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ビアンカ

 目が覚めた時、最初に見えたのはレースのカーテンだった。
 次いでふかふかのベッドの感触に驚き身を起こすと、メイド服の女性が居た。
 彼女の肌は青白く、一目で人間でないことがわかる。
「お目覚めになられましたか……。ただいまゲマ様をお呼びいたします」
 女型の魔物は恭しくお辞儀をすると、部屋を出た。
「……ここは、一体?」
 ここがグランバニアでないことはわかる。ではどこなのか? ぼんやりした記憶を思い起こすことしばし、自分が紫のローブの魔族にさらわれたことを思い出す。
「リョカ!」
 叫ぶも返事はない。
 薄れ行く記憶の中、魔族の凶刃にさらされたリョカがいた。そしてそれをすんでのところで銀髪の剣士に止められた。
 夢の中で自分を殺しに来た剣士。
 一度は村で、二度目はサラボナで、三度目はグランバニアで。
 ようやく気付いた。それは夢ではないのだと。そして同時に思い起こされる村での記憶。
 教団に帰依した後、幹部の一人が父の病状を見舞った。
 一目で教団員とわかる幹部に、ダンカンの表情は曇った。けれど、ビアンカの勧めもあって、帰依し、治療を受けた。
 だが、魔法による治療が進められるも、快方に向かう様子もない。どうやらダンカンの病状は流行り病だけではなく、別の病気を併発していたらしい。
 せめて流行り病だけでもと治療が続けられた。
 その間、ビアンカの教団への奉仕が求められた。
 労働としての奉仕とはいわれるも、実際は教団幹部への接待。
 扇情的なドレスを着て酌を取り、身体を触られる日々が続いていた。
 それも全ては父のため。そう考え、我慢していた。
 そんなある日、父が亡くなった。
 父の弔いを行おうとルビス教会へ向かうビアンカ。
 しかしそれを阻むものが居た。
 現村長のホセロはダンカンは教団員であり、ルビス教会での弔いを禁じると言う。
 せめて母と共に弔いたいというビアンカの言葉を無視するホセロ。けれど女の腕で止めることも適わず、ダンカンの遺体は持ち去られ、教団式の葬式で弔われた。
 彼女の元には何も残らず、代わりに村長宅へと来るようにと言われた。
 茫然自失のままよろよろと村長宅へ向かったビアンカ。
 村長宅には紫の煙と鼻に纏わりつくような匂いが充満していた。
 眠気を誘う香りにふらふらしていると、腕を取られ広間へと連れて行かれた。
 そこには上半身裸の太った教団幹部がいた。
 一瞬にして目的を理解したビアンカだが、朦朧とする意識の中で抵抗もできずに押し倒される。
 そこからの記憶が曖昧だった。
 銀髪の剣士が広間に乱入し、裸の男を背にして剣を構える。
 竜巻を起こし、氷の刃を振り乱し、膝を着き、血を流し、それでも果敢に向かってくる。
 その相手は誰だったのか?
 卑劣な村長? それとも教団幹部? 違う。
 ビアンカに、だった。
 風の精霊を操り、鋭い爪で教団幹部を刺し殺した。その返り血を浴びつつ、ホセロに向かった。
 手で扇ぐ程度の動作、花を手折る程度でホセロを殺せる。その命の重さにそれほどの気持ちも沸かない理由が知りたかった。
 それを止めたのが黒刃。銀髪の剣士は魔王が居ては誰かが安心できないからと、自分に向かってきた。
 戦士として場数を踏んでいるであろう彼だが、不思議と自分の相手は務まらない。そう感じた。
 子猫をあやすように片手で煽り、挫き、跪かせたら、後は本命のホセロに刃を放つ。
 目的を終えたビアンカは屋敷を出ようとするも、剣士が立ちはだかる。
 彼は目を赤く光らせ、胸元の青いペンダントが輝かせると、先ほどよりも鋭い剣戟で向かってくる。
 彼に自分に似た力を感じた。ただし、あくまでも似ているだけの紛い物。
 一方で自分自身にも彼の力を模した力があるように感じた。
 お互いでお互いを真似ている? という不思議な感覚を抱いた。

