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ビアンカを追って_1

 海は内海と外海に分かれている。
 内海と外海は浅瀬により船での移動が難しく、内海の船と外海の船は別々のものとして認識されている。
 円状に散らばる大陸の丁度内側が内海とされており、浅瀬が多く、水棲の魔物も比較的大人しい。船の航行ルートも基本は大陸に沿ったものであり、テルパドール、サラボナ、ポートセルミ、オラクルベリーの順に進むことが多い。
 外海は円の外側を指しており、こちらは魔物の気性が荒く、主要都市に背を向けていることも多いため、グランバニア地方とラインハット地方を結ぶルートぐらいしか航路が開拓されておらず、その需要の低さから航行数も少ない。
 リョカがわざわざそのルートを選ぶ理由は、ラインハット経由でオラクルベリーを目指すため。
 総本山に位置的に近い(とはいえ小船でいける距離でもない)のと、今も奴隷売買が行われていると噂されているからだ。

 翼竜に乗り、城を抜け出たリョカは、北の港へ向かっていた。
 魔物の襲撃の爪あとも薄まり、最近は客船も乗り入れ始めている。
 目的となる光の教団の総本山所在地は正確にわからない。たとえわかったところで海の真ん中。リョカ個人でどうにかできる場所ではない。
 しかし、当てがないわけでもない。
 総本山から抜け出して数年、いまだ完成の話は聞かない。おそらく今も奴隷による作業が続けられているのだろう。
 あの劣悪な環境の中、奴隷はいくらいても足りない。ならば再び、奴隷として潜り込めるのではないか? そう考えてのことだ。
 そして今回はシドレーが居る。空を行く彼ならば比較的自由に行動ができ、外との接触も時間をかければ可能だ。まったく勝算がないわけでもない。
 さらにもう一つ。
「……なんであんさんがおるん?」
 三等客室の相部屋で待っていたのは、例の銀髪の剣士。お供の緑の竜は斧の代わりにはたきを片手に掃除をしていた。
「船が出ると聞けば貴様も動くだろうと張っていた。俺は肝心のビアンカの居場所がわからないからな。そこで一つ提案がある。共闘しないか?」
「……どういう風の吹き回しです?」
「疑うのもわかる。俺はさんざんビアンカを殺すと言ってきたからな。そしてそれはひとつの選択肢として今もある。だが、それをするには一つの組織と対決しなければならない。それは無謀だ。おそらくタイムアップのほうが先。魔王の力は奴らが奪い、かつ二人とも殺される」
「そんなことさせない」
「そうだ。そのためには人手があるほうがよい。貴様はラインハットの前王とも知り合いだ。翼竜、それに貴様自身の強さがある。教団とやりあう程度の力はある。だが、肝心の魔王の力を持て余す。たとえビアンカが無事であろうと、子が魔王であれば危険は拭えない。ところがだ、俺は魔王の力を奪う方法を知っている。そして、それの保管方法もな」
「保管? テリーさんはそれができるんですか?」
「ほんまかいな。むしろ自分が魔王にでもなろうって魂胆やないん?」
 半信半疑なシドレーは胡散臭そうにテリーを見る。
「魔王か……。ビアンカも覚醒時、こんな瞳をしていたのを覚えていないか?」
 テリーは帽子を脱ぐと前髪をかき上げてリョカを見る。
 その瞳は空のような青さから、だんだんと日が沈むかのように変遷し、赤く染まった。
「!?」
 周囲が暗くなったような、空気が重くなるような感覚が訪れる。
 以前にも感じたことがある。魔物の洞窟で始めてテリーと対峙し、蹴り飛ばした後。
「お前、もしかして……」
 シドレーがおそるおそる口を開くと、テリーは目を閉じる。すると周囲の異変が薄れていくのがわかった。
「俺はいわゆる魔王だ。闇の衣を纏った……な」
「おいおい、そうなるとお前こそ人間の敵じゃないのか?」
「魔王の力に飲み込まれたらな。俺そうなるまいと努力しているさ。何度も幼子に説き伏せられるのも癪だからな」
 ふっと笑う彼の瞳は青い輝きを取り戻していた。
「じゃあビアンカもそういう風になれば……」
「いや、ビアンカは魔王の血脈、そしてその子もそうだ。俺のように闇の衣の残滓を羽織るのとは訳が違う。それに……いや、これは説明しても無駄か」
「んでも、残滓? 残り物ですらアンタきついのに、ビアンカはんの力を継承して平気なん?」
 せっかくビアンカが魔王の力を失ったとして、今度はテリーが魔王になれば意味がない。かといって彼が討たれるために魔王となるような殊勝な性格の持ち主のはずもない。
「神聖な場所に封印するのさ。レイアムランドの聖域に封印すれば、いずれは消滅するだろう」
「北極に? あんな寒いところに行くん? ご苦労なことですね」
「……貴様、何故知っている?」
「え? だって、レイアムランドは北極だろ? 俺って博識?」
「違う、この世界に住む貴様が、どうしてレイアムランドや北極を知っているのかと聞いているんだ」
「だって、俺は子供の頃、授業でレイアムランドを教えてもらって……ミーファに暗記するまで世界地図見せられたし」
「それにその中途半端なパルミド訛りの喋り方、お前は何者だ?」
「パルミドは……俺がよく遊びに行ってた……下町……」
「シドレー、記憶が戻ったのかい?」
「記憶……が……」
 喋るうちにだんだんとぼんやりしてきたシドレーは、がくんと肩を落とすと、そのまま床に落ちてしまう。
「……どうしたんだ?」
「ええ、シドレーは記憶喪失なんです。でも最近は少しずつ思い出しているらしく、僕やヘンリーでも知らないようなことを知っていて」
「なるほどな……。とりあえずコイツを部屋の中に入れるぞ」
「はい」
 尻尾が部屋をはみ出すシドレーを抱えると、引きずりながら部屋に入れる。
 本当はもう少し話を聞きたかったが、シドレーがこの調子ではそれもできず、そして船旅も暫く続くのだからと、飲み込むことにした。
 そうできたのは、おそらく希望が見え始めたからだろうか?

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