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ビアンカを追って‗3

 リョカの頬をなでる風は穏やかな南風だった。
 グランバニアの北風とも海原の乱暴な風とも違うそれをリョカは知っている。
 起き上がると床の揺れがやや乱暴だ。前後する感覚に、港に着いたことを察知する。問題は、ここが目的地の港かどうかということ。
 目指していた場所はラインハットだが、この緩やかな風が運ぶのは農業国の田舎くさいものではなく、都会の洗練されたモノ。
「サラボナ?」
 ぼそりと自問自答した後、頭を振る。強い催眠魔法で眠らされたせいか、疲労がある。
 隣ではテリーが寝かされており、彼も催眠魔法から解き放たれたのか額を抑えながら起き上がる。
「あの女、なぜに剣を持つ? この世界の勇者なのか? それにしてはオーブの反応が無い……」
 テリーは青白いペンダントを見つめながらぼやいていた。
「……んぅ……」
 それにつられて床に転がっていたシドレーとラルゴも目を覚ます。
「シドレー、テリーさん、ここはいったい……」
「わからん。だが、あいつはお前のことを知っていたようだし、お前も知っていたのだろう? どういうことだかはこちらが聞きたいものだ」
「はい、彼女は昔僕を助けてくれた女性で、アニスと名乗っていました。何度も危機を救ってもらったのですが、肝心なことは……」
「まったく、女の影ばかりがちらつくやつだな」
 皮肉を言う元気が出てきたらしく、彼はベッドから降りると背伸びをする。
「ん? せやかてあいつ、アニスゆうても知らんいっとたで? それに、もしアニスやったらなんであんなに若いん?」
「女というものはそういうものだろう? 一般的に若さを維持したがる傾向にある。だから熱心にルビスを崇めるのだろうな」
「いやいや、化粧とかそういうんじゃなくって、背丈もなんかちっこいし、幼さがあったで」
「うん。そういえば……」
 夜の甲板で見たシルエットは女性というよりも女性になりつつある女の子の雰囲気。そしてなによりもアンと見間違えたこと。
「アンに似ていたよね?」
「また女か?」
 あきれた様子でリョカを見るテリー。それを見てにやにやするシドレー。
「あんさん、もしかして嫉妬でもしてん?」
「嫉妬だと? ふん。ばかばかしい。色男ぶりは結構だが、そのたらし具合のせいで世界のどこへ行っても縛られる馬鹿がどこにいる? それより、思い出の中の女のことよりも現状を考えろ。ここはどこだ?」
「サラボナです」
「サラボナか。目的地とはずいぶん離れたが、地続きでポートセルミに行けるだけましか」
 本来の目的である教団総本山への侵入を第一と考えるテリーは剣を取ると、ドアを開けようとする。するとドアのほうから開いてきた。そして見覚えのある禿げ頭の男性がやってきた。
「これはこれは勇者殿。リョカ君の連れというからヅム君かと思ったが、世間というものは広いようで狭いものですな」
 禿げ頭を撫でながらルドマンはそれほど驚く様子もなく彼を見る。
「ルドマンさん、これはどういうことですか?」
 一方的な約束の期日はまだかなりの余裕がある。にも関わらずこうしてルドマンのもとへと連れてこられたというのであれば、彼の目的はおそらくフローラとの結婚だろう。だが、今はそれどころではないと、リョカの顔にも困惑と焦りが混ざる。
「うむ。グランバニアに出張していたものから連絡があってな。リョカ君が王位になりそこなったそうではないか?」
「……ええ」
 それをルドマンが知らないはずもないだろう。
「なんでもビアンカ君が魔族だったとな?」
「ビアンカは……ビアンカだ……」
 ビアンカを魔族と言われることは辛いこと。けれど、彼女自身、それを理解しているのが現実。リョカがどうこう言ったところで覆る事実ではない。
「そして君は彼女を取り返すために城を出た」
「はい」
「たとえビアンカ君を取り戻せたところで城にも戻れまい? 何せ彼女は魔族なのだからな」
「……」
「そしてわしは約束を守る。何を意味するかわかるな?」
 サラボナの名誉市民にして経済の中枢にいるルドマンを敵にすること。それは世界からはじかれてしまうことに等しい。そうなればリョカとビアンカ、二人でより添って生きるといえば聞こえも良いが、過酷な暮らしを強いられることになるだろう。
「と言いたいところだが、リョカ君よ。今は一つ、休戦としないか?」
「休戦?」
「君の敵である光の教団のことだが、その正体も薄々気づいている。だが、それを前提としてそれに協力するものがサラボナに出ている。おかしなものだろう? 敵対するモノと結託して協力すべきモノに仇をなすというのだからな」
「はぁ」
「わしは名誉市民としてサラボナを守る必要がある。そのために君をフローラの婿にしようと考えている」
「……半分解決済みやけどな……」
 シドレーはにやつきながらリョカのズボンを引っ張る。
「だが、今そこに拘ったところで何になる? 古い因習が街を守るわけではない。今すべきことは脅威となる魔を討ち払うことだ。わかるな?」
「はい……」
 依然と逆の提案をしだすルドマンに呆気にとられるリョカ。あまり腹芸の得意でない彼ではルドマンの言わんとすることが理解できず、額面通りに頷いていた。
「君の目的は結果的にワシ、サラボナ、ひいては世界の利益となる。しかし、それをするには君たちだけではあまりにも非力」
 ずらりと並ぶ戦士二人と竜二匹を見るルドマン。
「そこでだ。まず名誉市民の約束は保留とし、君が教団と戦うためのバックアップをしようではないか?」
「ルドマンさんが? それは心強いですけど……」
 さすがに話が良すぎると表情が曇るリョカ。それはルドマンも承知らしく、驚く様子はない。
「うむ。君が戸惑うのもわかる。だが、こうしている間にも教団の力は高まっていくばかりだ。どうだろうか?」
「……リョカ」
 テリーがリョカを見る。
「悪い話ではなさそうだぞ? 俺とお前で教団へ乗り込みビアンカを奪還することは難しいだろう。数の前に怯むつもりもないが、その間にビアンカを余所へ連れて行かれては手の施しようもない」
「せやけど、このおっさんがタダで俺らに協力ってのも胡散臭いで? いくらそのほうがサラボナのためいうても、それで得するわけでないし……なんかふっかけられると違うん?」
 せこいシドレーはさっそく銭勘定よろしくルドマンを疑う。その読みはおおむね正しいらしく、ルドマンは不自然に表情を変えない。
「どうする? リョカ君」
「どうするんだ?」
「どないしはる?」
 三者三様、リョカを見ることしばし、彼は頭を振ると答えは決まっていると口を開く。
「……わかりました。お願いします。教団の脅威は僕とビアンカだけの問題だけじゃ済まされません」
「そうか、よく言ってくれた。それではさっそく今後の作戦についてだな……。おい、だれか」
 ルドマンが手をたたくとスーツ姿の男性がやってくる。
「リョカ、大丈夫か?」
「うん」
 心配するシドレーにリョカは力強く頷く。
 彼がルドマンの提案に頷けた理由の一つには、教団の流す流行病の正体を知っているからでもあった。彼らを野放しにすれば、助けられる人を見逃すこととなりうるから……。

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