 その力なになのかがわかりかけたのが死の火山でのこと。
 次々と倒れ行く仲間を前に、何故こうも無力なのかと自分を嘆いた。
 せめて力があれば、そう嗚咽した。すると心の中がざわめいた。その時の記憶が今ならわかる。
 炎の女王を名乗る魔物の前に立ち、睨んだ。
 魔物は怯みながらも火球を放ってきた。それが無駄なのを理解させるのは造作も無いこと。
 衣服の表面を焦がすことも適わず、魔物は恐れ、たじろぐ。
 きっとその時、自分の瞳は真っ赤に燃えていたのであろう。
 視線を向け、徐々に下に。魔物の頭もそれ以上下がらないところまで下がり、地面にこすり付けさせる。
 格の違いをまざまざと見せ付け、仲間達を洞窟の外へ、サラボナの近くまで運ばせた。
 あの時、窮地を救ったのは、自分の中にある力だった。

「あ、あ、あ……私……私は……人ではない……、魔族!?」
 驚愕の事実に打ち震えるビアンカ。
 わなわなと震える手は人のもの。見慣れた黄褐色に、柔らかな弾力を持つ。爪も人どころか柔肌一つ傷つけられるものにない。
 自分は人。そう確信するに十分なもの。
「はい、その通りです」
 それを打ち砕く肯定の言葉は、例の紫のローブの魔族から告げられた。
「貴女様はかの魔界の貴族にして勇者であられたピサロ家の子孫にあります」
 紫のローブの魔族は恭しくお辞儀するも、にやにやと口元を緩ませている。内心、ビアンカのことを敬う気持ちなど無いのだろう。
「嘘!」
「いいえ、嘘ではございません」
「……っくう……」
 一瞬にして伸びた魔物の爪がビアンカの肩を貫く。その痛みに呻くビアンカ。掛け布団に赤い染みが点々とつく。
「なにを……」
 肩を庇うビアンカだが、それも少しの間だけ。手に滑る血の量も少なく、じんとした痛みが残る程度。それすら次第に薄れていき、もう一度肩を拭うと、滲んだ血だけが残り、傷口は塞がれていた。
「これって……」
 自身のことながら不思議でならない現象に、ビアンカは驚きを隠せない。
「少々手荒なことをいたしましたが、魔法も使わず人間が短期間で怪我を治すことなど可能でしょうか? おほほほほ……」
 にやついた口元を隠すつもりもないのか、魔族はへらへらと気味の悪い声を上げる。
 そしてビアンカもまた理解する。この魔族は自分を恐れておらず、見た目の待遇こそよいものの、自分は囚われの身にあるということに。
「私をどうするつもり?」
「そんな警戒なさらずに……。そうですね、元気なお子様をお産みになられてはいかがですか?」
「世継ぎ? まさか……!」
 何かおかしなことでもされたのだろうかとおなか周りを探るビアンカ。特に医術の知識の無い彼女だが、特に異変も無い。
「ご心配なさらずに。今の貴女をどうこうしようなどと思っておりません。せいぜい養生なさり、お子様を生むことだけを考えてください……。おほほほほ……」
 グランバニアで受けた診断結果では特に問題もなく母体ともに健康そのもの。まだお腹も目だっていないが、あと数ヶ月すれば生まれるだろうとの見通しだ。
「どういうつもり!」
 しかし、それを何故魔族が気に掛けているのか? 確実に何か裏があるのだろうけれど、ローブの魔族は応える様子もなく、部屋を後にした。
 代わりにやってきた女形の魔物は、混乱するビアンカをあやそうと、身振り手振りで気を惹こうとしていた……。

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