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ビアンカを追って_4

 サラボナへ降り立ったリョカは宿に荷物を置いた後、ルドマン邸へとやってきた。
「ふむ、そこへかけたまえ」
 応接間ではルドマンが先に待っており、リョカ達にソファへ座るよう促す。
 メイドが運ぶ紅茶とスコーンは出来立ての淹れたてで各々良い香りを漂わせていたが、それをつまむ空気もない。
「リョカ君。そして勇者殿とおまけのシドレー」
「なんで俺はおまけなん……」
 ぶちぶち言う彼だけがお菓子をばりばりとかじる。
「今、教団は世界の各地に教団支部を作っている。オラクルベリー、ポートセルミ、テルパドール、グランバニア、サラボナ……。徹底的に排除しているのはラインハットぐらいだろう」
 かつてラインハット国を奪還するにあたって戦ったのは紛れもなく教団だった。今は王位こそ退いたものの、ヘンリーがそれを許すはずがなかった。
 その真相は不完全な形、前太閤と前々王の教団への傾倒が国すら傾かせたことと伝わっており、いかにルドマンでも知る由はない。
「支部を潰せというのか? 猶予はあるが、各国を巡ってちんたらやる暇もないぞ?」
「いや、支部を潰せば教団も硬化する。特に勇者殿のように教団と一戦交えたのならな。すでに本山の位置は特定されている。かつて竜の神の城にもっとも近いとされた島」
「ゴッドサイドか」
 もったいつけるルドマンにテリーは即答する。
「さすがは勇者殿。博識でおられますな?」
 感心するルドマンを余所にまったくわからないリョカは同じく博識なシドレーに尋ねていた。
「……シドレー知ってる?」
「……いや、知らん」
「……シドレーでも知らないところってあるんだね」
「……そやな」
 蚊帳の外の気分を味わう二人はこっそりぼやいていた。
「ゴッドサイドの民が移住したのは聞いて……知っていたが、魔族が棲みつくとはな。もっとも、あそこは魔界に通ずる洞窟があったのだから不思議でもないか」
 一人納得した様子で頷くテリーに、三人は驚きを見せる。それというのも伝承レベルの内容をそうそう年端もいかないテリーが知っているのだからだ。
「おそれいりますな、勇者殿には……」
「ふん。それよりもゴッドサイドにはどうやって行くつもりだ? あそこは岩礁、浅瀬、おまけに潮の流れもいりくんでいる最悪のコンディションの海だ。たとえ乗り込むにせよ、気取られて逃げられる。奴らに貴様らの禁止魔法の概念など通用しないからな……。いや」
 そこまで言いかけて何かを飲み込むテリー。
「ええ、おっしゃる通り、彼らは移転魔法も使うでしょう。そうなれば教団拠地を潰せても根本的な解決には遠い……」
「あ、いや……」
 ルドマンの思い違いを感じたテリーだが、余計なことだと再び飲み込む。
「となると……奴隷船に紛れ込むのか? いくらなんでも無理だろう。武器は取り上げられてしまう。それならこの馬鹿竜の背中に乗って命がけの縦断をしたほうがましだ」
「さっきからバカバカひどくない?」
 テリーを睨むシドレーだが、自慢の翼も鎧のような黒鉄に変わってしまい、以前よりも揚力が出ない。
「そこで難破船を装い、救助を求めるのです。奴らはせいぜい海賊まがいの船員ばかり。教団自体蓋を開ければ追剥のようなもの。難破した船を見れば宝箱が揺れているようにしか思わないだろう。奴らのほうから船を拿捕するよう仕向けるのじゃよ」
「おとりのために船一隻を出すんか? さっすが富豪や。スケールが違うわ」
 なぜか陽気になるシドレーは小躍りしだす。おそらくはどさくさに紛れて金めのものを物色するつもりなのだろう。これではどちらが海賊かわからない。
「うむ。船をあらかじめ二重底にする。そこに武器や必要となる資材、人員を潜ませる。拿捕され、ゴッドサイドへ寄港した後、折を見て潜入する」
「そしてビアンカを奪回するんですね!」
 ようやく見えてきた作戦にリョカの声も弾む。
「うむ。じゃが、ビアンカ君の力は……」
「それについては問題ない。俺がしっかりと封印するさ」
 任せろというにはどこか自嘲気味で、視線を逸らすテリー。普段の傲岸不遜な態度がどこか薄れているようにも見える。
「お願いします。テリーさん」
「ああ、そうでないと合わせる顔もないからな」
「まぁ、あんだけ派手なことしたんやしな。勇者様」
 テリーの大立ち回りを揶揄するシドレーだが、彼はあまり関心はないらしく、やはり視線を遠くへ向けたままだった。
「そういえばあの女は何者だ? 天空の剣を使っていたようだが、もしそうなら奴も勇者だろう? 戦力は多いほうが良い」
「あの女?」
 ふと思い出したテリーは例の金髪の女の子のことをルドマンに尋ねる。しかし、ルドマンは心当たりが無いのか、首をかしげる。
「誰の事でしょうか? 剣を使えるものならわしの知る限りそこのシドレーぐらい……。女性で使えたという話はまだ……」
「とぼけるな。俺は見たぞ。船の上で金髪の女が天空の剣より波動を撃ったのを」
 疑問を投げかけるテリーにルドマンはリョカを見る。
「僕も見ました。あれは間違いなく父さんの残した剣です」
「しかし、天空の剣なら預かって以来、厳重に保管してある。盗まれたという報告も無けらば、持ち出すこともない。第一、常人に扱える代物ではないからの。それに、もし天空の剣が使えるとなれば、それは勇者だろう。君らに隠し立てる理由がない」
「それはそうですけど……」
 確かにと頷くリョカ。アンのことを口にすべきか迷うが、同一人物という確証が薄い。だから言えなかった。
「そうだ、せっかくだから勇者殿に剣を握っていただきましょうか。教団と対峙するにあたって必要な武器ですからな。ささ、こちらに……」
 ルドマンは名案とでも思ったのか、二人を先導して部屋を出る。
「何かおかしいな……」
 一方テリーは疑問が残るらしく、険しい表情のままだった。

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