FC2ブログ

目次一覧はこちら

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

ビアンカを追って_2

 ある日の昼下がり、リョカは暇つぶしに甲板で絵を描いていた。
 ペンを立てて遠くの島を見つめ、キャンバスに走らせる。
 ここ最近忘れていたせいか、思うように進まない。ビアンカのことやデボラの子供のことなど、いくつも問題が渦巻いているせいもあった。
 ただ、そんな気持ちがある違和感に気付くのを遅らせていた。
 島がだんだんと離れていく。
 本来の航行ルートなら島から離れるはずがない。そして太陽を進行方向、左手に持つはずがない。
 昨日描いた絵と今日の風景を見比べ、その異変に気付いたリョカは、こっそりと部屋に戻った。

「テリーさん、いますか?」
「ん? なんだ、どうかしたか?」
「はい、あの、もしかしたらこの船、ラインハットに行かないかもしれません」
「なんだと?」
 テリーは乗船券を取り出し、行き先を見る。けれどそこにはラインハット行きと印されており、切られていた。
「一体どういうことだ?」
「はい、どうも航行ルートが違うようなんです。本来なら進行方向左手に島があるはずなのに、今は背にしている」
「まさか……海賊船に乗り込んだのか?」
「いえ、それにしては船員の質が高いです。それに乗っている人達も僕ら以外はほとんどいないし、居ても身分の高そうな人ばかりで」
「王子様をもってして身分が高いというのか?」
「それは今おいといてください。何かあるのかな……?」
 リョカは船の目的がわからず、困惑気味。もし海賊であったとして、テリーにシドレー、ラルゴと呼ばれる竜も居り、抗う術はある。場合によってはそのままシージャックし、むりやりラインハットを目指す方法もある。けれど、船員達を見るにそのような雰囲気はない。
「どうする? 一刻を争うというほどでもないが、大人しく待つ理由もない。救命ボートを奪うか?」
「そうですね。今のままだとどこへ連れて行かれるかわかりません。夜を待ちましょう」
「そうだな。小船で逃げるにしても客船相手では転覆させられるのがオチだ。暫く寝るとするか……」
 リョカの提案にテリーは頷く。彼は帽子を脱ぐとベッドに上がる。
 リョカもベッドへ上がると、夜に備えて眠ることにした……。

**

 夜、こっそりと起き上がるリョカ達。部屋を出て甲板に上がり、救命艇の場所へと行く。
「……船が無い?」
 救命艇があるはずの場所にそれがなく、今しがた切り離された跡が残っていた。
「まさか先読みされたのか?」
 先を越されたことに驚くテリーだが、さらに驚くものがあった。
 いつのまにか豪華な客船が近くにあり、だんだんと近づいてくるのだ。
「まさか海賊? いや、海賊にしてはあんな豪華な……」
 煌びやかな明かりを灯している船は海賊船のような禍々しさ、威圧するものは見えなかった。そしてその船に近づく小船が一つ。おそらくあれが救命艇なのだろう。
「いったいどういうことだ?」
 わけがわからず困惑する面々、シドレーは翼を広げる。
「俺がちょっと見てくるか?」
「頼むよ」
「おっしゃ、まかせとけ……!」
 翼を広げて甲板を飛び立とうとするシドレー。けれど、次の瞬間、ふらふらとよろめいてしまう。
「おい、翼竜、ふざけている場合じゃないぞ」
 そのまま倒れこむシドレーをゆするテリー。よく見ると、そこには風の精霊がゆらめいており、睡眠を誘っていた。
「ラリホー? 誰が……」
 すると今度はラルゴが倒れる。
「おい、ラルゴ? ……ん!?」
 そしてさらにテリーの周りにも睡魔がやってくる。
「テリーさん、大丈夫ですか?」
 リョカは紫の霧でそれを払い、テリーの周りの精霊をはらう。
「マホステか、器用なもんだ。それより、これはいったいどういうことだ?」
「わかりません。誰かが僕らを邪魔している?」
 精霊のやってくる方向に目を凝らす。そこには一つの人影が見えた。
「貴方は誰ですか?」
「……困ったわね。大人しく寝てくれたらいいのに……」
 暗がりの中、かがり火で見えたものは風に靡く金髪。そして声にも聞き覚えがある。
「アン? いや、アニスさん?」
 近づいてきた彼女は幼き日に出会ったアニス。髪は二つに結んであり、やや背が低いようで、背格好だけならアンとそう違わない。
「アニスなんて知らないわ……」
 そして彼女が手に提げているものに目を疑う。白を基調とした緑と金の装飾の施された剣。竜の飾りと青い宝石のはめ込まれたそれは、かつて父が残した剣だった。
「なんで君がそれを?」
「必要だから」
 彼女は剣を抜くと二人に向ける。
「なんのつもりだ?」
 テリーも剣に手をかける。けれど、彼女から敵意が向けられず、抜くにいたらない。
「行かせるわけにはいかない」
 剣から白銀の輝きが放たれると、紫の霧が晴れていく。そして訪れる風の精霊による睡魔。
「む、これは……その剣は天空の!?」
「アニスさん……? どういう……」
 魔法に対し無防備となった二人が睡魔に勝てる道理もなく、その場に崩れ落ちる。
「父さん、邪魔ばかりしてゴメンね……」
 最後に聞こえたのは少女の声だった……。

Trackback

Trackback URL
http://13koharu.blog73.fc2.com/tb.php/711-51a39ce1

Comment

Comment Form
公開設定

プロフィール

小春十三

Author:小春十三
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ

創作検索ぴあすねっとNAVI
dabundoumei
trt
オンライン小説/ネット小説検索・ランキング-HONなび  
リンク予定


二次元世界の調教師様のサイトです。



無料アクセス解析
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。