの娘だろう? となると、ルカ、お前が新たな名誉市民となるのか」
「いえ、デボラさんはアルマールジュエルの経営を軌道に乗せたことでルドマンさんからその任を解かれています」
「そうなのか。だからフローラに拘っていたのか。それはそうと、妻をデボラさん?」
「え? あ、ええと、くせです。つい」
「今から尻に敷かれるのが見えているな」
 青年の気弱な態度にヘンリーは含み笑いをしていた。

「…………!!」
 しばらくして外の雰囲気が変わった。
 廊下を駆ける足音が大きくなり、扉がばんと開かれる。
「生まれました! 男の子です!」
 大柄の女性が汗だくになりながらそう告げると、フレッドは一目散に部屋を出る。
「ほう、よかったな。して、お前は行かないのか?」
 ヘンリーはカップを置き、ルカを見る。
「ああ、はい。社長の大事ですしね。行きましょうか」
 ルカはリョカを見て言うので、とうのリョカも驚いてしまう。
「え? 僕もですか?」
 おかしな誘いに戸惑うリョカ。それを察したシドレーは彼のズボンを突く。
「まぁなんだ。リョカ、お前もそのうち体験することやし、ビアンカはんの予行練習のつもりで行ってこい」
「そういうものなの? でもわかったよ。それじゃあ行こうか……」
 どこかふにおちないリョカだが、かつては心を交わした相手のおめでたい出来事に一言声をかけるものなのだろうと、部屋を出た……。

**

 ベッドに横たわるデボラと、生まれて間もない彼女の子。
 わんわん泣き喚く姿に産婆達もほっとした表情だった。
「デボラさん」
 リョカは、場違いと思いつつデボラのところへ行く。
「おめでとう。よくがんばったね」
「……ええ……」
 意外そうに彼を見るデボラだが、ほっと一息、笑顔になる。その後ろでウインクするシドレーにくすっと噴出してしまう。
「ねぇ、私の子、抱っこしてみてよ」
「え? 僕が? えと、ルカさんは?」
「リョカさん、デボラさんもそう言ってますし、お願いします」
「……お前が言うとなんかおかしいわな……」
 シドレーはルカのズボンをひっぱりながら首を傾げる。
「ええと、僕が……」
 産婆から渡された男の子の重さが胸に響く。
「この子は……」
 デボラに似てやや色黒で、赤みがかった黒髪の子。まだ精悍さはないが、とても懐かしい気持ちがあった。
「ボルカノって名前にしようと思うの。炎のように熱い、悠然たる大山を髣髴させる、そんな男の子になってほしいから」
「そう。いい名前だね」
「うん、決めた。今日から貴方はボルカノよ……」
 デボラのとなりに幼きボルカノを置くリョカ。
「……一応お前も行けよ」
「いえ……。二人の間を邪魔したくありません。デボラさんの幸せな姿を見ておきたいから」
 シドレーは複雑な気持ちでそうこぼすが、ルカはそれとは違う理由で二人を見ていた。
「ね、リョカ……。なんだかほっとしたら眠くなったわ。ね、しばらくグランバニアに居てくれる?」
 デボラは彼の手を握り、そう告げる。
「でも僕はビアンカの……」
「その、ビアンカさんのことなんだけど、私も気になるの。貴方のことだから止めはしないけど、相談っていうか、聞いて欲しいのよ」
「そう。わかったよ」
 リョカは頷くと、彼女が目を閉じるまでその手を握っていた。

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